会長のドイツ出張ブログ ④
コブレンツの劇場で演劇初体験!
目次
Ei Gude, wie ?
トランスユーロ会長の加藤です。
ミュンヘンでの仕事を一通り終えた私は同行者と別れ、ここからは単身で次の目的地であるデュッセルドルフを目指してドイツ鉄道(DB)の高速列車・インターシティーエクスプレス(ICE)に乗り込みました。
途中マンハイム(Mannheim)で乗換があるので、ICEが遅延しないかヤキモキしましたが、幸運にも遅延はなく乗り継ぎもスムーズにできました。
ちなみに、私がドイツ滞在中に利用したDBの特急はほぼ全て定刻通りに運行してくれました。なかには途中で定刻よりも5分早く走行した列車もあり、そのときは思わず車掌が「只今定刻より5分早く運転しています!」と得意気に車内アナウンスをしたほどです。フフフ、これはやはり私の日頃の行いが良いせいでしょうか(笑)。
マンハイムからデュッセルドルフ方面へはライン川沿いのコースを辿りますが、その途中には皆さんご存知のトランスユーロアカデミーのブログライターJOJOさんの住むコブレンツがあります。そこで、せっかくですからこの機会にJOJOさんに日頃の執筆の御礼を直接伝えるべく一旦コブレンツで途中下車することにしました。
コブレンツに到着したのは夕方で、JOJOさんには翌日お目にかかることにして、この日はJOJOさんからオススメされたコブレンツの市立劇場THEATER KOBLENZにて演劇を鑑賞することにしました。ということで今回は、私のドイツ演劇観賞初体験の模様をお届けしたいと思います。
モーゼル川とライン川の合流点・Koblenz
コブレンツはちょうどモーゼル川とライン川という2つの大河が合流する地点に位置しており、この合流点に生まれた尖った角は「ドイツの角(かど)」(Deutsches Eck)と呼ばれ、観光地としても有名ですね。「コブレンツ」(Koblenz)の名は、まさに「合流点」を意味するラテン語の「co(_)nfluente(_)s」(英語のconfluence)に由来します。紀元前8年前後にローマ帝国の駐屯地として生まれた古い町です。現在は人口11万人で、白ワインの名産地でもあり、ライン川クルーズの終着点としても知られています。
私は約30年前、2回目のドイツ訪問の際にライン川沿いに船に乗ってコブレンツ手前のザンクト・ゴアールにまで来たことがあります。あの時はブログ『会長のドイツ出張ブログ①(前)』でご紹介した私の二人のペンパルのうちの一人、Diepholzに住むペンパルAと一緒にライン川観光船に乗って旅をしていました。途中ローレライにさしかかった際には、船上の日本人のご婦人グループがいきなり歌曲ローレライを歌い出したのでとても驚いた記憶があります。
コブレンツ劇場Theater Koblenz
私のドイツ演劇初鑑賞の場となったコブレンツ劇場は1787年に建てられました。236年の歴史を持ちます。現在は約23カ国出身の200名の従業員が働いています。この劇場の建物は新古典主義様式(neoklassizistisch)で、劇場の形も一般的なドイツの劇場とは異なっています。
実はこの劇場の建物なんですが、ちょっと見つけづらかったです。それというのも、劇場の建物は、両隣の白い建物の間にピタリと挟まれていて見分けが付きにくいからなんです。
劇場に隣接する建物の1つはHotel Trierer Hofといってこれまた古い由緒ある建物なのですが、ホテルの建物と劇場の間にすき間がなく、壁がぴたりとくっ付いて一体となっている感じなので、気をつけていないと劇場正面口を見逃してしまいます。特に夜は見つけづらく、私も最初は気づかずに目の前を通過してしまいました。
ところで、このホテルTrierer Hofですが、劇場よりも1年早く1786年に建てられています。私も当初この古いホテルに宿泊しようと思って予約を取ったのですが、よく聞けばなんとエレベータが故障中だとか。私のあの重たいスーツケースを階段で上階まで運ぶ羽目になったら私の腰の死活問題となるので、残念ながらこのホテルに泊まることは断念しました。
劇場の楽屋口を正面入口と思い込む
THEATER KOBLENZにてドイツの演劇を初鑑賞することを決めた私は、ホテルにチェックインを済ませると早速街中へ出掛けました。演劇は夜の7時半スタートなのでそれまで付近を下見しようと思ったのです。
ホテルから街の中心部に入ると、ライン川沿いに「選帝侯の城」(Kurfürstliches Schloss)の白い建物が見えてきました。その先を左折した先に老舗ホテルTrierer Hofの白い建物を発見しました。実はこのとき左折する手前で私は劇場の正面口の面前を通り過ぎていたのですが、このときは全く劇場の存在に気づきませんでした。
ホテルのTrierer Hofの正面入口を見つけ、老舗ホテルの内部をしばらく覗き込んだ後に、隣の建物に目を向けると、ありました! THEATER KOBLENZ(コブレンツ劇場)です!
