ウィーン住居事情

 

こんにちは、4月から『オーストリア留学日記』を担当して参りましたmona_tです。

最終回の今回は『ウィーン住居事情』と題し、私自身のウィーンでの家探し体験から、家選びの基準、そして日本とはやっぱりちょっと違う、オーストリアならではの家あるあるまで、盛りだくさんでお届けします。

 

ウィーン家探し事情

 

留学や単身赴任、ワーキングホリデーなど、海外での中・長期滞在が決まったら、滞在許可の取得と並んでまずやらなければならないのが住居探し。かくいう私も留学にあたり部屋探しをしたのですが、これがなかなか苦労の連続でした。

オーストリアでは若い人の多くが①学生寮②シェアハウス(Wohngemeinschaft, WG) ③アパートのいずれかに住んでいて、それぞれに違った環境があります。

 

まず①は、学生寮と言っても大学が直接運営しているとは限りません。

ウィーン大学には寮はないため、斡旋してもらうというよりはそれぞれの寮に自分で直接コンタクトをとるのが一般的。

次学期以降の空き部屋があれば申し込み、待機リストに載せてもらいます。

セキュリティがしっかりしている点や必要最低限の家具類がそろっている点がメリットで、また様々な学生と交流が生まれるので、まさに学生生活!というスタイルです。

ただし表向きには学生寮となっていても、実際には卒業した人が引き続き住んでいるケースも多くあり、そうなるとなかなか空きが出ないのが実情。

実際に入居が決まるのがギリギリだったりもするため注意が必要です。

国内外からたくさんの学生が応募するため、部屋を確保するには素早い初動が求められます。

 

②のWGは、2人などの少人数で部屋をシェアするものから、いくつかの家族で1つの大きな家をシェアする大規模なものまで、一言でWGと言ってもその実態は様々。

こちらは、WGを探すインターネットサイトやFacebookのグループに登録し、部屋を探している人と、逆にルームメイトを探している人がコンタクトを取りあってマッチングする仕組みが多いですが、大学の掲示板などにも時々、ルームメイトを募集する張り紙が貼ってあります。

基本的に個人同士のやりとりになるため、よりフレキシブルで細かな希望に合わせた部屋探しができるのがメリットである一方、競争率が高いのが難点。

特にWGでは同居人を最終的に決めるのは部屋をすでに借りている人なので、複数の候補者の中から選ばれる必要があります。

その戦いは、メッセージを送ってもなかなか返信が来ない、やっと返信が来たと思っても内見を直前にキャンセルされる、内見に進んでも最終的には並行して交渉していた他の候補者に決まったと言って断られる、といったことの連続。。

でも、家族でも友達でもない人と一緒に暮らすのですから、妥協ができないのはお互い様。あとから引っ越すことになるよりは良いのかも?

 

競争率の高さは、アパートの場合にも当てはまります。やりとりがドイツ語なのはもちろん、日本から探す場合には時差もあり、さらにオンラインで内見をさせてもらえるとは限りません。

ちなみにこれはあまり嬉しくない調査結果ですが、住居探しにおける差別というのはやはり存在するようです。

スタンダード紙に取り上げられていた研究によれば、外国の名前を持つ人は、オーストリア系の名前を持つ人と比べて家探しの際にもらった返信の回数、内見への招待回数、実際に入居できた数が明らかに少ない、というデータがあります。

もちろん家探し市場における人種差別ははっきりと禁止されており、すべての人がそうしたことを経験するわけではありません。

それでもウィーンに限らず、海外での家探しにはそれなりの忍耐と覚悟が必要だと、これまでに2回ウィーンで家探しをして私は感じました。

ちなみに私は以前冷や汗をかいた経験から、今回は留学が決まってすぐに部屋探しに着手しましたが、結局部屋が決まったのは渡航の3週間ほど前でした・・。

 

住居選びの基準-アルトバウ?ノイバウ?

 

部屋の広さから同居人、家具の有無、立地まで、家選びの基準は実に様々。

そんな中、オーストリアで部屋を探す時の基準の一つに、建物自体がアルトバウ(Altbau)ノイバウ(Neubau)か、の違いがあります。これは建物がアルト(古い)ノイ(新しい)かという区別です。

ちなみにドイツでも同じ区別がありますが、住居法で定められている基準年は異なります。

ドイツでは1949年が基準(※現在は築年とは異なる定義が使われる場合もあるようです)とされていますが、オーストリアでアルトバウというと、1953年6月30日以前に認可の降りた建物を指し、ノイバウはそれ以降の建物を指します。

ただし実際には1900年代に建てられた建物を広くアルトバウとみなすのが一般的で、定義上ノイバウとなるはずの1950年代から70年代の間に建てられた建物もアルトバウにカウントされるようです。

