ドイツの家には地下室がある!
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ドイツの家、日本の家屋との違いは色々ありますが(ドイツの窓参照)、今回は地下室(独語:Keller)についてお伝えします。
日本の一般的な住宅ではほとんどお目にかかれない地下室ですが、ドイツではかなり一般的です。マンションのような集合住宅の場合でも、地下に世帯ごとのスペースが設けられているのも特徴的です。
南ドイツでは約40パーセントの施主が地下室を
地下室がない家屋は1860年代初頭までほとんどなかったというほど、ドイツの家には必須の設備で、特にバーデン=ビュルテンブルク州、バイエルン州といった南ドイツでは、約40パーセント以上の施主が家に地下室の建設をしているといわれています。地下室は、主に食料の貯蔵、物置、趣味部屋など様々な用途で使用されていますが、場合によっては洗濯機や物干し場として使われることもあり、セントラルヒーティングのボイラーが地下室にあることも多いです。
世界全体で見ると、地下室を備えている家屋がスタンダードであるのは、フランスやイタリア、ドイツ、東欧などの国々で、イギリスはそこまで一般的ではないといわれ、北米ではカナダは一般的、アメリカは地域によるようです。
日本では地下室が一般的でないのは、湿気の多い日本の気候には適していないことが大きな理由といえるようで、伝統的な日本家屋は高床式で建てられており、床下換気のための縁の下があることを考えれば、地下室はいわずもがな、小さな地下空間さえ適さないことがわかりますよね。さらには地下水位の高さや降水量も関係しており、水害、地震などの天災が多い日本ではデメリットだらけなのです。
地下室よりガレージ?建築費用のあれこれ
ドイツではスタンダードな設備と思われる地下室ですが、今日では徐々に傾向が変わってきており、絶対必要な設備であったのも今は昔。現在、地下室なしに家を建てる人々が増えているようです。とあるアンケートによると、家の設備での一番人気はガレージで約41パーセントの数字が出ています。(Almondia調べ2017)一方、地下室は74パーセントが諦めてもよい設備に選んでいます。この理由にはコストの問題が大きく、一軒家を建てる場合に地下室を設けると、およそ20,000ユーロから60,000ユーロ(約270万円~820万円)かかるといわれています。これが地下水脈の高い地域においては更にコストも上がるうえに、食料品などを備蓄するのであれば、さらなる環境管理が必要なため負担が増えるばかりで、コスパが悪いと判断されることが多くなってきたようです。さらには、2021年7月にドイツ西部で起こった大洪水の際に水没した地下室の映像はショッキングなものでした。気候変動が懸念される現代社会では地下室の建設も躊躇されるのかもしれません。
しかしその一方で、地下室がある家というのは、家を売る際には大きなセールスポイントとなるようで、その価値はまだまだ評価されているため、家の売却まで見据えて地下室を作るのもひとつの選択肢だと主張するハウスメーカーも存在しています。
日本とは全く違う構造をもつドイツの家も、時代と共に移り変わりつつあるようです。
参考HP
- Häuser ohne Keller: Das sind die Vor- und Nachteile Online Focus
https://praxistipps.focus.de/haeuser-ohne-keller-das-sind-die-vor-und-nachteile_144270
- Umfrage: Nur noch jeder vierte Bauherr in Deutschland möchte ein Haus mit Keller bauen. Garage bleibt beliebtestes Extra. Presseportal
https://www.presseportal.de/pm/120205/3671005
これまで【日本人からみると不思議なドイツ事情】、【ものづくりの国ドイツ】を担当してまいりました、HHです。京都生まれ。ドイツ・フライブルク大学卒。留学中に得た経験をもとに、独自のアンテナを張って様々な側面からみたドイツをお伝えしていきたいと思います!皆さまのドイツ文化に関する興味・関心、ブログの感想もぜひ聞かせて下さいね。
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