ドイツの劇場文化
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歌劇場大国と言われているドイツ。ドイツの大都市はもちろん、中規模の都市にもある劇場―テアター(Theater)の存在感は見逃すことができません。日本でも、歌舞伎や能という伝統的な舞台芸術や様々な劇場が存在しますが、若干敷居が高いものもあり、趣味人が楽しむ場という印象が強いのではないでしょうか。しかし、ドイツでは広く行き渡った文化・娯楽のひとつで、チケットの価格にも幅があり、老若男女、気軽に訪れることができる印象があります。
世界に誇る劇場数 街のシンボル
ドイツ国内の劇場数は世界トップクラスです。州立、市立の公的な運営による劇場は140軒にも上り、私設の劇場は200以上ともいわれています。有名どころでは、バイエルン国立歌劇場(Bayerische Staatsoper München)、ベルリン・ドイツ・オペラ(Deutsche Oper Berlin)、ドレスデン州立歌劇場であるゼンパーオーパー(Semperoper)などがあります。これら公的助成金を受けている公共劇場の起源は、17世紀後半にドイツ語圏内各地で、王族貴族によって設立された宮廷劇場です。今日では、州、市などが運営母体であり、重要な文化育成機関として、社交の場、教育の場、都市の顔として、街の中心でその存在感を放っています。
また、入場者数に関しては、新型コロナ感染拡大直前のシーズンである2018/19年では、芸術祭や、シンフォニーオーケストラのコンサートも合わせると、実に3500万人もの動員がありました。劇場の入場チケットも最安値の学割チケットならばおよそ10€以下の劇場も珍しくなく、非常に開かれた場であることがわかります。
劇場専属の団員スタッフ、公的支援も充実
ドイツには、80箇所を超える歌劇場が、専属のオーケストラ、俳優、歌手、そして舞台裏で活躍する音楽監督、舞台監督、美術・衣装担当等々といった常勤スタッフを雇用しています。例えば、少々古いデータではありますが、既述の「ベルリン・ドイツ・オペラ」では566名の常勤スタッフ、演劇専門劇場のドイツ座で297名、また、ブレーメン市立劇場では400名以上のスタッフを抱えているそうです。(2014年現在)今日では、オペラの発祥地であるイタリアを凌駕する勢いのあるドイツの歌劇場ですが、州立/市立の劇場においては莫大な税金が投入されており、例えば上述のブレーメン市立劇場には、2300万ユーロ/年(約31億5100万円)の補助金が投じられています。
しかし、文化予算削減や、劇場部門縮小の議論が長らく続いており、州・自治体側と市民側の衝突も度々起こっています。、2000年代前半には、ベルリンの3つの歌劇場統合に関わる騒動もあり、豊かな劇場文化とはいえ、課題となる問題は存在します。
コロナ禍において、長期間のロックダウンによる娯楽施設の閉鎖は、劇場で働く人々にとっては死活問題となっており、ここでも国からの早急な文化支援が行われたことは日本でも話題になっていました。ドイツ人の文化的生活には欠かせない演劇、オペラ、コンサートを楽しめる日の再来を待ち望みます。
参考HP
- 歌劇場 Wikipedia
- ドイツ 新国立劇場
- Theater- und Orchesterlandschaft Deutscher Bühnenverein
- オペラ Wikipedia
- テアター・ブレーメンで働く 大泉七奈子 ワンダーランド
- ドイツの歌劇場の現状と問題点 ―ドイツ劇場統計を中心として 江藤光紀・城多 努・辻 英史著 論叢現代詩・現代文化 2011 Vol. 7
これまで【日本人からみると不思議なドイツ事情】、【ものづくりの国ドイツ】を担当してまいりました、HHです。京都生まれ。ドイツ・フライブルク大学卒。留学中に得た経験をもとに、独自のアンテナを張って様々な側面からみたドイツをお伝えしていきたいと思います!皆さまのドイツ文化に関する興味・関心、ブログの感想もぜひ聞かせて下さいね。
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