ドイツの流行語大賞2023

 

明けましておめでとうございます。

2024年はどのような年になるのでしょうか。

そして昨年2023年はどのような年だったのでしょうか。

毎年12月にドイツ語協会(Gesellschaft für deutsche Sprache)が発表するその年のドイツの流行語大賞、2023年に選ばれた言葉をご紹介します。(2022年の流行語大賞の記事はこちら

 

2023年の流行語大賞はKrisenmodus(危機モード)

 

コロナ禍、ウクライナ侵攻、エネルギー危機、気候変動といったここ数年続いている不安定な世界情勢ですが、今年は更なる危機的状況に見舞われたドイツの現状を表している言葉が1位に選ばれました。

10月のハマスのイスラエルへの奇襲攻撃をきっかけとして勃発したガザ戦争、続く高インフレ、さらにはドイツ政府の債務危機、教職員の不足が深刻な教育現場での危機的状況なども含め、危機的状況が恒常化していることが選出理由となりました。

以下、Krisenmodusを含む2023年のドイツの世相を表す10の流行語です。

 

  1. Krisenmodus (危機モード)
  2. Antisemitismus (反ユダヤ主義)
  3. leseunfähig (読解力のなさ)
  4. KI-Boom (AIブーム)
  5. Ampelzoff (信号機連立の不和)
  6. hybride Kriegsführung (ハイブリッド戦争)
  7. Migrationsbremse (移民ブレーキ)
  8. Milliardenloch (数十億の穴)
  9. Teilzeitgesellschaft (短時間労働を推奨する社会へ)
  10. Kussskandal (キススキャンダル)

 

1、2、5、6、7、8位は、おおよそドイツおよびヨーロッパの緊迫した政治情勢やそれに起因する状況を表す言葉であることがわかります。

2位のAntisemitismus(反ユダヤ主義)はナチス体制やホロコーストを行ったドイツでは、現在のイスラエル・ガザ戦争はとりわけセンシティブな問題として取り上げられています。

国内で増加する反ユダヤ主義もみられますが、ドイツの国是はイスラエルへの支持を掲げており、人種差別や排外主義への批判が行われています。

しかし7位の言葉、Migrationsbremse(移民ブレーキ)が表しているのは、増加し続ける移民・難民への対応の厳格化が進んでいる現状が一方で存在しており、国内で民族、主義、思想が混沌とする状況が読み取れます。

 

 

6位hybride Kriegsführung (ハイブリッド戦争)はロシア・ウクライナ戦争で垣間見られるサイバー攻撃や世論操作といった裏側の戦法を指しています。

8位のMilliardenloch (数十億の穴)とは、メルケル政権中にコロナ対策費として余剰した600億ユーロをシュルツ首相(当時は財務相)が気候変動対策基金に充てたことが2023年11月に違憲とみなされたことによります。

現在のドイツの連立政権(社会民主党、緑の党、自由民主党)はいわゆる党それぞれのカラーをとって信号機政権(Ampelkoalition)と呼ばれていますが、この財政危機において意見が対立しているため、第5位のAmpelzoff (信号機連立の不和)が選出されているのもひとつの皮肉ですね。

 

3位のleseunfähig (読解力のなさ)はコロナ禍による学校閉鎖や増加する移民によって、ドイツ国民の読解力が低下していることを表しており、教育危機の一因ともなっています。9位のTeilzeitgesellschaft(短時間労働を推奨する社会へ)は、週休3日制や余暇をさらに充実させる働き方が議論されており、いわばドイツの働き方改革ともいえるかもしれません。

 

その他、4位KI-Boom (AIブーム)は文字通り昨今のAIブームに関して、10位Kussskandal (キススキャンダル)は、女子W杯でスペイン・サッカー連盟のルイス・ルビアレス会長から選手への無断でのキスが話題となったことから選出されました。

 

世相を表すドイツの流行語、2023年は2022年以上に厳しい現実を突きつけられていることがわかります。2024年は少しでも危機が緩和し明るい話題がのぼりますように。

 


参考HP

 

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