Hopp Schwiiz! スイスドイツ語講座その6:スポーツに関する言葉
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突然ですが、皆様はスポーツがお好きですか?
もちろん、趣味や健康のためにやっているスポーツと観戦者として楽しむスポーツで好き嫌いが変わると思いますが、そもそもスポーツに関心があるかどうかという質問です。
統計を見る限り、日本人は様々な競技を観戦するのが好きなだけでなく、自らも積極的に身体を動かすのが習慣になっているようです。また、普段はさほど興味がなくてもオリンッピクやワールドカップのような国際的なイベントだけは気になるという人もいるのではないでしょうか?
例えば、2019年に日本で開催されたラグビーワールドカップでは多くの国民が「One Team」の渦に巻き込まれ、元々ラグビーに縁がないのに選手にエールを送った方も少なくありませんでした。
このように、関わり方は人それぞれですが、スポーツは何等かの形で我々の生活の一部を占めていると言えます。これは外国人であっても同じことで、クラブ活動が盛んなスイスにおいてスポーツは特に欠かせません。
したがって、今回は冬季オリンピックに合わせてスポーツに関するスイスドイツ語をご紹介します。
「Hopp Schwiiz」
まず、スイスにおいてスポーツを語る上で最初に覚えておかなくてはならないのが「ホップ・シュヴィーツ」(Hopp Schwiiz)という言葉です。
サッカースイス代表の試合を見たことがある方なら既にご存知でしょうが、これはスイスの観客が最も頻繁に発するだけでなく、サポーターが首に巻いている赤白のタオルにも記載されている応援の定番フレーズなのです。
むしろ、スイスに関しては他に応援の際に用いられるメジャーな掛け言葉がないので、老若男女問わず全国民が使う唯一の応援フレーズと言っても過言ではありません。
因みに、この場合に使用される「ホップ」は本来「急げ」や「進め」を意味する、標準ドイツ語にないスイスドイツ語特有の表現で、「シュヴィーツ」は単に「スイス」を意味します。
つまり、それらを組み合わせると「それ行けスイス!」というような表現になります。
そして、これは当然ながら、サッカーのみならず、スイスの選手が出場している全ての競技において適用されますし、スイスを後押しする気持ちを表していることからスポーツ以外の場面でも使うことが出来ます。
したがって、日本の皆様が一般的によく使用する「がんばれ日本」のスイスバージョンのようなものと考えていただければ結構です。
スイスで独特な名前を持っている様々なスポーツ
さて、応援フレーズでスポーツに対する興味も湧いたところで、実際の競技の話題に移りたいと思います。
日本では国民的スポーツでもある「ベースボール」が「野球」の名前で親しまれていることでも分かるように、スポーツの名称は国や地域によって異なる場合があります。
その点に関してはスイスも例外ではありません。例えば、スポーツとしての「スノーボード」はドイツ語で「スノウボード・ファーレン」(Snowboard fahren)と言います。
しかし、スイスドイツ語ではそれを単に「ボールデ」(boarde)、もしくは「スネーベ」(snöbe)と呼んでいます。
また、泳ぎ方の一種である「クロール」についてもドイツ語では「クラウレン」(kraulen)という言葉がありますが、スイス人は何故か本来の英語名をドイツ語風に動詞化した「クローレ」(crawle)を用います。
前回のスイスドイツ語講座でドイツとスイスでは語源に差異があることをご説明しましたが、スポーツにおいても同様な傾向があるという訳です。
ただし、標準ドイツ語とスイスドイツ語の違いは語源だけに留まらず、片方に特定の用語があって、もう片方にはそれがないパターンも見受けられます。
運動関連で例を一つ上げますと「橇(そり)に乗る」がそれに該当します。標準ドイツ語においては橇に乗って遊ぶことを「シュリッテン・ファーレン」(Schlitten fahren)、つまり「橇に乗る」と表現します。
それに対してスイスドイツ語にはなんと当該動作に関する専用の動詞「シュリットレ」(schlittle)、即ち「橇る」があるのです。
これは単なる例外で有名な競技や種目の場合は名称がそこまで違うことはないと思われがちでしょうが、実は世界的に大人気なサッカーに関してもスイスとドイツではそれぞれ別の呼称が存在します。
