日本の登山用語に影響を与えたワンダーフォーゲル
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ドイツ語から日本語へと借用された語彙は、医学用語、音楽用語、政治用語など多分野にわたり、外来語として日本語に根付いていますが、今回は、登山用語についてご紹介します。ゲレンデ、ストック、リュックサック、ザイル、ピッケル…、ドイツ語由来のものが多い山岳用語ですが、その背景にはどのような歴史と文化があるのでしょうか。
青年運動、ワンダーフォーゲル
自然を愛するドイツ人にとって、森歩き、山登りは魂を癒す場-というと言い過ぎかもしれませんが、ただの趣味の範囲には留まらない身近さがあるように思えます。
さて、「ワンダーフォーゲル(Wandervogel)」は、日本の大学や高等学校にも存在する、野外活動をメインとしたサークル活動、クラブのことですが、ドイツを発祥としており、ドイツ語では「渡り鳥」という意味でもあります。この青年運動は、19世紀末、ベルリン近郊のシュテーグリッツのギムナジウムの学生であったカール・フィッシャーによって始まった運動でした。
都市化、工業化が進む時代の中で、そのアンチテーゼとして掲げられた自然への回帰精神と、渡り鳥のような自由な生がモットーとして掲げられており、当初の活動体系は、登山やハイキングに限らず、ギターを弾き民族音楽を野原で楽しんだり、キャンプをしたりと、アウトドア活動全般にわたるものでした。この青年運動は、以前にも当ブログで扱った裸体主義や、菜食主義、自然療法とも起源を同じくしており、今日のドイツ文化の鋳型ともなっています。
しかし、ワンダーフォーゲル自体は、第一次世界大戦の始まりと共に、批判を受けつつも、一部はヒトラーユーゲントに吸収され、衰退の道をたどりました。
日本に渡ったワンダーフォーゲル
一方、日本でワンダーフォーゲルというアクティヴィティが始まったのは、1933年(昭和8年)です。西洋近代化のために、ドイツを模範例として、政治・経済・文化を取り入れていた日本は、文部省内に、「奨健会ワンダーフォーゲル部」が発足され、その2年後の1935年には、立教大学にワンダーフォーゲル部が発足され、日本初の学生団体としてのワンダーフォーゲル部が誕生しました。どの大学でも、伝統的なクラブ活動として存在していたワンダーフォーゲル部ですが、最近では部員があまり集まらないというのは、現代的な現象かもしれません。
18世紀後半のヨーロッパで始まった、山を登ること自体を目的とした登山という概念。近代登山自体は、イギリスを発祥としていますが、日本はドイツと国交が深かったため、そして、ワンダーフォーゲルというドイツ独自の青年運動による影響もあり、日本の登山用語にはドイツ語が多いようです。
しかし、実際には、フランス語や英語もあり、また日本人がアレンジしたカタカナ語も多いようです。
参考HP
- ワンダーフォーゲル wikipedia
- 登山用語一覧 Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%99%BB%E5%B1%B1%E7%94%A8%E8%AA%9E%E4%B8%80%E8%A6%A7
- 「ワンダーフォーゲル活動のあゆみ」城島紀夫著 獨協学園ワンダーフォーゲル部OB会
- 登山 Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%99%BB%E5%B1%B1
これまで【日本人からみると不思議なドイツ事情】、【ものづくりの国ドイツ】を担当してまいりました、HHです。京都生まれ。ドイツ・フライブルク大学卒。留学中に得た経験をもとに、独自のアンテナを張って様々な側面からみたドイツをお伝えしていきたいと思います!皆さまのドイツ文化に関する興味・関心、ブログの感想もぜひ聞かせて下さいね。
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