Danke, Ade, Messi!
スイスドイツ語講座その16:感謝の言葉

 

皆様お久しぶりです!

今までかなりの頻度でスイスドイツ語講座を行ってきましたが、実は先日重要なことに気付いてしまいました。

本講座ではなるべく実用的なスイスドイツ語を中心に、色々な場面で使用できる言葉をご紹介することを心掛けているものの、使う回数が最も多いと言っても過言ではない感謝の表現を教えていませんでした。

感謝は仕事、私生活を問わず対人関係において決して忘れてはならないもので、それをするのとしないのとでは周りの人の印象を大きく左右する一番大切な感情表現です。

したがって、今回はスイスドイツ語をマスターする気がなくても、観光でスイスを訪れたり、どこかでスイス人と遭遇したりした際のために知っておくべき感謝の言葉について色々とご説明させていただきます。

 

ドイツ語で感謝を伝える基本的な言い方

 

感謝を表す言葉はその重要性に加え、場面を問わずに使用頻度も多いことから、外国語を学んでいなくても大半の人は様々な言語でそれらを一般知識として知っていることが少なくありません。

そのため、ドイツ語で「ありがとう」を「ダンケ」(Danke)と言うことを既にご存知の方も多いのではないでしょうか?

とはいえ、感謝の気持ちを表す方法は多様で、人によっても違いがありますので、最もストレートな「ありがとう」以外にもいろいろな表現があることを忘れてはいけません。

例えば、日本語でも「どうもありがとう」、「とても感謝しています」、「お礼申し上げます」など時と場合、さらに相手が誰であるかによって言い方を変えますよね?

これは日本だけでなく、私が知る限りでは全ての国と地域で同様であるため、それぞれの言語において感謝を表す語が豊富に存在します。

したがって、ドイツ語にも「ダンケ」の他に、「フィーレン・ダンク」(Vielen Dank)「ダンケ・シェーン」(Danke schönといった別の言い回しが数々ございます。

ただし、その殆どには「ありがとう」を意味する「Danke」、もしくは「感謝」に該当する「Dank」(ダンク)が含まれているのが共通しており、全く異なる言葉を入れて感謝の気持ちを述べることは基本的にありません。

そして、スイスドイツ語になれば標準ドイツ語と比べてどのように異なるのかと問うと、実はこれと言った違いがなく、発音だけに微妙な差が見受けられるぐらいです。

そのような理由もあって、感謝に関する各種表現を個別にご説明するよりも、最も頻繁に使われている言い方を発音も含めて対訳表に纏めましたので、それをご覧いただければ分かりやすいと思います。

 

ドイツ語 スイスドイツ語 日本語訳(直訳)
Danke

(ダンケ)

Danke

(ダンケ)

ありがとう
Danke sehr

(ダンケ・ゼアー)

Danke sehr

(ダンケ・セール)

とてもありがとう
Danke vielmals

(ダンケ・フィールマルス)

Danke villmal

(ダンケ・フィルマル)

たくさんありがとう
Vielen Dank

(フィーレン・ダンク)

Ville Dank

(フィレ・ダンク)

たくさんの感謝
Herzlichen Dank

(ヘアーツリヒェン・ダンク)

Herzliche Dank

(ヘルツリヘ・ダンク)

心から感謝
Besten Dank

(ベステン・ダンク)

Beschte Dank

(ベシュテ・ダンク)

最高の感謝
Tausend Dank

(タウセント・ダンク)

Tuusig Dank

(トゥースィク・ダンク)

千の感謝
Unendlichen Dank

(ウネントリヒェン・ダンク)

Unendliche Dank

(ウネントリへ・ダンク)

無限の感謝
Danke für alles

(ダンケ・フュアー・アレス)

Danke für alles

(ダンケ・フュル・アレス)

全てにありがとう
Danke schön

(ダンケ・シェーン)

Dank schön

(ダンク・シェーン)

どうもありがとう

 

「メルスィー」と言ってもOK

 

スイスドイツ語講座ということもあり、上記一覧表には標準ドイツ語との比較でスイスドイツ語の感謝の言い方を記載させていただきましたが、日常生活では流行や個人的な好みで自国の言葉のみならず、外国語を用いるケースも少なくありませんよね?

例えば、日本人の中には感謝を伝える際に日本語で一般的な「ありがとう」の代わりに英語の「サンキュー」(Thank you)を使う方の割合が多いように感じられます。

ドイツ語圏に関しては英語の「th」の発音に対する苦手意識があるせいか、「サンキュー」は殆ど使用されていません。

一方、フランス語の「メルスィー」(Merci)はかなり浸透していて、日常生活で度々耳にすることがあります。

しかも、「メルスィー」は外来語としてドイツ語辞書にも掲載されていることから、ビジネスの場面で用いることまで容認されているほどですので、もはや完全に「Danke」の同意語になっている状況です。

また、個人的にドイツ人やスイス人からスペイン語で「グラスィアス」(Gracias)と言われて感謝された経験がありますが、この表現はドイツ語圏で一般的に伝わるものの、「メルスィー」と違ってドイツ語圏では感謝の言葉としてさほど広く認められていないことから、使用する際には注意が必要です。

というのも、親しい相手に対してなら「グラスィアス」と言ってもその気持ちを快く受け取ってくれるものの、他人ならふざけていると誤解してかえって気を悪くする可能性があります。

したがって、ドイツ語圏においてドイツ語以外の言語でお礼を言うことも可能である一方、世間で一般的に用いても問題ないのはフランス語の「メルスィー」のみであることを念頭に置いてください。

 

 

Danke, Ade, Messi!

