
オーストリア国家公認ガイドになるためには?
目次
初めまして、シリーズ「ゆる~く旅するオーストリア」を担当することになりましたKen’s Caféと申します。タイトルのようにゆる~くオーストリアのことを発信していきたいと思います。皆さま、よろしくお願いいたします!
私はウィーンでオーストリア国家公認ガイド「Staatlicher geprüfter Fremdenführer Österreich」として働いています。
主に日本から来るお客様に対して、団体旅行から会社視察までご要望に合わせ、オーストリアでの観光をご案内しています。
今回は以下、私の苦労話?!を交えつつ、オーストリアの国家公認ガイドに関して掘り下げていきたいと思います。

なぜオーストリアに?
オーストリアに移り住んだ理由も子供の頃から憧れがあったとか、クラシック音楽にハマったとか、そんな素晴らしい理由があったわけではないのです。
学生時代のドイツ留学をきっかけに漠然となんとなく、ドイツ語を使って働くか、ドイツ語圏で働いてみたいなと考えたことがありました。
実際にスイスでのハイキングガイドや、ドイツ語の特許翻訳の校正業務等、色々と挑戦をしてみました。
既にドイツとスイスには数か月から数年単位で行ったことがありましたが、まだオーストリアには行ったことがなかったので、最初はワーキングホリデーで様子を見ることにしました。
肌に合わなければ日本に戻ってこようと考えました。
そしたら思いのほか、居心地がよく、ウィーンの歴史的な建造物やカフェハウス巡りなんかしたらあっという間に時が経っていました。
国家資格!?そんな話、聞いてませんよ!
ウィーンで生活をするために仕事を探す必要がありました。
まず縁があって就職をしたのは旅行関係の会社になります。
ここで現在の仕事、国家公認ガイドについて知るわけですが、まず衝撃を受けたのが、オーストリアではガイドになるためには国家資格が必要であるということです。
資格が無い状態でガイドをした場合は法律違反となり、見つかった場合は数年間の入国禁止等の重い罰則が科せられるということ。
また資格を取得するためにまずは国が指定するガイド学校を卒業した上で、さらに国家試験を合格することが条件でした。
そもそもフルタイムで仕事をしながらガイド学校に通うのが現実的ではなく、興味はあったものの、当時はなろうという気持ちにはなりませんでした。
そうあの時までは!
ピンチをチャンスに!
2020年にコロナ禍が世界中で猛威を振るいます。
旅行業界は大打撃を受け、その影響で無職となってしまいます。
海外で無職、非常にピンチな状態です。
正直帰国することも考えましたが、反対に時間は沢山あったので、失うものは何もないし、開き直ってやりたいことをできるチャンスととらえ、思い切って国家公認ガイドになる決断をし、学校の門を叩きます。
実際に入学をしてみると20名ぐらいの生徒がいて、国籍も年齢もバラバラでした。
主にヨーロッパ圏の人が中心で、アジア系は私だけでした。
授業はドイツ語で行われ、歴史を中心に、美術、政治、さらには経理の授業もありました。
たまに週末も授業が行われ、実際に美術館等を訪問し、実地での勉強の機会もありました。
そもそもドイツ語の専門用語を勉強するのが大変な上に、たまに方言が強い先生がいて授業内容がわからず、泣く泣くついていくこともありました。
卒業試験はなかったので、ちゃんと出席さえすれば、誰でも卒業はできるものの、私の前には最大の難関の国家公認試験が立ちはだかります。
しかも1つではなく、3つです。
ドイツ語で夢を見るぐらい勉強をして挑みましたが果たして運命はいかに?
国家公認試験とマリーアントワネット
試験の内容は「筆記試験」「口頭試験」「実地試験」となっていて、全て別々の日に執り行われ、合否は試験毎で判定されるので、例えば「筆記試験」は合格で、他の試験は再度やり直しということもあります。
やはりこの中でも最難関なの「実地試験」となります。ウィーン州全域と試験範囲が多いので勉強することが沢山あり、運悪く厳しい試験官に当たると合格率も30%を下回ることがあります。
そして私は厳しいと言われる試験官にあたってしまいました。
試験内容は、「バスの中での案内」「徒歩での案内」「美術館等の建物の中での案内」と3つに分かれています。
私の試験の回では、7人の参加者がいました。
まずは「バスの中での案内」があり、数人が当てられ、話をしていました。
私も次当てられるかもと思い身構えましたが、急にここで降りて下さいと言われ、私はシェーンブルン宮殿内「Schloss Schönbrunn」の案内からスタートになりました。
私の担当はマリーアントワネットの部屋「Marie Antoinette Zimmer」でした。
ここであなたの知っていることを全部話しなさいと言われ、とにかく必死で勉強したことを話し、質問されたことに答えました。
かなり緊張をしたので何を答えたのか覚えていません。
その後も試験は続き、結果発表のタイミングになりました。1人また1人と別室に呼び出され、緊張もクライマックス。
とうとう私の番になり、例の厳しい試験官の口から「Herzlichen Glückwünsch!!」と言われ、思わず「Damit habe ich nicht gerechnet, aber danke schön!!(合格するとは思っていませんでした、ありがとうございます‼)」と言いました。
かなり冷静を装ってましたが、踊りだしそうな勢いで嬉しかったです。

ガイドになってこんな嬉しいことが!
こうしてガイドとなって今年で3年、一番の特典は何といっても、、オーストリア国内の美術館や宮殿などに基本的に無料で入れることです!
好きな場所に好きなだけいることができるので、厳しい試験を乗り越えた人へのご褒美と思って、沢山使わせてもらっています。
近くまで来たし入ってみようかなという簡単なノリで立ち寄ることができます。
いかがでしょうか?今回のブログを通じて皆様にも国家公認ガイドのことが少しでも伝わっていると嬉しく思います!
次回からガイドらしくゆる~く旅するスタイルでお送りできればと思います!

ウィーン在住。学生時代にドイツのフンボルト大学留学、過去にはトランスユーロにて勤務経験あり。
社会人になってから、初めてウィーンに渡り魅力的なカフェハウスや歴史的建造物に感銘を受ける。
オーストリア国家公認ガイドの資格を取得後、日常的に団体旅行、音楽学生ツアー、個人旅行や会社視察を担当し、ウィーンを中心にガイド活動しています。日本にいる方にも魅力を届けたいとの思いから、オンラインツアーもスタート。この度はブログにて現地ガイドならではのオーストリアの話をゆる~く発信していきたいと思います!インスタグラムでも情報を発信しておりますので、気になる方はぜひどうぞ!
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