築60年近い建物をノイ(新しい)と呼ぶのは、現代の感覚からはやはり無理があるということでしょう。

私自身はノイバウのアパートに部屋を借りていますが、友人のWGなどにはアルトバウも多く、それぞれメリットとデメリット両方があると感じます。

例えばウィーンでは旧市街地の建物はほとんどがアルトバウです。豪華でユニークな装飾が施された壁や形の美しい屋根、趣のある大きな木製の玄関扉など、ウィーンの美しい街並みにはこうしたアルトバウの外観が大きく影響しています。

また建物の中も、日本ではなかなか見られないような高い天井や大きな窓、両開きのドア(Flügeltüren)など、開放的な雰囲気の部屋が多く、人気の理由です。

さらにオーストリアの住居法ではアルトバウに関して家賃の上限などのルールが細かく定められているため、一般的に家賃がノイバウよりも安いとされています。

こうしたメリットを考慮すると、街の中心近くで伝統的な建物に囲まれて暮らしたいという人にはウィーンのアルトバウはまさにぴったりです。

その一方で、アルトバウには甘んじなくてはいけないデメリットもたくさんあります。まず第一にはやはり建物が古いこと。

残念ながらこれは建物内のインフラが古いこととイコール。

ドアや窓の建て付けが悪いのは至って普通で、それに加えて電気系統が故障しがちだったり、地下室がじめじめしていたり、また5、6階建てのアパートでもエレベーターがついていないことがしばしばあります。

そうしたわけで私個人としてはノイバウ一択!なのですが、改めてノイバウの良さにも触れておくと、家賃が高くなりがちな一方で、間取りや暖房設備の効率が良いことから、光熱費などはアルトバウに比べて抑えられるとされています。

そしてすでにご紹介したようにウィーンの交通の便の良さを考えれば、必ずしも中心地でなくても問題はありません。

観光地から離れた閑静な住宅街で快適に住むことを求める人には、ノイバウが合っているかもしれません。

 

 

アルトバウとノイバウそれぞれの外観。比べると違いがはっきりと分かります。
上は12区(ノイバウ)、下は1区(アルトバウ)のケルントナー通り

 

 

ウィーンの家あるある?

 

以下では、そのほか個人的に日本と違って面白いと感じる点をいくつかご紹介します。

 

◆ウィーンにも蚊はいるーでも網戸はない!◆

夏が到来し、窓を開けて涼しい風を部屋に取り入れたくなる今日この頃ですが、網戸というものがないのが非常に悩ましいのです。

日本では非常に一般的かと思うのですが、ウィーンで元から網戸がついている家にお邪魔したことはまだありません。ではどうするかというと、ホームセンターのようなお店で売っている布製の網やネットを切って防虫窓を手作りし、これを粘着性のテープなどで窓枠に取り付けます。これをやっているお家はたくさん見るので、こうやって毎年毎年凌いでいるのだろうか‥?というのが素朴な疑問です。

 

◆エアコンなしで乗り切る夏◆

オーストリアでは日本ほど冷房設備が普及しておらず、エアコンは住居の基本設備ではありません。

これはヨーロッパの他の都市とも共通しているかもしれませんが、気候変動の影響で年々気温が上昇しているのも同じ。

オーストリアでは、エアコンの需要は年々増加している一方で、例えばマンションの一室にエアコンを取り付けたいと思った場合にそう簡単にはいきません。

まず家主の許可をとり、それからマンションの住民全員から承諾を取り付ける必要があります。

その上でさらに、建築に関する業務を担当する建築警察(Baupolizei)の許可も必要だそうです。

景観保護区域に指定されている地域ではこうした規制が特に厳しく、許可無く取り付けをすると罰金を課されるようですので注意が必要ですね。

歴史的な街並みを守るため、建物の外観の変化に厳しいのがウィーンならではだと感じます。

日中は30度台になる日も増えてきていますが、日本のように気軽に「ピッ」とできないのはなかなかつらいところです。。

いかがでしたか?

4回にわたるブログ記事『オーストリア留学日記』を楽しんでいただけたでしょうか。この記事を読んで、海外での学生生活やウィーンの街により興味を持って頂けたら非常に嬉しいです。各回の感想などもお待ちしています。有り難うござました!

 


参考ページ

Rassismus bei der Wohnungssuche: Franziska bekommt die Wohnung, Muzayen nicht – Bauen & Wohnen – derStandard.at › Immobilien

Altbau oder Neubau – was lohnt sich mehr? – citigrund.de

Altbau oder Neubau: Die Vor- und Nachteile – DER STANDARD Immobilien

Genehmigungspflicht für Klimaanlagen – wien.ORF.at

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