これを聞いて驚かれる方も多いでしょうが、サッカーはドイツ語で「フースバル」(Fußball)と言われているのに対し、スイスドイツ語では英語由来の「シュート」から誕生した動詞「シューテ」(Schuute)が当該競技の一般的な呼び名です。
サッカーではそれぞれの用語も違う
国や地域によって競技が異なる名称を持っていてもルール等は共通でないと争いの元となりますので当然ながら変わりません。
ただし、ルールの名前までもが同じとは限りません。特に先ほど採り上げたサッカーでは数々の内容に対してドイツとスイスで全く別の言い方が用いられています。
例えば、コーナーキックはドイツ語で「エックバル」(Eckball)ですが、スイスドイツ語では「コルネル」(Corner)です。
PKに関してもドイツではゴールまでの距離が11メートルであることに因んで「エルフメーター」(Elfmeter)と言います。しかし、スイスではそれを英語と同様に「ペナルティ」(Penalty)と呼んでいるのです。
さらに、反則行為のハンドリングがあった場合にドイツ人は「ハントシュピール」(Handspiel)と言いながら抗議しますが、スイス人は単に「ヘンツ」(Händs)と叫びます。
このように、標準ドイツ語は主にドイツ語で作った用語を使用するのが一般的であるのに対し、スイスドイツ語はサッカー発祥の国であるイギリスからの外来語が多いです。
したがって、対決や試合についてもドイツ語のように「シュピール」(Spiel)ではなく「マッチュ」(Match)で、決勝戦も標準ドイツ語の「エントシュピール」(Endspiel)ではなく「フィナール」(Final)という言い方が使われています。
そしてゴールに関してもドイツ語で「門」を意味する「トアー」(Tor)の代わりに英語の「ゴール」(Goal)が当てられています。
また、興味深いことに、中には「ゴーリー」(Goalie)というスイスで独自に開発された用語もあります。大体の人はその単語が何を指しているか既にお分かりでしょうが、もちろんゴールキーパーのことです。
今回のスポーツについてのお話は如何でしたか?
普段、観光のみのためにスイスを訪れればあまり触れることのない用語だと思いますが、今やスポーツ観戦を主な目的としている旅行も珍しくない時代ですので、皆様の中にはこのような話題にご興味を持っている方もいるでしょう。
また、スポーツは言葉が理解できなくても通じ合うものがあるようですが、試合を左右する審判が常に正しい判断を下すとも限りませんので、自分の意見や主張を正しい言葉で適切に伝えることは意外と重要です。
しかも、体力や技術力だけでなく、語学力も上達すると、周囲からの尊敬が得られると共にプレイする楽しさも一段と増します。
これは特に海外のスポーツチームに所属する日本人選手の多くも実践していますので、皆様もスポーツをきっかけに勉強への意欲を育んで頑張ってみませんか?
では
Hopp Schwiiz!
Birewegge
今回の対訳用語集
日本語 | 標準ドイツ語 | スイスドイツ語 |
スノーボードする | Snowboard fahren
(スノウボード・ファーレン) |
boarde/snöbe
(ボールデ/スネーベ) |
クロールで泳ぐ | kraulen
(クラウレン) |
crawle
(クローレ) |
橇で滑る | Schlitten fahren
(シュリッテン・ファーレン) |
schlittle
(シュリットレ) |
コーナーキック | Eckball
(エックバル) |
Corner
(コルネル) |
ペナルティキック | Elfmeter
(エルフメーター) |
Penalty
(ペナルティ) |
ハンドリング | Handspiel
(ハントシュピール) |
Händs
(ヘンツ) |
試合 | Spiel
(シュピール) |
Match
(マッチュ) |
決勝戦 | Endspiel
(エントシュピール) |
Final
(フィナール) |
ゴール | Tor
(トアー) |
Goal
(ゴール) |
ゴールキーパー | Torhüter
(トアーヒューター) |
Goalie
(ゴーリー) |
スイス生まれスイス育ち。チューリッヒ大学卒業後、日本を訪れた際に心を打たれ、日本に移住。趣味は観光地巡りとグルメツアー。好きな食べ物はラーメンとスイーツ。「ちょっと知りたいスイス」のブログを担当することになり、スイスの魅力をお伝えできればと思っておりますので皆様のご感想やご意見などをいただければ嬉しいです。
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