ウィーンのクリスマスマーケット2023
-ウィーン留学日記 番外編-
今年もクリスマス本番が近づいてきました。
昨年はドイツ各地のクリスマスマーケットの現地レポートをお届けしましたが、今年はウィーン留学日記を担当したmona_tさんに、ウィーンのクリスマスマーケットのレポートをしていただきます!!
ウィーンでは、実はほかのどのヨーロッパの都市よりも多くのクリスマスマーケットが開かれているそう。2023年は、ウィーン市内だけで14ものマーケットが開かれ、全部で777店ものスタンドが出店しています。今回は、そのうちのいくつかを厳選してご紹介します。
まずは、ウィーンでクリスマスマーケットを訪れるならはずせない王道のマーケットから。
開催時期:11月10日~12月26日
リング通りにある市庁舎前広場(Rathausplatz)で開かれているクリスマスマーケットは、一際きらびやかなイルミネーションが特徴のマーケットです。
ウィーンの市庁舎前では、野外映画館やスケート場などいつも何かしらのイベントが開催されており、アドヴェントの時期の広場は特に遊園地のような賑わいです。
イルミネーションの多さやその華やかさではウィーンのほかのどのマーケットよりも“映え”を意識した市庁舎前のマーケットですが、なんと言っても一押しは、大きなプラタナスの木に200個ものハート型のイルミネーションが飾られた“Herzerlbaum”(「ハートの木」)です。
写真撮影スポットとしても待ち合わせ場所としてもぴったりのスポットで、特に今年はなんと、夕方17時から夜21時までの毎時刻に市庁舎の塔から大きなハートが一つずつこの木まで“飛ばされる”という仕掛け付き。
この”Herzerlflug”(「ハートの飛行」)は、高さ13メートルの位置に張られた長さ75メートルものワイヤーを通ってハートのイルミネーションが広場の上を移動するというなんともロマンティックなアトラクションです。この「ハートの飛行」の様子をご覧になりたい方は、動画が上がっていますのでぜひウィーン市のInstagramを覗いてみて下さい。
ちなみにこのマーケットのもう一つのシンボルは、11月10日にウィーン市長の立ち会いのもとで点灯式が行われたクリスマスツリーです。今年は南チロルからやってきたモミの木が飾られています。
開催時期:11月18日~1月4日
ウィーンを代表する観光スポットであるシェーンブルン宮殿。宮殿の中だけでなく、美しい彫刻が並ぶ庭園や刈り込まれた木々の間の散歩道などはいつ訪れても素晴らしい場所です。
シェーンブルン宮殿のクリスマスマーケットは、そんな観光のついでに訪れるのにぴったりのマーケット。今年はオーバーエースタライヒ州のゴーザウからやってきた高さ18メートルのモミの木が宮殿前の広場に飾られ、その前に81店ものスタンドが建ち並んでいます。
今年も大勢の観光客と地元の人で賑わっているシェーンブルン宮殿のクリスマスマーケットですが、残念ながら現在の形でマーケットが開催されるのは今年が最後ということが発表されています。
その理由は、30年間マーケットの運営を担っていたマーケティング会社との契約が更新に到らなかったためで、シェーンブルンの運営側は今後、宮殿前の広場をクリスマスやイースターの時期に限らず様々な文化活動に活用したいと考えているようです。
具体的な代替案はまだ発表されていませんが、アイススケート場や大きな遊具などの子供向けのプログラムが想定されているそうなので、今後の動向も気になるところです。
ちなみに12月27日からは、新年市(Neujahrsmarkt)が開催されます。新年市ではスタンドに並ぶ品が少し変わり、幸運のお守り(Glücksbringer)、日記帳、手吹きのシャンパングラスなど、大晦日と新年を迎えるためにふさわしいものになります。
開催時期:11月24日~12月23日
ウィーンの4区、カールス教会前の広場で開かれるクリスマスマーケットは、その名も「アートアドヴェント」。
全部で82店のスタンドが出典していますが、そのうち飲食系のスタンドは12店と少なめで、アート系の小物や実用品を兼ねた手工業品などを売るお店が多いという特徴があります。
また広場の中心には、子供向けの体験教室や家畜とのふれあいコーナー、メリーゴーランドなどの遊具付きの遊び場があり、子供連れのファミリーにも人気のクリスマスマーケットです。
飲食系のスタンドにも特徴があり、特に飲み物の種類が豊富なことに加え、オーガニック系の食品店が目立ちます。
ここでは定番のオレンジ・プンシュのほかにアンズのプンシュ、イチゴのプンシュなど少し変わったプンシュが飲めるほか、オーストリアの各州から集合したBio系の食品店が品質にこだわったおつまみを出しています。
この日私が頂いたのはBio系のお店のラクレット。薄くスライスしたパン(Mischbrot)とベーコンの上にチーズを溶かして載せたこの時期定番のおつまみですが、それぞれの食材がとても美味しく、素材へのこだわりを感じました。
日の入り後には美しくライトアップされた楽友協会も見え、同じくライトアップされたカールス教会を間近に眺めながら、開放的な空間で過ごすことができる素敵なクリスマスマーケットです。
ここまで、数あるウィーンのクリスマスマーケットの中でも規模の大きい王道のクリスマスマーケットをご紹介してきましたが、続いては地元の人達に特に愛されている、こぢんまりとしたマーケットを2つご紹介します。
開催時期:11月17日~12月23日
1722年にウィーンで初めてのクリスマスマーケットが開かれたのがここフライウング(Freyung)とされています。
当時の名前は「聖ニコラウス・クリスマス・キリスト降誕市」(„Nikolo-, Weihnachts- und Krippenmarkt”)。
