ホテルママ―ドイツのパラサイト・シングル?
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ホテルママ―この意味、わかりますか?ホテルの女将さん?ママが経営するホテル?いえ、この言葉、ドイツ語では、自立せずに親元で暮らし、家事全般を母親に任せている若者を揶揄した言葉なのです。人間の自立心や個々の生き方を重んじるドイツだけあって、なかなか皮肉に満ちた言葉です。
実家暮らしは何歳まで?
ドイツ語で、ホテルママ、もしくはNesthocker(本来、孵化した後にも巣に留まって生活する流巣性の鳥類ワシやキツツキなどを指す)と呼ばれていますが、日本語でいう所の「パラサイト・シングル」、最近のネットスラングでは、「子供部屋おじさん」ともいわれている存在にあたるのでしょうか。
2017年に行われたEU統計局(ユーロスタット)による調査によると、EU内の国々の若者が実家を引き払う平均年齢は、スウェーデン、デンマーク、ルクセンブルク、フィンランドなどは、21歳で家を出るのに対して、マルタ、クロアチア、スロバキア、イタリアなどの地中海沿岸の国々はおよそ30歳から32歳と、北欧と南欧では10歳もの差があることがわかりました。ちなみにドイツは、23歳と比較的若い時期に家を出るそうです。南欧は確かに、家族同士の絆が北欧に比べると強い印象がありますよね。しかし、これには経済的な社会制度の違いも大きな理由のようで、例えばイタリアなどは、ドイツや北欧と比べると住宅給付金や、連邦奨学金など、国からの援助制度が充実していないためともいわれています。
温和な親子関係と経済的理由
他の国に比べて、実家を出る平均年齢が若いドイツですが、前述の調査では、ドイツの若年層(18歳~34歳)の両親との同居率は、43.1%で、イギリスやフランスの34%という数値を上回りました。
また、ドイツ連邦統計庁の2016年の調査では、ドイツ国内の独身男性(18歳~24歳)の68%が実家暮らしをしており、同年齢の独身女性は56%と約1割の差がありました。この理由には、家庭内における制約が娘に対してのほうが厳しいため、自由を求めて、女性は早めに実家から出る傾向があるそうです。
これらの調査結果を見ると、イメージとは少々違い、実家暮らしをしている独身若年層も割と多く、1980年代と比べるとおよそ倍の数になっているとのことです。この理由には、親子関係が良好なこと、世代間の価値観のギャップも少なくなり軋轢が生まれる要因が減った事、そして経済的負担も少なく快適であることなどが理由として挙げられるようです。しかし、何といっても経済的理由は大きく、人気の大学都市の高騰する家賃や、長引く大学生活と就職までの時間の長さなどは大きな要因のようです。
実家に留まるか、離れるか。大学生への経済的負担の大きさは、日本の場合も同じ問題を抱えていますし、介護問題や、増加する引きこもりなど、関連する問題も少なくありません。日本もドイツも、実家暮らしは自立できていないと、安易に揶揄することはできない社会制度全体の問題が潜んでいるのではないでしょうか。
参考HP
- Hotel Mama Wikipedia
- Endlich ausziehen – oder doch lieber “Hotel Mama”? T-online.de
- 若いドイツ人男性の7割近くが親と同居 ヨーロッパ経済ニュース
- Nesthocker in der EU European Data News Hub
これまで【日本人からみると不思議なドイツ事情】、【ものづくりの国ドイツ】を担当してまいりました、HHです。京都生まれ。ドイツ・フライブルク大学卒。留学中に得た経験をもとに、独自のアンテナを張って様々な側面からみたドイツをお伝えしていきたいと思います!皆さまのドイツ文化に関する興味・関心、ブログの感想もぜひ聞かせて下さいね。
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