劇場の建物の入口脇の壁には、上演予定の演劇のポスターが貼ってあります。実は私はこのとき、とんだ誤解をしてしまったのです。ホテルの正面入口がある側と同じ側に劇場の正面入口もあると勝手に思い込んでしまったので、上の写真に見えている劇場の入口が正面入口だと勘違いしてしまったのです。
でも、上の写真を拡大して見ると劇場入口の左側には、しっかりと「コブレンツ劇場 楽屋口」(Theater Koblenz Bühneneingang)との表示が出ていました。が、そんな表示に私はこのとき全く気づきませんでした。これが悲劇を生んだのです!
劇場の裏口から入るドジ!
楽屋口をすっかり劇場正面口だと思い込んだ私は、これで下見完了とばかり、とっととこの場所を離れ、コブレンツ中心部の散策に出掛けました。そして7時頃に劇場に戻ってくると、劇場の正面入口だと思い込んでいる楽屋口へ一直線に向かったのでした。
開演30分前なのに入口の前には人だかりがなく、これはもしかしたら人気のない出し物であるに違いないと勝手に推察しながら、そろそろ劇場内に入ろうと思い、私は入口に接近したのでした。するとタバコをふかした半袖姿の警備員らしきオジサンが立っていましたが、私は構わずに入口をすり抜けて建物内部への突入を図りました。
すると、警備員のオジサンが慌てて近づいてきて「何の用だ?」と尋ねてきたので、私は正々堂々と「劇場に入るのだ!」と言い放ちました。すると「ちょっと待って、入るだって!?」とさらに尋ねてきたので、私は再び正々堂々と「今夜の劇を観に来たのだ。ほらちゃんとチケットだって買ってあるのだ!」と言い放ち(勿論ドイツ語では「~なのだ」とは言ってない)、胸を張ってオジサンに電子チケットを提示したのでした。
すると、このオジサンは大いに驚き、「おおっ、なんと!だったらここは楽屋口だから違う! 観客入口は建物の反対側だ!」と叫ばれました。
えっ!
そうなの!?
ひえーっ、ま、まちがえた!
なんとなんと私は楽屋口から堂々と入場してしまったのでした。
道理で入口にしては狭いし地味だし、ちょっとおかしいと思いました。
私は大いに恥じましたが、瞬時に開き直り、オジサンと一緒に「わっはは! Oh mein Gott なのだ!」と笑いながら楽屋口から一目散に退散したのでした。
オジサンに言われた通りに建物の反対側に回り込むと、なんとそこには正面入口の前で開場を待つ多くの人が歩道に立っていました。ひえぇ、いつの間にこんなに人が!