その後アドヴェントの時期のマーケットがウィーン市内のあちこちに場所を移しながら広まっていき、その都度名前も変化していきました。
今日フライウングで開催されている「古きウィーンのクリスマスマーケット」は、1987年にミヒャエラ広場(Michaelerplatz)で開催されたのが最初で、オーストリア全国からウィーンに郷土品を集め、地方のアドヴェント文化を街に示すことが目的とされていました。
現在フライウングで開催されているこのマーケットは、ショッテン修道会(Schottenkirche)をはじめとする美しい建物に囲まれ、規模こそ小さいながらウィーン旧市街の雰囲気を存分に味わえるマーケットです。
クリスマスマーケットやウィーンの街の歴史に想いを馳せながらプンシュを飲み、アドヴェントの品々を選んでみてはいかがでしょうか。
開催時期:11月16日~12月23日
7区にあるSpittelberg(シュピッテルベルク)のクリスマスマーケットは、Gutenberggasse(グーテンベルクガッセ)、Spittelberggasse(シュピッテルベルクガッセ)、Schlankgasse(シュランクガッセ)という石畳でできた3本の細い路地に123店ものスタンドが所狭しと並ぶ、地元で特に人気のマーケットです。
ここは旧市街に近い小高い地区であるため、17世紀後半にオスマントルコ軍がウィーン包囲を行った際にも重要な役割を果たしたとされています。
初期バロック様式の建物はこの時破壊されてしまいましたが、その後再建され、18世紀から20世紀までは歓楽街として知られていました。
1970年代には再開発計画が持ち上がったものの、住民が大反対。そのため現在もバロック様式の美しい家々が立ち並び、どことなくタイムスリップしたような気持ちにさせてくれる場所です。
ミュージアムクオーター(MQ)の裏側にあたりますが、普段は観光で訪れる人は少ない印象で、地元の人達が集うホイリゲや小さな商店がある閑静な通りです。
シュピッテルベルクのマーケットの名物は、“Spittelberger Erdapfelpuffer“、「シュピッテルベルクの揚げジャガイモ」です。
潰したジャガイモを板状にして揚げたもので、たくさんあるお店の中でも特にこのスタンドにはいつも行列ができています。そのおかげかいつでも揚げたてを手に入れることができ、味もサクサクとしてとても美味しいのです。
ただ1人で食べ切るには少し大きいので、誰かとシェアして召し上がることをおすすめします。
もちろんプンシュやホットココア片手に食べるのもいいのですが、揚げ物に合うのはやはりビールでしょう。Spittelbergでビールを売っているスタンドをよく見かけるのは、皆そう思うからかもしれません。
ちなみにSpittelbergには小さな映画館(Kinohaus)もあり、クリスマスの時期に組まれたプログラムには、日本の宮崎駿監督の『崖の上のポニョ』と細田守監督の『竜とそばかすの姫』もありました。
クリスマスマーケットだけでなく、こうした普段の暮らしの延長にクリスマスのお楽しみがあるシュピッテルベルクは、まさにウィーンの人達が友人らとアドヴェントの時期を楽しむための場所と言えそうです。
最後におまけとして、ちょっと変わったウィーンのクリスマスマーケットをご紹介します。
開催時期:12月1日~12月17日の金~日曜日
ウィーンの3区にあるウィーン交通博物館Remiseは、アドヴェントの時期の金~日曜日にクリスマスマーケットを開催しています。
ウィーンの交通の歴史を学びつつ体験もできる博物館そのものもとても面白いのですが、ここで開催されているクリスマスマーケットもまた、列車や電車が好きな方にぴったり。
例えば旧型のトラムの車両の中に手紙を書くことができるスポットがあったり、昔使われていた線路に沿ってミニカーリング場ができていたり、レトロな列車の停留所の中でプンシュが飲めたりと、交通ファンや子供たちにはたまらないスポットと言えそうです。それぞれの週末に異なるプログラムが開催されており、
私が行った日には旧型バス車両の中でライブコンサートが行われていました。博物館には入らなくてよいという方もクリスマスマーケットには無料で入場できますので、ぜひひと味違うウィーンのクリスマスマーケットを味わってみてはいかがでしょうか。
参考リンク
Christkindlmarkt – Wiener Christkindlmarkt am Rathausplatz
Altwiener Christkindlmarkt (altwiener-markt.at)
https://spittelberg.at/der-verlag/
https://www.wienerlinien.at/adventmarkt
全4回にわたって「オーストリア留学日記 ウィーン」を担当させていただくmona_tです。生まれも育ちも加賀百万石の地、金沢。日本の大学でドイツ語を学び、政治学を専攻する大学院生です。ウィーンの街並みに魅せられ、現在ウィーン大学に二度目の留学中。
ウィーン訛りに悪戦苦闘するヴァイオリン弾き(?)として、学生ならではの視点でオーストリアの魅力をお届けできればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
Comments
(1 Comment)
クリスマスマーケットごとにそれぞれ色々な特徴が書かれていて、読んでいるだけでも楽しくなって行きたくなりました!来年も色々なクリスマスマーケット行ってみたいです!
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