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2022.01.31
日本語
世相を表す日本の「今年の漢字」とドイツの「今年の言葉」
世界のいくつかの団体では、その年の世相を表す言葉を発表する伝統があります。言葉を選出する方法は国によって異なりますが、年によっては言葉選びに世の中の動向を反映した共通のトレンドを見て取ることができます。今回は、日本とドイツがどのように「今年の漢字」や「今年の言葉」を選出し、また、コロナパンデミックが選出にどのような影響を与えたのか、という点を取り上げてみたいと思います。
1.言葉や漢字の選び方
ドイツでは、ドイツ語協会により毎年12月に、ドイツ語の「今年の言葉」”Wort des Jahres”(いわゆる今年の流行語大賞)が発表されます。「今年の言葉」は、その年に重要だった出来事や世論を映し出す言葉を協会が選びます。当初、この”Wort des Jahres” はドイツ語圏全体に共通していましたが、その後、オーストリア、スイス、リヒテンシュタインはそれぞれ独自に”Wort des Jahres”を選出するようになりました。
日本では、公益財団法人日本漢字能力検定協会が、その年の世相を漢字一文字で表す「今年の漢字」を発表しています。ドイツと異なるのは、インターネットやハガキで誰でも選考に参加できる一般公募によって、今年の漢字が決められる点です。「今年の漢字」は、毎年12月に京都の清水寺で発表されます。
2. 2020年はパンデミックの年
2020年は、各国共通にパンデミック関連の言葉が選出される傾向にありました。ドイツの2020年の言葉は、”Corona Pandemie”(コロナウイルス感染症の大流行)でした。また、日本の2020年の漢字は「密」が選ばれました。日本では、パンデミックの最中に「三密」という言葉が流行しましたが、これは「密」という漢字から始まる3つの語「密集」、「密接」、「密閉」を指す言葉です。
海外に目を向けると、やはりパンデミック関連の言葉が選ばれています。アメリカ方言学会(the American Dialect Society)が選んだ2020年の言葉は「Covid」(COVID-19の略)でした。また、英国のコリンズ英語辞典(Collins English Dictionary)が選んだ「今年の言葉も」”Lockdown”(ロックダウン)でした。
3. 2021年は明るい兆しが・・・
2021年になると、ドイツでは”Wellenbrecher”(防波堤)という言葉が選ばれました。この場合の「防波堤」とはもちろん洪水を防ぐものではなく、コロナウイルス感染症の流行の波を食い止めるための防護政策を表しています。2021年の「防波堤」も、パンデミックに関連する言葉であることに変わりありませんが、少なくともパンデミックを封じ込めようとする前向きな姿勢が表れています。
日本の2021年の漢字は「金」でした。東京オリンピック・パラリンピックで日本選手が獲得した多くの金メダルにちなんだものですが、「金」はパンデミックの期間に給付された様々な「助成金」も表しています。「金」は、2016年、2012年、2000年にも選ばれていますが、いずれの年もオリンピック開催年に当たっています。「金」は「今年の漢字」に複数回選ばれた初めての漢字です。やはりオリンピックは、日本人にとっては、強く印象に残る特別な出来事なのでしょう。
2022年の言葉は新型コロナウイルス感染症とは関係のない言葉になると良いですね。2021年の言葉と漢字はいかがでしたか? あなただったら別の言葉や漢字を選んだかもしれませんか? さあ、そして今年はどんな言葉がキーワードになると思いますか?
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