Frühjahrsputz 春の大掃除
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こんにちは!ドイツはイースターも過ぎ、夏に向けて気温が段々と上がってきています。チューリップ、スズラン、雛菊、藤など様々な春の花が咲き乱れ、これから一年で最も美しい季節を迎えようとしています。4月の前半はドイツでも桜が咲いていたので、ドイツに住んでいながら、プチお花見気分も楽しめました。
さて外が明るい季節になると、暗い冬には目立たなかった「家の窓の汚れ」が気になります。毎年「あ~、また大掃除の季節がやってきたんだな。」と実感する季節です。
ドイツの大掃除は春に
日本では大掃除と言えば、自宅をきれいに掃除して、お正月の神様を迎えるために、年末に行うのが伝統ですよね。ドイツでは、年に一度の大掃除はFrühjahrsputz (春の掃除)といって、春に行うのが伝統です。人によっては、新年の抱負 (Vorsatz)として、年明けの一月に大掃除に取り掛かることもありますが、ドイツの冬は暗く、家の中の汚れが目立ちにくいため、冬が過ぎ去った春に大掃除をする方が効率的です。
ドイツのFrühjahrsputzの伝統は数百年前にも遡るそうです。以前は冬の間、薪や石炭を使って暖を取っており、外に暖気を逃がさないよう、窓を開けて換気することが少なかったため、家の中や家具が煤で汚れていました。春になって暖かくなると、窓を開放して、汚れた家の中をピカピカにしていたそうです。現在のドイツは、セントラルヒーティングが普及しているため、冬の間に家の中が煤で汚れることはなくなりましたが、春に大掃除をする習慣は今でも残っています。
やる時は徹底的に掃除
ドイツ人のお宅にお邪魔したことがある人なら、清潔で整った住居に驚いた方が多いことでしょう。基本的に残業をしないドイツ人は、自宅で過ごす時間が長いため、快適に過ごせるように住居にはこだわりを持っています。ドイツ人にとっての優先度は住>衣>食といった感じでしょうか?キッチンも、本当にここで料理しているの?という程ピカピカに磨かれています。
私のドイツ人の義父母の家も、いつも完璧に片付いていて、隅から隅まで清潔です。以前、義理の母にFrühjahrsputzの方法を教えてもらったことがありました。彼女は人一倍キレイ好きな性格なので、なんと本棚から本を一冊一冊取り出し、一ページずつ拭いていくという徹底ぶりで、本棚にある百冊以上の本を目の前にして、私は気が遠くなったことを覚えています。これに懲りて以来、私は本棚の掃除はしたことがない(笑)のですが、「やるときは徹底的 (gründlich)」というドイツの国民性を感じた経験でした。どこまで徹底的に大掃除をするのかは、もちろん家庭によって違いますが、数日間まとまった日程を確保しておき、計画を立てて徹底的に掃除するのがドイツ式です。
環境に配慮して掃除
市販の掃除洗剤には使い勝手が良くなるように様々な化学薬品が使われています。環境に与える悪影響を抑えるため、ドイツでは環境に配慮した製品に付されるBlauer Engel(ブルーエンジェル)と呼ばれるエコラベルがあり、環境への意識が高い消費者はブルーエンジェルマークが付いた掃除洗剤を購入しています。
でも、市販の掃除洗剤を使わなくても、自宅にあるものでも十分間に合います。そのために欠かせないのが、「酢(またはクエン酸)」、「ベーキングパウダー(またはナトロン)」、「塩」です。ドイツの水は硬水なので、水回りにはカルキ汚れが目立ちます。バスルーム、キッチンの拭き掃除には、酢にぬるま湯を混ぜて拭き取ります。そうすると、カルキ汚れが綺麗になり、カビや異臭も取り除けます。酢とぬるま湯を混ぜた混合液に、さらに食塩を加えて、バスタブを磨くと、ピーリング効果でさらに効果がアップ。排水口の詰まりには、大匙4杯ほどのベーキングパウダーを入れ、カップ一杯の酢を注ぎ、30分程そのまま放置した後、熱湯を排水口に注ぐと、配管の中のしつこい汚れと異臭が取れてスッキリします。鍋にこびりついた頑固な食べかすには、お湯とナトロン(ドイツの重曹)を入れて沸騰させると綺麗に取れます。汚れた絨毯には、その上にナトロンを薄く振り、数時間浸透させた後、ナトロンを掃除機で吸い込むと、いやな匂いや小さな汚れを取ることができます。また極細繊維から作られたマイクロファイバークロス(日本の百円ショップでも売っていますね)は汚れを吸収しやすいので、これを使ってキッチンや洗面所を拭くと、洗剤も不要になります。
このように自宅にある物を使って、環境に負担をかけずに掃除するのが、昔からのドイツ人主婦の知恵です。
いつも整理整頓されていて、清潔なドイツ人の住居ですが、数年前に近藤麻理恵さんの片付け本「Magic Cleaning」がドイツでも流行りました。「ドイツ人に必要なの?」と、不思議に思われるかもしれませんが、もともと物を大切に使う国民性から「物を捨てられない」人がドイツには結構多いのです。さらにドイツの家は、地下や屋根裏に大きな収納スペースが設けられているため、収納庫に自然と物が増えてしまいます。だから、自分が「ときめくもの」だけを残して、後は思い切って処分してしまう、「こんまりメソッド」はドイツ人にも新鮮だったようです。また「Weniger ist mehr」といった禅的発想のミニマリズムに憧れたドイツ人も少なくなかったようです。
年末は忙しくて大掃除ができなかった人、今からでも間に合います。ドイツ風に春に大掃除して、スッキリと夏を迎えるのはいかがでしょうか。そしてあなたも、Macht es mich glücklich, wenn ich diesen Gegenstand in die Hand nehme ?と自問してみてください。
参考ウェブサイト
http://www.landidee.info/landideen/wie-damals-fruehjahrsputz
https://www.bund.net/bund-tipps/detail-tipps/tip/fruehjahrsputz-mit-gutem-gruenen-gewissen/
大阪育ちの日本人。ベルリン自由大学卒業。現在ドイツ・コブレンツ在住。趣味は山登り、テニス、アスリート飯作り。担当する新シリーズ「住んでみてわかったドイツ」では、ドイツ居住歴16年の経験を生かして、現地からの生情報をお伝えしたいと思います。皆様からのリクエストや感想もお待ちしてます!
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