ドイツの大学 学費が無料?国際的な評価は?

古い伝統を誇る名門大学を多く抱えるドイツ。総合大学(Universität)と専門大学(Fachhochschule)に大別され、専門大学には音大や美大などが数えられます。国内の大学数はおよそ426校、そのうち私立大学は120校です。ドイツ国内の大学のほとんどは国立大学です。それに対して日本の大学数は781校(参照:旺文社教育情報センター2020)で、その8割が私立大学であり、日本とドイツでは数、運営ともに大きな差があります。

日本とドイツの大学‐決定的な違いは?

 

日本とドイツの大学の違いとはなんでしょう。以前にもお伝えしましたが、大学入試制度の違いは、最初の大きな違いですね(受験戦争―日本とドイツ、厳しいのはどっち?)。日本のように大学入試の受験戦争がないとはいえ、厳しい卒業資格試験が存在するドイツ。しかし、10歳で進路を決め、卒業資格試験の受験は2度しか与えられていないことを考えると、後戻りできない分、ドイツの方が厳しい道といえるかもしれません。

二つ目の大きな違いは学費。ドイツの国立大学は学費が原則無料です。2000年代半ばに一度学費制度が導入されたものの、市民から大きな反対運動が起こり、撤廃されたという経緯があります。(州および専攻課程、国籍等の条件により学費が発生する場合もあります。参照)学費負担がないことも一因となってか、長期間大学に在籍している学生も多く、また留年という制度もないため、社会人デビューする年齢が日本より高くなるのも特徴的です。

他にも様々な違いがありますが、特に注目したいのは大学のランク付けです。ドイツでは明確な偏差値がないため、日本のような大学のランクによる序列は基本的に存在しません。(企業、学生からの評価や論文引用数やその他諸々の情報をスコア化したランキングは存在します。参照:CHE Ranking)重視されるのは大学名よりも、研究内容や指導教授、そして卒業試験の成績で、これらがその後の就職や進学へのパスポートとなることが多いのです。

世界大学ランキングでは?国際競争力を高めるために 

 

英国の高等教育専門誌によるTHE世界大学ランキングでは、イギリスやアメリカの大学が軒並みランクインしています。2020年の同ランキングに食い込んでいるドイツの大学は、32位のミュンヘン大学を筆頭にミュンヘン工科大学(41位)、ハイデルベルク大学(42位)、シャリテ―ベルリン医科大学(75位)、テュービンゲン大学(78位)が健闘していますが、英米圏に圧倒されていることは否めません。

そもそもドイツの大学は、英米圏を基準とする大学制度とは異なった、独自の学位制度(Diplom, Magister)で運営されていたため、なかなか国際競争には食い込めない事情もありました。このためドイツでは2000年代半ばから、学士課程(Bachelor)と修士課程(Master)が徐々に導入され、国際基準への移行が図られてきました。また、英語で開講される専攻課程も増え、ドイツの大学も様相が変わってきました。

そして2006年には、政府、ドイツ学術振興協会(Deutsche Forschungsgemeinschaft)、ドイツ学術審議会(Wissenschaftsrat)らによって、ドイツの大学の国際競争力を向上させるための助成プログラム、エクセレンス・イニシアティブ(Exzellenzinitiative)が開始され、選出された先端研究施設、大学、大学院が莫大な研究援助金を受けてきました。現在はエクセレンス戦略(Exzellenzstrategie)と名を変え、12の大学がエリート校として選出されており、年間約1億4800万ユーロ(約198億円)という研究費が援助されています。

国際競争力を高めるための大学改革や資金援助によって、外国からの優秀な人材の流入も増え、研究職ポストも増加傾向にあるとの声もあります。ドイツの大学は、英米圏の大学にも劣らぬ魅力がありますね。


参考HP

参考文献

  • 田野大輔/柳原伸洋編 『教養のドイツ現代史』ミネルヴァ書房 2016
  • 『ドイツにおける研究公正と「学問の自由」(1) : ドイツ研究振興協会(DFG) の機能と法制度上の課題』 藤井 基貴, 栗島 智明著 『静岡大学教育学部研究報告. 人文・社会・自然科学 篇』 2018

 

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