ドイツのブックシェアリング – 公共の本棚
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皆さんは、読み終わった本はどうしていますか?
次に喜んで読んでくれそうな友人にあげたり、中古本として売ったり、そもそも本は買わずに専ら図書館で借りる人も多いことでしょう。
こちらドイツの町では、ブックシェアリングが日常に根付いています。
天気のいい週末、近所を歩いていると(ドイツ人は散歩が大好き)、住宅の前に書籍が詰まった段ボール箱が置かれていて、「zu verschenken(無料で差し上げます)」とメモ書きが残されていることがあり、面白そうな本があれば、家に持ち帰ることがあります。
またそれ以外にも、街の中に、いきなり本棚が置かれていることもあります。
これらは「Öffentlicher Bücherschrank (公共の本棚)」と呼ばれ、主にボランティアによって管理されている本棚で、ドイツのブックシェアリングを象徴する存在となっています。
Öffentlicher Bücherschrank – 公共の本棚とは?
公共の本棚」は、大学や図書館といった教育施設、教会、公園、記念碑の近くなど、沢山の人が行き交う屋外の公共スペースに設置されていることが多いです。利用時間が定められている公共の図書館とは違って、誰でも24時間利用できます。
もう読まなくなった本、本棚に入りきらない書籍を誰かにあげたい場合など、「公共の本棚」に本を匿名で寄贈して、また逆に気になる本があれば、無料で本を持ち帰ったり、借りることができる、物々交換のようなシステムですが、必ずしも自分が別の書籍を寄贈する必要はありません。
この「公共の本棚」は、ロータリークラブや地域の企業・団体による支援を受けながら、ボランティアや社会プロジェクトによって運営されています。また利用する誰もが気持ち良く使えるよう、人々の信頼関係に基づいています。
「公共の本棚」に並ぶ書籍のジャンルは、実用本、小説、専門書、子供向けの書籍、漫画、雑誌、図鑑など、実に様々。
ただし、性的な内容や、政治色、宗教色の強い書籍は、運営ボランティアによって本棚から取り除かれることがあるようです。
「公共の本棚」は、屋外に設置されていることが殆どなので、雨が降ると本は濡れてしまうんじゃないの?と心配になりますが、公共の本棚は、雨が入り込まない防水構造であったりと、天候に左右されずに長期的に使用できる設計になっています。
さらに、今はもう使われず、行き場を失った公衆電話ボックスは、サイズ的にも本棚としてぴったりであり、しかも雨風から書籍を保護することができるため、優れた「公共の本棚」として見直され、再利用されているんですよ。
可愛いペイントが施され、「公共の本棚」として生まれ変わった電話ボックスを見ると嬉しくなってしまいます。
発端はアートプロジェクト
ドイツの「公共の本棚」は、アーティストデュオであるClegg & Guttmannが1991年に、誰もがいつでもアクセスできるよう、屋外に本棚を設置する「Die offene Bibliothek(オープンライブラリ)」というアートプロジェクトをグラーツやマインツで発表したことが始まりです。
このアートプロジェクトは、公共のプロジェクトとしても実現可能ではないかということで、90年代後半に、ダルムシュタットとハノーファーに最初の「公共の本棚」が設置されました。
その後、「公共の本棚」は、ドイツ人にすぐに受け入れられ、ドイツ全土に普及していきます。2023年8月現在、ドイツ全土で約3319もの公共の本棚が設置されているそうです。自分の住む街にある「公共の本棚」を見つけたい場合は、グーグルマップでÖffentlicher Bücherschrankと入力すると簡単に検索できます。
2010年にはオーストリアにも最初の「公共の本棚」が導入され、最初の年に1万冊以上の本が公共の本棚を通して交換されたそうです。また隣国のスイスにも「公共の本棚」が増加中だそうです。
一冊一冊に地域の人々の思いが込められたような「公共の本棚」。本屋で書籍を買ったり、図書館で借りてきた本を読むときとは一味違った本の世界に入り込んでしまいそうですね!
参考ウェブサイト
https://www.berlin.de/special/sharing/oeffentliche-buecherschraenke/
https://de.wikipedia.org/wiki/%C3%96ffentlicher_B%C3%BCcherschrank
大阪育ちの日本人。ベルリン自由大学卒業。現在ドイツ・コブレンツ在住。趣味は山登り、テニス、アスリート飯作り。担当する新シリーズ「住んでみてわかったドイツ」では、ドイツ居住歴16年の経験を生かして、現地からの生情報をお伝えしたいと思います。皆様からのリクエストや感想もお待ちしてます!
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