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2021.03.15
特許翻訳
日本で付与された特許の見直しを求める2つの方法:無効審判と異議申立
特許が付与された後に、第三者が特許の見直しを求めるために取れる主な手段は2つ、すなわち審判請求と異議申立です。今回の記事では、これらの2つの手段について詳しく説明し、さらにそれ以外の手段についても簡単にお話ししたいと思います。
1. 日本で異議申立を行う
異議申立の制度自体は古く、元々は特許付与前の制度として1921年に導入されましたが、1994年に特許付与後の異議申立制度に改められ、そして2003年の法改正において無効審判との併存が問題視され、一旦廃止されました。しかし、口頭審理を原則とする無効審判の負担大などが考慮され、2015年4月に改めて異議申立制度が導入されました。異議申立制度は、登録された特許の早期安定化を図るものです。
特許異議の申立てのできる期間は、特許掲載公報発行の日から6月以内です。特許異議の申立ては、利害関係者に限らず「何人も」することができます。審理は迅速に行われ、口頭審理はありません。2016年における審理結果が出るまでの期間は平均して5.8か月でした。
異議の申し立てがなされると、日本の特許庁は特許を取り消す理由の有無を審理します。もし特許を取り消すべきと判断した場合は、特許庁は特許権者に取消理由を通知します。特許権者には、相当の期間を指定して意見書の提出および訂正の機会が与えられます。特許権者から訂正請求が出された場合、異議申立人は、意見書を提出することができ、特許庁は意見書を参酌し、再度、取消理由の有無を審理します。特許庁が再度取消理由を発見した場合、特許権者には意見書や訂正請求を提出する機会が与えられ、訂正請求があった場合には、異議申立人に意見書を提出する機会が与えられます。その後、審判官合議体により維持決定か、または取消決定が出されます。特許権者は取消決定に対して知的財産高等裁判所に不服申し立てをすることができますが、維持決定に対して申立人が不服申し立てをすることはできません。私たちの2021年2月1日付けブログでも取り上げた2020年版の日本の特許庁の年次報告書(特許庁ステータスレポート2020)によると、2019年の特許異議申立の件数は1073件で、前年の件数とほぼ同数だったようです。
2. 日本で無効審判請求を行う
異議申立とは異なり、無効審判は特許権存続中でも、特許権の消滅後であっても、いつでも請求することができます。ただし、無効審判を請求できるのは、利害関係人だけです。無効審判のプロセスに要する時間は異議申立よりもやや長めになります。2016年に審理結論が出るまでの期間は平均10.5か月でした。
無効審判請求人により無効審判が請求されると、被請求人(特許権者)は答弁書と特許請求項の訂正請求を提出することができます。これに対して、審判請求人には、訂正請求についての意見を申し立てる機会(弁駁書等)が与えられます。無効審判は、条件付きで書面審理にすることも可能ですが、特許法は口頭審理によることを原則としています。口頭審理を活用することにより、事実認定を正確に行い、当事者間の争点を整理することによって迅速かつ適確な審理を行うことができます。口頭審理では、審判請求人と被請求人が事前に口頭審理陳述要領書を提出した上で、これに基づいてそれぞれの意見を主張します
その後、審判の請求に理由があると認められるときには、日本の特許庁が「審決の予告」を行い、被請求人には再度訂正請求の機会が与えられます。最終的には日本の特許庁が審理の終結を通知して審決をします。無効審判の審決には、1.請求人の請求を全部認める、2.請求人の請求を一部認める、3.請求人の請求を認めない、4.審判の請求を却下する、の4通りがあります。無効審判の審決に不服の者は、被請求人でも審判請求人でも、に対し審決取消訴訟を提起することができます。特許庁の2020年版の年次報告書によると、2019年は112件の無効審判請求がなされたようで、これはかなり少ない件数です。
3. 日本の異議申立と無効審判請求の違い
異議申立 | 無効審判 | |
期限 | 特許掲載公報発行の日から6月以内 | なし |
申立人・請求人 | 何人も | 利害関係人 |
口頭審理 | 無し | 原則口頭審理 |
結果が出るまでの期間 | 約6か月 | 約10か月 |
不服申し立て | 特許権者は可 | 請求人・被請求人ともに可 |
4. 付与された特許の見直しを求めるその他の手段
上述の2つの手段のほかに、第三者による拒絶理由・無効理由の情報提供があります。情報提供は特許査定がなされる前でも後でも行うことができますし、どなたでも情報提供をすることができます。匿名でも可能です。特許庁は特許出願人または権利者に対して情報提供があった旨の通知を行います。
第三者が情報提供を行っても、面接等により審査官と直接やり取りすることはできません。ただし、希望者には、情報提供が次の起案時に審査に利用されたか否かのフィードバックを受けることができます。特許出願が権利化されることを阻止したい場合は、情報提供を特許査定が出る前に行わなければなりません。
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