ドイツの介護事情
目次
日本とドイツ、どちらも少子高齢化が進んでいる社会です。
ドイツの出産率はわずか1.58人で、日本より若干多いくらいですが、ドイツも、仕事と子育てを両立できる環境整備が遅れているとされています。
少子化が進む一方で、寿命は伸びている。日本と同じような少子高齢化社会のドイツの「介護事情」についてお伝えします。
ドイツの介護問題
病気などの理由で介護を必要する人はドイツ国内で約500万人いるとされ、今後もますます増加する傾向にあります。
この約500万人の介護を必要とする人のうち、63パーセントが、「家族による自宅介護」、21パーセントが「自宅介護だが、在宅介護サービスやデイサービスを利用」、残りの16パーセントが「自宅ではなく、老人ホームや病院施設での介護」という割合になっています。
つまり、介護を必要とする人の63パーセントが、自分の家族によって自宅で介護されている訳ですが、自宅で自身の親や義両親を介護するのは、殆どが女性です。
彼女たちは、これまでフルタイムで働いていた仕事を、親の介護のためにパートタイム勤務に変えることが多く、当然のことながら、自身の経済的な基盤が弱くなってしまいます。
介護をする家族の負担は経済的な面だけでなく、健康面での負担も大きく、10人のうち4人以上が背中や関節の痛みを訴えており、介護疲れで鬱病を発症する人も少なくないようです。
また自宅で親や義両親を介護しても、家事の場合と同様、報酬を貰えるわけではありません。
自分の仕事や時間を犠牲にして、「自宅で親を介護する」という構図に支えられているドイツの介護ですが、無理が生じるのは時間の問題かもしれません。
深刻な人材不足
残りの37パーセントは、自分で親を介護せずに在宅介護サービスを利用したり、老人ホームで親を介護してもらっているケースですが、ドイツでも高齢者の介護に従事する介護スタッフの人材不足はとても深刻です。
今後ドイツでは、2035年までに5万人の介護スタッフが不足すると予測されています。
もともと「重労働なのに薄給の仕事」であったため、1980年代からこの業種は人材が不足していましたが、高齢化が進行中の今、介護の人材不足は本当に深刻です。
ドイツは人材不足を補うため、ブルガリア、ポーランド、ルーマニアなどの東欧諸国から介護士を積極的に受け入れていて、外国人介護スタッフの割合は、全体の約13パーセント(2021年のデータ)を占めています。
介護施設で勤務するスタッフのほとんどが女性であり、仕事の性質上、仕事と家庭の両立が難しいことから、その多くがパートタイム勤務だそうです。
介護スタッフの賃上げは、かなり前から議論されてきましたが、2023年5月に最低時給が13ユーロ70セントから13ユーロ90セントへ賃上げされ、また2023年12月からは、さらに14ユーロ15セントまで引き上げられるようです。
とはいっても、インフレで物価が上昇しているので、物価上昇率をカバーできる賃上げとは言えません。
「介護人口の急速な増加」と「介護する家族の大きな負担や介護スタッフの人材不足」。
この課題に直面しているドイツは、その解決策を模索中なのですが、お隣の国、オーストリアのブルゲンラント州では、興味深いモデルプロジェクトが導入されています。
それは、自宅で親や義両親を介護する家族を、州が雇用するというもので、週40時間の自宅介護に対し、毎月手取り2000ユーロの給料を支払うというモデルです。
しかも毎月の給料だけでなく、休暇手当やクリスマス手当も支払われ、社会保険もカバーされているのだとか。
これは、ドイツも日本も参考になるモデルプロジェクトかもしれませんので、注目したいですね。
参考ウェブサイト
●https://www.destatis.de/DE/Themen/Gesellschaft-Umwelt/Gesundheit/Pflege/_inhalt.html
大阪育ちの日本人。ベルリン自由大学卒業。現在ドイツ・コブレンツ在住。趣味は山登り、テニス、アスリート飯作り。担当する新シリーズ「住んでみてわかったドイツ」では、ドイツ居住歴16年の経験を生かして、現地からの生情報をお伝えしたいと思います。皆様からのリクエストや感想もお待ちしてます!
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