ハイジ作品を比べてみたら・・・
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今年の7月から10月には、東京国立近代美術館で「高畑勲展」が開かれていましたが、皆さん見に行かれましたか。
ほぼ同時期にチューリッヒにあるスイス国立博物館では、高畑勲監督が手掛けた作品「アルプスの少女ハイジ」を取り上げた“Heidi in Japan”展が開かれていましたが、こちらはどうでしょうか。
これらの展覧会の時期が重なっていたのは偶然だったかは分かりませんが、「ハイジ」を通して日本とスイスの繋がりを改めて感じ、私は(勝手に)胸が熱くなっていました。
皆さんとハイジの出会いは何を通してでしょうか。
ちなみに、私は子供の頃にスイスで見ていたアニメ(ドイツ語)と実写のテレビドラマ(1978年作)が最初の出会いだったと記憶しています。
今回は、数多く存在するハイジ作品のうち本、アニメ、映画1作品ずつのドイツ語版「ハイジ」を通して、作品に使われる言語に着目したいと思います。
原作はスイスドイツ語ではない
ハイジの原作「Heidis Lehr- und Wanderjahre」(1880)と「Heidi kann brauchen, was es gelernt hat」(1881)は、スイス人作家さんが書いたものですが、作品自体はスイスドイツ語ではなく、標準ドイツ語で書かれています。
以前このブログでも触れましたが、スイスドイツ語は口語なので、通常は文章を書くときには用いません。
SNSやメールなど友達とのやり取りで使うことはありますし、あえて全文スイスドイツ語で書こうと思えばできますが、長文になるとスイス人でも読みづらいでしょう。
そういった意味でも、原作が標準ドイツ語であることに違和感は全く感じません。
アニメのハイジもスイスドイツ語ではない
日本生まれのアニメ「アルプスの少女ハイジ」のドイツ語吹き替えを子供の頃に見ていましたが、このハイジもスイスドイツ語を話しません。
口語であるはずなのに、一体何故でしょう。
実はアニメの吹き替えが放送されていたのはスイスのテレビ局ではなく、ドイツのZDFだったのです。ドイツのテレビ局が吹き替え放送するのであれば、あえてドイツ人が聞き取りづらいスイスドイツ語を使わないのも納得ですね。
私が子供の頃にスイスで見ていたアニメも、実はこのドイツの放送局のものでした。(ドイツのチャンネルやオーストリアのチャンネルなどが見られる環境にありました。)
映画「ハイジ アルプスの物語」
2015年にスイス・ドイツ合作の作品で、日本でも公開されたこの映画はスイスドイツ語と標準ドイツ語の両方が使われていて、スイス人が日常で使う姿に最も近いです。
基本的にはスイスのシーンはスイスドイツ語、ドイツのシーンは標準ドイツ語という風になっているので、映画の中で景色や登場人物だけでなく、言語を聞いてどの国の場面かを判断することができます。
また、フランクフルトのシーンでは字が読めなかったハイジの変化や、マナーを少しずつ身に着けるところが印象的ですよね。このシーンで、標準ドイツ語がうまく話せずスイスドイツ語っぽくなってしまうハイジが楽しめる方はきっとドイツ語・スイスドイツ語上級者でしょう。ぜひ注目して見てみて欲しいです。
今回見てきたように、スイスドイツ語を話すはずの登場人物でも、作品によってはずっと標準ドイツ語で描かれています。その背景を知ると、言語に対する理解がより一層深まるのではないでしょうか。私も普段はストーリーに集中していますが、言葉に注目することで新たな発見があるように感じました。
Uf widerluege!
(それでは、また。)
Chuchichäschtli
参考ホームページ
- https://www.momat.go.jp/am/exhibition/takahata-ten/
- https://www.landesmuseum.ch/heidi-in-japan
- https://gutenberg.spiegel.de/autor/johanna-spyri-562
- https://www.spiegel.de/geschichte/heidi-zeichentrick-serie-von-hayao-miyazaki-und-isao-takahata-a-989369.html
- https://www.swissinfo.ch/jpn/tvアニメ放送から45年_-ハイジ-誕生秘話-制作者がロケ地スイスで語る/45202456
- http://heidimovie.jp
Chuchichäschtliです。スイス・チューリッヒ州生まれ。アルプス山脈を眺められる場所で、のんびり育ちました。母国語はドイツ語と日本語。好きな食べ物はスイスチーズと梅干し。こちらのブログでは主にスイスネタを担当することになりました。自分自身の経験を交えながら、皆様に親しみを持ってもらえるような記事を書いていけたらと思っています。
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