バウムクーヘン – König der Kuchen

日本人にとって、ドイツの有名なお菓子と言えば「バウムクーヘン」(Baumkuchen)。日本では、百貨店でもコンビニでも色んな所で買える焼き菓子です。でも本場のドイツでは、どこでもバウムクーヘンが買えると思ったら大間違い。

私もドイツに来た当初は、美味しい本場のバウムクーヘンを求めて探し回ったものでしたが、まず普通のケーキ屋さんでは見かけません。スーパーでもパック入りのバウムクーヘンが売られているのは、冬季限定だったりします。なぜかというと、ドイツではバウムクーヘンは、伝統的にクリスマスの時期に食べるお菓子なので、一般のスーパーでバウムクーヘンを取り扱うのはクリスマスシーズンだけだからです。また製造に非常に手間がかかるケーキなので、普通のケーキ屋さんではほぼ取り扱っておらず、多くは伝統あるHofkonditorei(宮廷御用達の菓子屋)や昔ながらのケーキ屋さんで製造販売されています。こういったバウムクーヘンの専門店では季節を問わず、バウムクーヘンを購入することができます。本場ドイツよりも、日本の方がバウムクーヘンが普及しているって、驚きですよね!

 

 

König der Kuchen – ケーキの王様の歴史

 

ドイツでは、バウムクーヘンはKönig der Kuchen (ケーキの王様)と呼ばれ、マイスターの資格を持つ菓子屋の象徴ともされる焼き菓子です。バウムクーヘンがいつ頃から作られていたのかは不明です。ハンガリー発祥であるとか、紀元前ギリシャが発祥の地であるなど、その起源は諸説存在しているようです。
中世ドイツにはパン生地を焼き串に巻いて回転させながら焼くという、Stockbrot(今でもドイツで焚火する際に、直火で焼いて食べる棒パンのこと)が食べられていたことが確認されています。当時のバウムクーヘンは、現在のような木の年輪のような複雑な形状をしておらず、編んだ髪の毛に似た細長い形状の簡単なものだったようです。ドイツ語で書かれたバウムクーヘンの最古のレシピは、1450年頃のものが確認されています。15世紀、フランクフルトやニュルンベルクでは、バウムクーヘンは上流階級の結婚式の祝いの席に出される菓子で、とても庶民の手には届かない高級菓子でした。17世紀になると、液状のどろどろしたケーキ生地を、一層ずつ回転ローラーに塗って焼くという焼き方が開発されます。当時は砂糖が貴重だったため、バウムクーヘンには砂糖の代わりに、カルダモン、シナモン、ナツメグなどの香辛料が使われていたそうです。これら香辛料は、今でもドイツのクリスマス菓子でよく使われるスパイスです。

現在、私たちが食べているバウムクーヘンのレシピは、18世紀になって誕生したそうです。18世紀後半まではバウムクーヘンは貴族のみが食する贅沢な菓子でしたが、19世紀になると上流市民階級でも食べられるようになりました。19世紀前半にはベルリンのKonditoreiでバウムクーヘンが多く製造され、ドレスデン、ザルツヴェーデル方面にも普及していきました。バウムクーヘンは主に結婚式で食べるケーキでしたが、19世紀後半にはイースターや大晦日、親族が集まる家族行事の場でも食べられるようになり、徐々にドイツの一般的なケーキとして定着していきます。ドイツのバウムクーヘンは長い年月をかけて、歴史とともに発展してきたのですね!

 

 

 

本場のバウムクーヘンのバリエーション

 

日本では、抹茶やチョコ、イチゴやバナナや紅茶味など、目移りしそうなほど多くのバリエーションに富むバウムクーヘンですが、ドイツのバウムクーヘンは、バター、卵、小麦粉、砂糖を原料とするシンプルなものが一般的で、それにフォンダン(糖衣)やチョコレートの衣がコーティングされて販売されています。
生地の中に、マジパンが入っていたり、ナッツやヌガー、珍しいものではショウガを入れて焼き上げたバリエーションもありますが、日本ほどバリエーションが豊かではありません。ドイツのバウムクーヘンは、食べた感じも、フワフワの食感というよりは、しっとりとしていて、バターの風味が生きているのが特徴です。かつては貴族だけが食べることのできた高級菓子であり、現在でも専門店で手間をかけて製造されているため、老舗ケーキ屋のバウムクーヘンは、他のケーキよりも値段設定が高く、500グラムで22ユーロ程します。もちろん、クリスマスシーズンにスーパーで売られる大量生産のバウムクーヘンは安いのですが、味も劣ります。

ドイツはバウムクーヘンの本場の国であるにも拘わらず、日本のようにいつでもどこでも気軽に買えるわけではありません。でも、ドイツの伝統を誇るバウムクーヘンの老舗店では、先祖代々から伝わる秘伝のレシピで作られた直火バウムクーヘンを味わえます。もしドイツに旅行に行かれる際は、是非本場のバウムクーヘンをその歴史とともに堪能してみてくださいね。

 


参考ウェブサイト

https://de.wikipedia.org/wiki/Baumkuchen

https://www.rabien-berlin.de/

https://www.konditorei-buchwald.de/

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