先が読めないスイスの天気

 

お天気は日常における行動などを左右しますので、皆様も普段生活している中でお天気は常に気にされているかと思います。

また、旅行に行く際は雨によって予定していた一日の内容を変更する必要もあるので、やはり無視することはできません。

特に、スイスに関してはユングフラウヨッホを訪れる観光客も多いので、旅行会社には「私が行く時は晴れるでしょうか?」などの問い合わせも多いそうです。

したがって、今回はスイスのお天気についてのお話をさせていただきます。

 

スイスは雲の溜まり場

 

 

近年では「ゲリラ豪雨」が話題になっていますが、日本人にとって夏に夕立に遭うことは決して珍しくはないですよね?

それは日中に気温が上がることで海水が気体となって上昇し、大気中に積乱雲を形成するという島国ならでは現象です。

そのため、内陸国で海のないスイスではそういった現象は当然ながら起きませんが、逆にアルプス山脈に囲まれた山国ならではの気象が見られます。

女性を差別するような意味は全くありませんが「山の天気と女心は変わりやすい」という言葉があるように、山の多いスイスでは天気予報を確認しても青空がいきなり急変したりしますので、先が読めないことが多々あります。

雲は一般的に遮るものがなければ通り過ぎますが、山があればそれにぶつかって溜まっていったり、傾斜に沿って上昇して雨を降らしたりします。

ただ、標高4000メートルの山々を有するスイスは雲やその他の水蒸気が逃げ場を失う、言わば雲の絶好の溜まり場なのです!

そのせいで、私自身もスイスで生活していた頃によく感じたのは、雨が降らなくても何となくパッとしない曇り空が多いことです。

もちろん、地域によって差はありますが、アルプスに近い地域で育った私が最も目にしたのは、晴天でも雨天でもなく、曇り空だったように思えます。

確認したところ、私の故郷における過去数十年の年間降水日数は154日とやや多めで、1日当たりの平均日照時間も3.7時間で全国平均を大幅に下回ることから、私の個人的な感想もさほど外れていないことになります1
(参考までに東京の年間降水日数は114日で平均日照時間は5.1時間です2)。

 

霧には要注意!

 

曇りが多いという私の主張にはそれが「雲」ではなく、実は「霧」による曇りであることが大きく関係しています。

天気予報では晴れと予想されても、実際には霧がかかって日が差し込まないことから、そのような状況を曇りと認識する人も少なくはないでしょう。

気象的にも雲と霧は同一であり、雲は空高く浮いているのに対し、霧は地上の近くにあるものとして区別しています。

特に湖や川の多いスイスではそれらの水が蒸発して「蒸気霧」を発生させる他、周辺の陸地も一定の水分を含んでいるので、夜間における地面からの熱放射で翌日に「放射霧」が発生していることが多いのです。

通常であれば放射霧は日中の気温の上昇に伴い、徐々に消えるのですが、冬場など気温がなかなか上がらない時期には数日間も残ることがあります。

そのため、スイスでは晴れていた日の夜は放射が発生するので、翌日の朝に窓の外を覗くと「えぇぇぇ?!霧?」となっていることも決して珍しくありません。

さらに、冬は気温が上昇しにくいスイスでは、南から暖かい風が流れ込むと、冷たい地表に触れて冷やされ、気体であった水分が部分的に水となって霧となる「移流霧」も発生しやすい状況にあります。

しかも、移流霧は濃く、さらなる風によって吹き飛ばされない限り、長時間消えないのが特徴的です。

そして、既に言及した、山が邪魔して雲の逃げ場がない状況は霧にも同様に該当し、「上昇霧」と呼ばれる現象を発生させます。

これは山の頂上付近を眺めるとたまに目撃することができる疎ら(まばら)で比較的濃い霧ですが、アルプス山脈では短時間でなくなる傾向があります。

 

午前中によく目撃する放射霧

 

情報収集を忘れずに!

