ドイツの街で見かける面白い広告柱「Litfaßsäule」

 

ドイツの街を歩いていると、日本の都市と違って、屋外広告物や看板が少なく美しい街の景観が損なわれていないな~と実感します。

もちろんドイツの街頭でも広告物は見かけるのですが、ちょっと変わっています。街中でよく目にするのは、直径約1.4メートル、高さが2.6~3.6メートル程の大きな円筒形の広告柱です。

この広告柱には、様々なサイズの多くの広告がベタベタ貼られているのですが、存在感があるので人目を惹き、また街の景観も損なわず、なかなかオシャレなんです。

このドイツの街中で見かける広告柱はLitfaßsäuleと呼ばれ、ドイツ人に長く愛されてきた歴史を持っています。

 

1943/Bundesarchiv, Bild 183-J07186 / CC-BY-SA 3.0 Berlin abwehrbereit gegen den Luft-Terror
An den Anschlagsäulen sind Aufrufe des Gauleiters Reichsministers Dr. Goebbels veröffentlicht mit Richtlinien und Hinweisen für das Verhalten bei Angriffen.
11.8.1943

 

Litfaßsäuleの歴史

 

円筒形の広告柱Litfaßsäuleの歴史は、その名前が示すように、Ernst Litfaßさんという印刷業を営む人が1854年にベルリン市から許可を得て、その翌年に円筒形の広告柱をベルリン市に100本設置したことから始まりました。

この円筒形の広告柱に広告を貼るというアイデアは、すぐに大好評となり、Litfaßsäuleはベルリンだけでなく、ドイツ全土の街中に設置されるようになります。

平面の屋外広告と比べて、円筒の全周にわたって360度の紙面スペースを活かせるため、一本の広告柱に多くの広告を貼ることができ、また個人でも安い料金で広告を出すことができたため、Litfaßsäuleはドイツの街頭で情報提供源として、また公共の場で人々が落ち合うスポットへと発展していきます。

世界大戦中は、Litfaßsäuleに行方不明者の捜索願が貼られたり、戦況を伝えるニュースが貼られたりと、新聞と同様の機能も果たしたそうです。1979年にはLitfaßsäuleの125年の歴史を記念した郵便切手も発行されました。

 

このLitfaßsäuleに新しい広告を貼る際は、古い広告の上にどんどん新しい広告が糊付けされて重ねられていくため、次第に柱が太ってきてしまうのですが、約150層の紙面に到達すると、これまでの広告をすべてそぎ落として、柱をダイエットさせるようです。

そしてスリムになった柱に、再び広告を貼り重ねていくそうです。この糊付け作業は、現在でも人の手による手作業で行われています。

2021/Hamburg Litfasssäule Spielbudenplatz-Reeperbahn/CC BY-SA 4.0

 

 

Litfaßsäuleはドイツの街から消えない

 

現在、ドイツ全土には約5万本ものLitfaßsäuleが設置されているそうです。貼られている広告は、劇場やコンサートなど、カルチャーイベント系が多く、若者を意識した広告が多い感じです。

しかし時代が変わり、デジタル化が進んだ今、若者はスマートフォンで宣伝広告を見ることが多いでしょうし、昔ながらのLitfaßsäuleというアナログ式の広告手段は、街頭から姿を消してしまった公衆電話ボックスと同様の運命を辿ってしまうのではないかと心配になってしまいます。

2019年、ベルリン市でLitfaßsäuleの広告事業を担当していた会社が、新しい会社に代わり、ベルリン市にある古いLitfaßsäuleを解体して、最新デジタル式の1500台の看板広告を導入することが決定されました。

しかし、Litfaßsäuleに対するベルリン人の愛着は深く、伝統を継続するために、ベルリン市内の歴史ある約50本のLitfaßsäuleが文化財保護の対象となり、解体を免れることになりました。

一番古いLitfaßsäuleはベルリンのオシャレ観光スポットの「ハッケシャー・マルクト」にあるそうです。

現在一部のLitfaßsäuleは照明が取り付けられたデジタル式のLitfaßsäuleに生まれ変わり、紙の広告をわざわざ手作業で糊付けする必要もなくなっています。

このようにLitfaßsäuleは時代の流れに合わせてデジタル化されているものもありますが、昔ながらのLitfaßsäuleもドイツの至る所でまだまだ健在です。

若者を対象とした広告が多いLitfaßsäuleですが、環境意識の高いドイツの若者たちは、車で移動するのではなく、自転車やバス・電車といった公共交通機関を使うことが多いため、屋外でLitfaßsäuleを目にする機会が多く、若者に対する広告効果も侮れないようです。

ドイツに旅行に行かれた際は、是非街でLitfaßsäuleを探してみてくださいね!

 


 

参考ウェブサイト

https://www.sueddeutsche.de/wirtschaft/aussenwerbung-ernst-litfass-der-saeulenheilige-der-werbewelt-1.2858944

https://de.wikipedia.org/wiki/Litfa%C3%9Fs%C3%A4ule#:~:text=Eine%20Litfa%C3%9Fs%C3%A4ule%20ist%20eine%20auf,z%C3%A4hlt%20zum%20Bereich%20der%20Au%C3%9Fenwerbung.

https://learngerman.dw.com/de/kampf-gegen-das-chaos-die-litfa%C3%9Fs%C3%A4ule/a-19050167

 

 

 

 

Comments

(0 Comments)

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA