2024年ドイツの流行語大賞Das Wort des Jahres 2024
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あけましておめでとうございます、2025年の幕開けです。
毎年恒例となって参りましたが、今年もまずはドイツ語協会(GfdS)が選んだ2024年のドイツの流行語大賞についてお伝えします。(2023年の流行語大賞、2022年の流行語大賞)2024年もドイツは政治的にも社会的にも多くの課題を抱えていました。それは流行語にも表れています。
2024年のドイツの流行語大賞はAmpel-Aus:「信号連立の終焉」
この言葉は、2024年11月にSPD(ドイツ社会民主党)、緑の党、FDP(自由民主党)からなる「アンペル連立(信号連立政権/Ampelkoalition)」が劇的に崩壊したことを指しています。
もともと、この信号連立という表現自体は、各党の色(SPDは赤、緑の党は緑、FDPは黄色)を交通信号機に結び付けたメタファーです。
この崩壊の引き金となったのは、財務大臣クリスティアン・リンドナー(FDP)が連邦首相オラフ・ショルツ(SPD)によって解任されたことですが、この政治的出来事は「衝撃的な出来事」として認識され、同時期に発表されたアメリカ大統領選挙の結果さえもかき消すほどの影響力があり、数週間にわたってドイツの政治情勢を支配しました。
これにより、他のFDPの閣僚が辞任し、最終的にFDPが連立政権から脱退しました。
12月の連邦会議ではショルツ首相が不信任となり、ドイツではまれな解散総選挙が今年2月に行われる運びとなっています。
第2位 Klimaschönfärberei:「気候美化」
「気候美化(Klimaschönfärberei)」とは、気候変動の影響や気候対策の緊急性を過小評価したり、環境保護対策を実際以上に美化しようとする試みを批判的に表現する言葉です。
企業や団体がグリーンウォッシング(環境配慮しているように装いごまかすこと)の一環として、自社の環境対策を過剰にアピールすることがあります。
特に、ドイツでは2024年に企業が戦略的理由で気候対策を中国やインドにアウトソーシングする動きが増加しており、このような対策が実際に効果的なのか、単なる目くらましに過ぎないのかを評価するため、AIプログラム「Climinator」が登場しました。
このプログラムは、数分で事実確認を行い、信頼できる気候研究と照らし合わせることができ、企業や政府の気候対策の真偽を迅速に判断できる点で注目されているとのことですが、正直何が本当なのかますますわからなくなりそう…というのが個人的な感想です。
第3位 Kriegstüchtig:「戦争遂行能力」
国防相ボリス・ピストリウスは、2029年までにドイツをKriegstüchtig「戦争遂行能力を持つ状態」にする必要があると発言し物議を醸しました。
この発言は、ロシアのウクライナ侵攻を受けてのものであり、ヨーロッパの安全保障が転換期を迎えているという認識に基づいていますが、この方針転換は、長年平和主義を貫いてきたドイツにとって大きな転換点となる可能性があり、軍国主義への懸念もある一方で、平和を維持するための抑止力も強調されています。
4位以下のランキング
4位以下のランキングは次の言葉が選ばれました。
第4位 Rechtsdrift:「右傾化」
政治的議論が右寄りにシフトしている現象。選挙や政治的潮流で顕著になった1年でした。
第5位 Generative Wende:「生成的転換」
伝統的な人工知能(AI)から、自己生成可能な高度なAIモデルへの転換期を表す言葉。
第6位 SBGG:「自己決定法」
2024年11月、性別登録に関する法律の改正で、より簡便な手続きで性別変更が可能となりました。
第7位 Life-Work-Balance:「ライフ・ワーク・バランス」
従来の「ワーク・ライフ・バランス」から、生活を優先する価値観への変化。
第8位 Messerverbot「ナイフ禁止令」
公共空間の安全を守るためナイフの所持を厳しく制限する法律が施行。近年の治安状況を反映。
第9位 Angstsparen:「将来への不安からくる貯蓄」
経済的な不安から消費を控え、節約する行動。経済に負の影響がある一方、借金の減少という効果も。
第10位 Deckelwahnsinn:「キャップ騒動」
プラスチックボトルのキャップを取り外せなくするEUの新規制に対する議論。
いかがでしたか。不安定な社会情勢が如実に表れており、不穏な要素が多く見られる1年だったようです。
2025年はどのような流行語が選出されるのでしょうか。今年は明るい話題が少しでも多い1年になりますように。
参考HP
- Wort des Jahres Gesellschaft für deutsche Sprache e.:https://gfds.de/wort-des-jahres/
これまで【日本人からみると不思議なドイツ事情】、【ものづくりの国ドイツ】を担当してまいりました、HHです。京都生まれ。ドイツ・フライブルク大学卒。留学中に得た経験をもとに、独自のアンテナを張って様々な側面からみたドイツをお伝えしていきたいと思います!皆さまのドイツ文化に関する興味・関心、ブログの感想もぜひ聞かせて下さいね。
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