Unwort des Jahres 2022 ドイツの粗悪語大賞
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毎年12月に発表される『Wort des Jahres』。その年のキーワードとなる言葉や世相を表す言葉についてはお伝えしましたが(2022年ドイツの流行語大賞は?)、ドイツでは年が明けた1月に『Unwort des Jahres』(粗悪語、不適切な言葉大賞)も毎年発表されています。
さて昨年2022年の『Unwort des Jahres』は何だったのでしょう?
Unwort des Jahres とは?
ドイツ語のUnwortとは、否定的な意味や反対概念を表す接頭語の「un」が表すように、良くない言葉、不適切な言葉、粗悪な言葉を指しています。
そして『Unwort des Jahres』も『Wort des Jahres』を選出しているドイツ語協会(Gesellschaft für deutsche Sprache e. V.)によって1991年から始まり、1994年にはドイツ語協会から審査員たちが独立、コンセプトや選出方法を変更して、毎年活動を続けるようになりました。
人権を侵害するような表現、民主主義の原則を侵害するような言葉、特定の社会的集団を侮辱し差別するような言葉、婉曲的、偽装的、または誤解を招くような言葉を一般公募し、その中からその年の『Unwort des Jahres』を4人の言語学者と1人のジャーナリストが選出します。
この言葉を選出する大きなねらいは、市民らへの注意喚起としてこのような言語使用に対して警鐘を鳴らすことにあります。
そのため流行語大賞などと違い、この『Unwort des Jahres』 は、ひとつの政治的な活動ともいえるようです。
2022年のUnwortはKlimaterroristen
2022年の粗悪語第1位に選ばれたのは“Klimaterroristen“という言葉でした。
直訳すると気候テロリストという意味ですが、環境保護活動を行う人間に対する侮蔑的な言葉として捉えられており、テロリストと同視する危険性について警鐘を鳴らしています。
また環境保護への本質的な議論が顧みられることなく、活動家たちへの批判が中心になってしまうことも危惧されています。
第2位に選ばれたのは“Sozialtourismus“、直訳すると社会的ツーリズムですが、こちらは2022年9月にキリスト教民主同盟の党首であるフリードリヒ・メルツ氏の発言の中で、ウクライナからの亡命者に対し「社会保障目当ての移民」との意味合いで発せられた言葉ですが、のちにメルツ氏は謝罪しました。
戦争からの亡命者をこのように名付けることで人権を侵害しており、またツーリズムという全く違う意味合いの言葉を当てていることへ批判がされています。
そして第3位が“defensive Architektur“です。日本語では排除アートと言われており、都市空間からホームレスを排除する目的でなされる建造物や障害物を指しています。
防衛という意味のdefensiveという言葉を使用しつつも、弱い立場にある人間を社会から締め出し、人間の尊厳を侵害しており、婉曲的で誤解を招きやすいとの理由で選出されました。
一般公募から寄せられた意見をもとに選出されたこれらの言葉ではありますが、2022年の環境保護活動家の過激なデモ行為に対しては、テロリストという強い言葉で批判されることも避けがたいのでは?と思う人も少なからずいるようで、Unwort des Jahresの審査員たちの選出が過剰な人道主義であると批判をむける人々もいるようです。
社会情勢が不安定な昨今を表すような言葉ばかりでしたが、2023年はどのような年になるのでしょうか。
参考HP
- Unwort des Jahres 2022 gewählt Unwort des Jahres
https://www.unwortdesjahres.net/presse/aktuelle-pressemitteilung/
これまで【日本人からみると不思議なドイツ事情】、【ものづくりの国ドイツ】を担当してまいりました、HHです。京都生まれ。ドイツ・フライブルク大学卒。留学中に得た経験をもとに、独自のアンテナを張って様々な側面からみたドイツをお伝えしていきたいと思います!皆さまのドイツ文化に関する興味・関心、ブログの感想もぜひ聞かせて下さいね。
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