 

スイスでは「霧が濃くて自分の手も見えない」という表現を耳にするほど、視界を妨げる濃い霧が発生します。

これは観光でスイスを訪れる方にとっては非常に厄介で普段は奇麗な見晴らしを台無しにすることも少なくないでしょう。

そこで、B案やC案などを立てておくことが大切です。

私自身もそうでしたが、あいにくの雨であれば室内でできることをやって、霧が発生している時は晴れることを見越して時間を調整したり、霧の掛かっていない場所に行ったりしていました。

特に、冬はスキーやスノーボードなどウィンタースポーツが盛んなスイスでは前日の天気予報以外にも、当日に現地のライブ映像を見てから行くようにするのが一般的です。

スイスではそういった方のためにテレビでも早朝から各地のライブ映像を流してくれて、現地の天気やリフト運行状況を確認できます。

しかも、これは冬だけでなく、ハイキングを楽しむ方のために年間を通して放送されます。

大半の方はそれらを見て、晴れていなければ山に行くことを断念することが多いのですが、私の場合は、地元の近くにスキー場があり、私は子供の頃から毎週数回スキー場に足を運ぶほどでしたので、朝の天候は場合によっては一時的なものであることを知っていたので、拙速に判断を下すことは避けていました。

というのも、今は曇っていても、ゲレンデに到着する頃には晴れていたり、午後からは晴天になったりすることも頻繁にあったからです。

また、標高2500メートル以下は悪天候だったので、3000メートルまで上がって最高のスキー日和を楽しむことができたという経験も数えきれないほどしました。

このように、自らの計画を天気に左右されるのではなく、可能な限り天気を先読みして行動を調整することが重要であることを学びました。

ただし、予想が外れてゲレンデで暴風雪やホワイトアウトに遭遇したという苦い経験も多々あります。

 

スキー場でのホワイトアウト

 

結局のところ、山の天気は変わりやすく先が読めないということを認めざるを得ないのですが、その一方で天気に応じて一定の工夫は可能だということも判りました。

また、物事は考えようで、雨が降っているから観光を諦める必要は決してありません。

例えば、私は京都が好きで度々遊びに行かせていただいていますが、雨の日は苔が一段と奇麗に見えてなんとも神秘的な光景を生み出すことから、好んで銀閣寺などを訪問するようにしています。

スイスでも霧が晴れないと悟れば、むしろハイキングに行って青空が広がる霧の上から、霧が作り出す幻想的な雲海を見に行くのも悪くありません。

ということで、皆様も是非天気に負けず、その日の天気に最適な行動は何かを考えて対処してみてください。

そうしますと意外と珍しい状況に遭遇できますし、通常なかなかお目にかかることのできない自然の姿を見られるかもしれませんよ。

では

Bis zum nöchschte mal!

Birewegge

 

チューリッヒ市の西南に位置するウト・クルム(Uto Kulm)から見た雲海

 

1出典:スイス気象庁:https://www.meteoschweiz.admin.ch/home/klima/schweizer-klima-im-detail/klima-normwerte/normwerte-pro-messgroesse-und-station.html

2出典:日本気象庁:https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/nml_sfc_ym.php?prec_no=44&block_no=47662

 


今回の対訳用語集

日本語 標準ドイツ語 スイスドイツ語
Regen

(レーゲン)

Räge

(レゲ)

雨が降る Es regnet

(エス・レグネト)

Es seicht

(エス・サイフト)

蒸気霧 Verdunstungsnebel

(フェアドゥンストゥングスネーベル)

Verdunschtigsnäbel

(フェルドゥンシュティクスネベル)

放射霧 Strahlungsnebel

(シュトラールングスネーベル)

Schtrahligsnäbel

(シュトラーリクスネベル)

天気予報 Wetterbericht

(ヴェッターベリヒト)

Wätterpricht

(ヴェッテルプリヒト)

ライブ映像 Live-Aufnahmen

(ライフ・アウフナーメン)

Live-uufnahme

(ライフ・ウーフナーメ)

ゲレンデ Skipiste

(シーピステ)

Schiipischte

(シーピシュテ)

標高 Meter über Normalhöhennull (m. ü. NN)

(メーター・ユーバー・

ノアマールヘーヘンヌル)

Meter über Meer (m. ü. M.)

(メーテル・ユベル・メール)

調整する anpassen

(アンパッセン)

aapasse

(アーパッセ)

先読みする vorausschauen

(フォラウスシャウエン)

voruusgseh

(フォルースクセー)

 

参考ホームページ

スイス内務省、連邦気象庁オフィシャルサイト

https://www.meteoschweiz.admin.ch/home.html

スイス放送:気象情報

https://www.srf.ch/meteo

ゲレンデカメラのリアルタイム配信サイト「ベルクフェックス」

https://www.bergfex.ch/schweiz/webcams/

 

 

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