JOJOさんから一応ドレスコードがあると聞いていたので、私はそれなりにワイシャツとジャケットを着て革靴を履いてきたのですが、よく見るとカジュアル姿の若者も多く混じっていました。
別世界の美しい劇場内部
さて、色々やらかしましたが、いよいよ開場になって無事に劇場に入れました。ザックを預けてから座席につくとそこは中世にタイムスリップしたような別世界が広がっていました。私の座席は、2階の中央桟敷席(Mittelloge)でしたので、正面にステージとステージ前に広がる平土間席(Parkett)を見下ろせます。バルコニーにはブルーの垂れ幕があり、天井には素晴らしい模様が施されていますが、これらはすべて描かれた絵だそうで、びっくりです。
席に着くと、もちろん周囲はドイツ人のお客さんばかりでした。隣に座ったご婦人が話しかけてきました。「どこからいらしたの?」と訊かれたので「日本から来たのだ!」と答えると、ご婦人は大いに驚き「まあ、わざわざこの劇を観に日本からいらしたのね、素晴らしいわ!」とお叫びになられたので、周囲のオジサン紳士やオバサン淑女もこれに呼応し「わざわざ日本から来たのか? それは素晴らしい! 私たちもこの劇場は今夜が初めてなのです。是非一緒に楽しみましょう!」と温かい言葉をかけられました。
隣のご婦人からはその後「今夜の劇はすべてドイツ語で話すので、あなたが理解できなかったときは逐一説明して差し上げるからおっしゃってね!」というお気遣いの言葉を頂戴しましたが、私は過去にペンパルAと一緒にドイツで映画(ロッキー3)を観たときにそれで酷い目に遭っているので丁重にお断りしました。
ペンパルAとロッキー3(ドイツ語吹き替え版)を観たときは、スクリーン中でドイツ語を喋るシルヴェスター・スタローンのジョークをペンパルAが逐一耳元で解説したので私は頭が混乱し、映画の内容はさっぱり理解できませんでした。なので、たとえ難しくてもここはOhren spitzenしてなんとか自力で聴こうと決意したのでした。
出し物はレッシング作の市民悲劇『エミリア・ガロッティ』
さて、今夜の出し物ですが、レッシング(Lessing)作の戯曲『エミリア・ガロッティ』(EMILIA GALOTTI)です。これがまたびっくりの内容で、18世紀、イタリアのグアスタッラの王子が、結婚を控えていた一般庶民の娘エミリアに心を奪われたことが引き金となって繰り広げられる愛憎の市民悲劇(Bürgerliches Trauerspiel)です。最後はエミリアがナイフ片手に血だらけになる壮絶なシーンで終わりました。
舞台で話されるドイツ語の内容は、やはり私のつたないヒアリング力では十分に理解できませんでしたが、俳優さんたちの話すドイツ語の滑舌の鋭さや「R」の発音の美しい響きに耳を奪われました。
主演を務めたエミリア役のEsther Hilsemerさんの怪演も素晴らしかったです。80分間、内容はイマイチ理解できませんでしたが、その妖艶な雰囲気は十分に楽しめました。カーテンコール(Vorhänge)でも、会場の観客からは賞賛を表す割れんばかりの拍手が送られました。内容が分からなかった私も、お隣のご婦人と一緒に惜しみない拍手を送りました。
こうしてコブレンツでの私のドイツ演劇初鑑賞は無事に終了し、ザックを回収した私は夜のコブレンツの街を一人トコトコと歩いてホテルに戻りました。
あとから調べて知ったのですが、このレッシングの作品は、日本では明治時代に森林太郎(森鴎外)が『折薔薇』(おりばら)と題して翻訳本を出しており、いまでも日本の劇場で上演されているようです。
ゲーム・オブ・スローンズな街・コブレンツ
翌日は、デュッセルドルフでの私の次の仕事のアポの時間まで、コブレンツ在住6年のJOJOさんにコブレンツ市内を案内してもらいました。初めてリアルにお目にかかるJOJOさんは、とってもとっても素敵な方で、愛犬のチャーリーと一緒に街を優雅に案内してくれました。
JOJOさんに案内していただいた旧市街には、中世の古い建物が多く残されており、特に魔女狩り時代のお城や拷問室などが所々に残っていて、ちょっとしたゲーム・オブ・スローンズの雰囲気を味わえました。
コブレンツは人口11万人の中世の趣を残したエレガントな雰囲気の小都市で、中心部にはショッピングモールもあり、とても住みやすそうです。JOJOさんが6年居住しているのも頷けます。
皆さんも是非コブレンツを訪れてみてください!
その際は是非、古い劇場にもお立ち寄りください!
ただし、楽屋口から入らないよう気をつけてくださいね☆
Ciao !
参考ホームページ:
Startseite • Theater Koblenz (theater-koblenz.de)
Rund um Koblenz – Dä lange Gummi (rund-um-koblenz.de)
Esther Hilsemer: Die Schauspielerin liebt das Theater, Koblenz und den Rhein – YouTube
Comments
(1 Comment)
コブレンツ劇場の楽屋口はホテルの入り口のすぐ横にあって、しかも演劇のポスターがはられていて、これは入り口と間違えてしまいますね。道中の思い出話が詰まっていてコブレンツ滞在中の出来事が伝わった来るブログで面白かったです。また次回もお待ちしています!
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