さて、感謝を伝える言葉を一通りご紹介したところで、実際に使用される言い方の地域差についても言及したいと思います。

既に申し上げたように、ドイツ語とスイスドイツ語では発音を除いて、表現自体に相違点がないものの、特定の言い方が一部の地域で多く用いられ、他ではあまり使われない傾向が見受けられます。

例えば、ドイツやオーストリアでは上記一覧表の最後に記載している「ダンケ・シェーン」(Danke schön)がかなりメジャーな感謝の表現であるのに対し、スイスにおいてそれは殆ど使用しないのが現状です。

逆に、フランス語の「メルスィー」はスイスで「ダンケ」と並ぶほど頻繁に用いられている一方、ドイツやオーストリアではそこまで使われていません。

当然ながら、大半の方は場面や相手によって言い方を使い分けたり、好みや普段の癖で表現をチョイスしたりしますが、それでもドイツ人なら「ダンケ・シェーン」、スイス人なら「メルスィー」で感謝を言い表すイメージが強いです。

また、スイス人が「メルスィー」と言う際、大半の方はそれを少し詰まらせて「メッスィー」(Messi)と発音することが多いです。

響きだけで判断すると、アルゼンチン代表の世界的サッカー選手である「メッシ」こと「リオネル・メッスィー」(Lionel Messi)の苗字を言っているように聞こえますが、これは当然ながら単なる偶然で両者の間に何らかの関連性はございません。

若い世代なら「メッシ」の人気に便乗して、感謝を述べる時にあえて「メッスィー」をチョイスしている可能性もあることを否定できないものの、それ以外の世代は以前から「メッスィー」と言っていましたので、サッカー事情は全く関係ないと言えます。

そして、スイスではこの「メッスィー」を「ダンケ、アデー、メッスィー!」(Danke, Ade, Messi!)という形でよく使う習慣があります。これは直訳すると「ありがとう、またね、サンキュー!」のような表現で、お別れの際に用いる言い回しです。

一番初めに感謝を表す「ダンケ」が入っていることから、最後に改めてお礼を申し上げる「メッスィー」をわざわざ付ける必要はないため、意味的には少し不自然なフレーズにも思えます。しかし、スイス人の間ではすっかり決まり文句として定着しており、日常生活のあらゆるシチュエーションで耳にしますので、スイスドイツ語特有の日常会話における感謝表明の応用例として是非覚えておいてください。

 

 

「Nei Danke」

 

感謝の言葉との関連で忘れてはいけないものとしてはもうひとつ重要な表現がございます。

これは必ずしも感謝の気持ちを表しているとは限りませんが、ドイツ語を始め、様々な言語で丁寧な言い方をする時には感謝の言葉を入れるのが不可欠ですのでついでに学んでおきましょう。

その表現とは他人から何かを提案または提供されて、それを断る時に使う「いいえ、結構です」になります。

ドイツ語では相手が何かをしてあげたい、もしくは何かを渡したいけど、自身がそれを受け取りたくない際に「ナイン、ダンケ」(Nein Danke)と言うのが普通です。

この言い方は元々「いいえ、結構です。でもそのお気持ちはどうもありがとうございます。」を「いいえ、ありがとう」に略したものであることから、感謝を表す「ダンケ」が含まれています。

そして、スイスドイツ語も発音だけに些細な違いがあるだけで、標準ドイツ語と全く同じフレーズを用いて「ナイ、ダンケ」(Nei Danke)と表現するのです。

因みに、ドイツ語圏では日本のように本当は受け取りたいのに相手に配慮して最低でも一度は「結構です」と言いながら断るのが礼儀とされていません。

そのため、「ナイ、ダンケ」は純粋に受け取りたくない時にだけ使用します。

また、内容によっては提供されたものを受け取るのが死んでも嫌で「勘弁してくれ」と言いたくなるパターンもあるかと思いますが、そのような場合であっても相手に対してかける言葉は「ナイ、ダンケ」とするのが一般的に大人の対応とされています。

したがって、「ナイ、ダンケ」さえ知っておけば、スイスで相手を不快にさせることなく、丁寧かつ礼儀正しい言葉で拒否の意思表示をすることができますので、是非皆様のボキャブラリーにも加えていただければ幸いです。

 

 

感謝の表現は全ての言語において一番重要な意思表示と言っても過言ではないので、ドイツ語の「ダンケ」や「ダンケ・シェーン」を既に知っていた方も少なくないでしょう。

そのような背景もあって、今回は感謝表明に纏わる言葉の全容に加え、日常会話での使用に重点を置かせていただきました。

さらに、過去のスイスドイツ語講座と比べて難易度もさほど高くない内容だったことから、皆様がしっかり基礎を学んで、旅行なりビジネスなりで実践していただくことを期待しております。

では

Bis zum nöchschte mal!

Birewegge

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