Frohi Wiänachte und es guets neus! スイスドイツ語講座その9:年末年始の挨拶

また年末が近づいて参りましたが、皆様はどのような一年をお過ごしになられましたか?もう終わりなのかと思う人もいれば、ここまで来るのが長かったなと感じる方もいるでしょうが、大半は年賀状や大掃除などこれからが大変という悩みを抱えているのではないでしょうか?これは日本だけではなく、スイスにおいても同様です。年末は年度末ということもあって、会社がラストスパートに入りますし、クリスマス飾りやツリーの購入、クッキー作り、さらに大切な人に配るプレゼントなどプライベートでも何かとやることが多い時期です。しかも、そんな中で身の回りの人や一年間お世話になった人に加え、長い間連絡を取らなかった方々にクリスマスカードやメッセージをしたためたり、直接お会いして心温まる年末年始の挨拶までしなくてはなりません。とはいえ、スイスではこの場合、どのような挨拶をするかご存知ですか?そんなシチュエーションに備えて、今回はこの季節にピッタリなスイスドイツ語バージョンの年末年始の挨拶をご紹介することにします。

 

 

 

年末の挨拶はクリスマスに因んだものが中心

 

日本では年末の挨拶が「良いお年を」などのような新年に向けての言葉が一般的ですが、欧米諸国ではクリスマスが年末を飾る一大イベントであり、ある種の締めくくりですので、お互いに「メリークリスマス」、即ち「良いクリスマスを」と願うのが普通です。ドイツではそれを「フローエ・ヴァイナハテン」(Frohe Weihnachten)と言い、スイスドイツ語では発音が少し違う「フローイ・ヴィエナフテ」(Frohi Wiänachte)がそれに当たります。

それ以外にも「良い式典を」に相当する「フローエス・フェスト」(Frohes Festや「自省的なクリスマスを」を指す「ベスィンリヒェ・ヴァイナハテン」(Besinnliche Weihnachten)などの言葉が存在し、スイスでもこれらと全く同じ「フロース・フェシュト」(Frohs Fäschtならびに「プスィンリヒ・ヴィエナフテ」(Bsinnlichi Wiänachte)がありますが、大概の人は前出の最もシンプルな「良いクリスマスを」を使うことが多いです。

また、過去の記事 でも申し上げたように、欧米では親しい人だけでなく、基本的に会う人全てに挨拶をするのが普通であるため、年末年始の挨拶も当然ながら自分と関わる人物全員にします。つまり、会社に向かう途中にキオスクで新聞を買う時やお昼ご飯を食べたレストランでも「ありがとうございます。では、良いクリスマスを!」と、一言付け加えるのが世間のマナーなのです。この点に関しては観光に訪れた人も例外ではないので、この時期にスイスに行かれる方は、頻繁に「フローイ・ヴィエナフテ」などと言われるだけでなく、自身もそのような挨拶をすることが求められるのを覚悟しておく必要があります。

 

 

En guete Rutsch」と「Es guets neus

 

言うまでもありませんが、「フローイ・ヴィエナフテ」が挨拶として用いられるのはクリスマス、即ち12月25日までで、それ以降は使用できません。しかし、その1週間後に年越しという大きな節目を迎えることから、年末の挨拶がなくなる訳ではなく、「良いクリスマスを」が「良い新年を」へと代わります。
日本では大晦日まで言う「良い年を」と元日以降に使う「明けましておめでとうございます」があり、年越しの前と後で挨拶の仕方が異なりますよね?これはドイツ語圏でも同様で、年越しまでの期間と年が明けてからでは言い方を使い分ける習慣があるのです。標準ドイツ語においては年越し以前には「(新年に)上手く滑り込んでください」を意味する「アイネン・グーテン・ルッチュ」(Einen guten Rutsch)と言い、スイスドイツ語でも全く同じ言葉の「エン・グエテ・ルッチュ」(En guete Rutschがあります。そして、年越し以降は標準ドイツ語で上記の「良い新年を」に該当する「フローエス・ノイエス・ヤー」(Frohes neues Jahr)を用いる一方、スイスドイツ語では「エス・グエツ・ノイス」(Es guets neus)としています。両言語を比較してみると、特に後者に関しては一見差異があるように感じられますが、スイスドイツ語バージョンは「年」を指す「ヤー」が省略されており、「良い」に別の形容動詞を当てているだけですので、実際は同じ意味を持つ挨拶です。

