PISAショックの再来

 

2023年12月に、OECD加盟国を中心として3年毎に実施される15歳を対象とした国際的な学習到達度テスト「PISA (Programme for International Student Assessment)」の最新結果が公表されました。

今回公表されたのは、前回実施された2022年のPISAテストの結果です。

ご存じの通り、PISAとは15歳の「読解力」、「数学的リテラシー」、「科学的リテラシー」の3分野の習熟度を国際的に調査する試験のことです。

好成績を残した日本と、ショックを受けたドイツ

 

最新のPISAで、「読解力」、「数学的リテラシー」、「科学的リテラシー」の3分野ともシンガポールが1位を占め、日本の順位は「読解力」が前回実施の2018年の15位から3位に、「科学的リテラシー」も5位から2位に上昇し、「数学的リテラシー」は5位(前回6位)となり、3分野とも世界トップレベルという素晴らしい結果を残しました。

 

しかし、それとは対照的にドイツは過去最低の結果を記録することとなり、ドイツの教育関係者は大きなショックを受けています。ドイツの15歳の「数学的リテラシー」と「読解力」はOECD加盟国のほぼ平均レベル、「科学的リテラシー」はOECD加盟国の平均をやや上回るものであったものの、これはドイツが過去にPISAで記録した成績を下回るものであり、唖然となった2000年のPISAショックの時と同様、今回もドイツの教育関係者や政治家たちは焦りを隠すことができません。

 

結果が思わしくなかった理由

 

ドイツでも教師不足が深刻な問題となっていて、休講となる授業数が多いこと、またシリア、イランやトルコ、ウクライナなどの移民の子供たちの割合が高いため、すべての子供が十分なドイツ語力を有していないことも、ドイツのPISAの結果が思わしくなかった原因だと考えられます。

ただ今回のPISAで成績が落ちた国はドイツだけではないようです。

前回実施された2018年のPISAと比べると、OECD加盟国の全体で「読解力」の平均が10ポイント減少、「数学的リテラシー」の平均も15ポイント減少し、世界的にポイントが減少傾向となりました。

 

 

その一番の理由として、新型コロナウイルスによる休校が挙げられています。

ドイツでもパンデミックの時に学校が74日間完全休校となり、これに加えて部分的な休校が109日間もありました。

さらにドイツの学校はデジタル化の波に乗り遅れており、実際にオンライン授業に対応できない先生も沢山いました。

私の子供たちが通う学校でも、デジタル教材よりも、紙教材による課題の提示が圧倒的に多く、しかも先生によっては「課題のチェックは親任せ」という丸投げ姿勢の先生もいたりして、休校中のホームスクーリングは、親に負担が一気にのしかかり、親からの不満が噴出しました。

もともと、ドイツは他国と比べると、子供の学力が家庭環境に大きく依存することが指摘されています。

親が大学教育を受けている場合と、受けていない場合では、子供の学力に大きな差が生まれるという訳です。

確かに、ドイツの学校は伝統的に授業がお昼までの場合がほとんどで、全日制学校のシステムも浸透しつつあるものの、全日制であっても午後は宿題をみてくれる程度だったり、午後までしっかり授業がある訳ではありません。

なので、親が子供の学校の宿題や課題をサポートできるかどうかが、子供の学力に大きく影響を与えるといわれています。

 

今回のPISAで日本が優れた成績を残せたのは、新型コロナウイルスによる休校期間をできる限り抑え、学校の学びの場を止めなかった先生や保護者の熱意があったからではないでしょうか。

今回のPISAの結果から、ドイツは日本から学ぶことが多いかもしれません。

 


参考ウェブサイト

https://coeteco.jp/articles/10630#content_1

https://www.asahi.com/articles/ASRD44SHSRCXUTIL02C.html

https://www.zdf.de/nachrichten/politik/deutschland/pisa-studie-oecd-ergebnisse-schule-bildung-deutschland-100.html

https://www.fr.de/panorama/naturwissenschaften-deutschland-pisa-studie-ergebnisse-schlecht-debakel-tabelle-mathe-lesen-92712140.html

 

 

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