 

年末年始の挨拶の使い方

 

今までの話をまとめますと、スイスではクリスマスまでは「フローイ・ヴィエナフテ」、年越し前は「エン・グエテ・ルッチュ」、そして年越し後は「エス・グエツ・ノイス」の言葉でそれぞれの時期に合った表現を含む挨拶があることをご説明させていただきました。

しかし、それらを使う際にはいくつかの留意点がございますので、ついでに学んでおきましょう。この関連でまず念頭に置いていただきたいのが、上記の「エン・グエテ・ルッチュ」には新しい年に上手く滑り込んでほしいとの願いが込められているため、その使用も大晦日以前に限定されています。
ところが、大晦日以降に言う「エス・グエツ・ノイス」については新年を迎えた後の期間のみに使うという縛りはありません。
というのも、年末年始は誰しもが家族や親族とゆっくり過ごしたい時期であり、大半の人物とは会う機会が極端に減ることから、「今度会うのは年が明けたずっと後で、新年の挨拶が言えない」などの気持ちを抱く人も少なからずいます。したがって、未来を見据えて年越し前に「エス・グエツ・ノイス」と申し上げる方も多いのです。さらに、会えない時間がそれ以上であると思われる場合は、年末年始のそれぞれの挨拶をなんと複合することもできます。つまり、クリスマス前にしばらく顔を合わせることがないと予測されるのであれば「良いクリスマスを」と「良い新年を」を接続詞「ウント」(und)で繋いで、「フローイ・ヴィエナフテ・ウント・エス・グエツ・ノイス」(Frohi wiänachte und es guets neusというひとつの挨拶にすることが可能なのです。

日本人の常識からすればこのような挨拶の仕方は不自然に思われるでしょうが、この時期のスイスを含むドイツ語圏では頻繁に耳にする形式ですので、そういうパターンも存在することを覚えておいてください。

 

 

今回は年末年始の挨拶についてのお話でしたが、内容をしっかり習得できたでしょうか?年間を通して見れば、これらを使う期間は非常に限られているとはいえ、挨拶は人と人の関わりにおけるマナーですし、初対面の場合は第一印象を左右する重要な要素でもあります。したがって、自らそれを発信する勇気がなくても、せめてこのような挨拶をされた際に同じ言葉を返せるぐらいでなければいけません。特に、一度はドイツやスイスのクリスマスマーケットに行ってみたいと考えている方であれば、より楽しい時間を堪能するために今回の内容を学んでおいた方が良いと思いますので、頑張って勉強してくださいね。

では

Frohi Wiänachte und es guets neus!

Birewegge

 


 

今回の対訳用語集

日本語 標準ドイツ語 スイスドイツ語
終わり Ende

(エンデ)

Ändi

(エンディ)

プレゼント Geschenk

(ゲシェンク)

Gschänk

(クシェンク)

季節 Jahreszeit

(ヤーレスツァイト)

Jahresziit

(ヤーレスツィート)

クリスマス Weihnachten

(ヴァイナハテン)

Wiänachte

(ヴィエナフテ)

メリークリスマス Frohe Weihnachten

(フローエ・ヴァイナハテン)

Frohi Wiänachte

(フローイ・ヴィエナフテ)

式典 Fest

(フェスト)

Fäscht

(フェシュト)

新聞 Zeitung

(ツァイトゥング)

Ziitig

(ツィーティク)

良いお年を Einen guten Rutsch

(アイネン・グーテン・ルッチュ)

En guete Rutsch

(エン・グエテ・ルッチュ)

明けましておめでとう Frohes neues Jahr

(フローエス・ノイエス・ヤー)

Es guets neus

(エス・グエツ・ノイス)

大晦日 Silvester

(スィルヴェスター)

Silväschter

(スィルフェシュテル)

 

 

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