オーストリアのお菓子

ヨーロッパのお菓子といえば、フランスやスイスやベルギーのお菓子、特にチョコレートが有名ですね。Birewegge さんが「チョコレート大国スイス」の記事でスイスのチョコレート文化を紹介しましたが、オーストリアのお菓子もスイスのチョコレートに決して引けを取らないと思いますので、今回はオーストリアのお菓子を紹介いたします。

 

16歳の見習いシェフが発案したチョコレートケーキ「ザッハトルテ」

 

オーストリアのお菓子を語るのなら、まずはザッハトルテから紹介しなくてはいけないですね。間違いなく世界中で有名なケーキだと言えます。ザッハトルテは長い歴史があります。18世紀からチョコレートケーキのレシピが少しずつ料理本で紹介されるようになりましたが、ザッハトルテが初めて作られたのは1832年だそうです。よく聞く有名な逸話によると、1832年にオーストリア帝国の政治家のお屋敷で集まりがありましたが、ちょうどその日シェフが病気になってしまいました。そこで急遽代役としてフランツ・ザッハ(Franz Sacher)という16歳の見習いシェフがデサートを作りました。そのデサートは絶品のチョコレートケーキでした。こうしてザッハトルテが誕生したのでした。16歳の男の子が新しいケーキのレシピを発案するなんて凄いですよね。その後、ザッハトルテは一躍人気になり、オーストリア皇帝の家庭記録を見ると、皇帝に愛された王室御用達のお菓子であった事がわかります。1858年には、ザッハの名前が付いているチョコレートケーキのレシピが初めて出版されました。

フランス・ザッハには子どもがいましたが、次男は、デメル(Demel)というウィーンの有名なお菓子屋さんに勤めた後、ウィーンの1区でホテル・ザッハーという高級ホテルを開業しました。そこでは今でも本物のザッハトルテを食べられます。本物と言っても、実はどこのザッハトルテが本物なのか、ザッハトルテの権利を巡ってザッハとデメルは長い間争いました。今は、ホテル・ザッハーのザッハトルテが「オリジナルザッハトルテ(Original Sachertorte)」として販売されて、デメルのザッハトルテは「デメルのザッハトルテ(Demel’s Sachertorte)」として売られています。ところが、ザッハトルテという名前は商標登録されていませんでしたので、ウィーンの多数のお菓子屋さんやカフェでは、ザッハトルテと称するチョコレートケーキが提供されています。

ザッハトルテの魅力はその単純さではないかなと思います。生地はザッハマッセと呼ばれ、割と簡単なチョコレート生地です。基本的には小麦粉、バッター、卵、砂糖、チョコレートだけで作られ、仕上げのためにアプリコットジャムとチョコレートを上にかけます。もちろん様々なバーションがありますし、私の家庭もそうでしたが各家庭にオリジナルのレシピがありますが、基本は同じチョコレートケーキです。

 

オーストリアの大手お菓子メーカー「マンナー」

 

ザッハトルテの次は、オーストリア最大級のお菓子メーカー・マンナー(Manner)のお菓子でしょう。ザッハトルテのようにマンナーのお菓子も100年以上の歴史があります。1890年にヨセフ・マンナー(Josef Manner)がウィーンの1区に開いた小さい店でチョコレートの販売を始めました。だんだん人気が出て来て、1898年にはそこから主力商品となる「マンナー・シュニッテン」(Manner Schnitten)を誕生させました。ピンク色のパッケージに包まれた、四角い5層の薄いウエハースにヘーゼルナッツクリームが挟まっているお菓子です。ヘーゼルナッツはナポリから輸入されているため、「マンナー・シュニッテン」は「ナポリタンアー・シュニッテン」とも呼ばれています。マンナーのシュニッテンはヘーゼルナッツ以外に、チョコレートやレモンの味もありますが、ヘーゼルナッツが定番で一番美味しいと思います。ちなみに、最近ではビーガンが流行っていますが、ナポリタンアー・シュニッテンは元々乳製品が入ってないため、ビーガン仕様のお菓子としてPRされています。

 

マンナー社は1970年代から他のメーカーとの合併を繰り返し、どんどん巨大化していき、今ではオーストリア最大級のお菓子メーカーに成長しました。スーパーマーケットなどでよく見かけるCasali、Napoli、Victor Schmidt、Ildefonsoというオーストリアのお菓子ブランドも全部マンナーの子会社です。生産は全てオーストリアの工場で行なわれ、本工場はウィーン市内の17 区に位置しています。そこのオーブンで1分間当たり450個のシュニッテンのウエハースが焼かれています。マンナーのオーブンから発生する熱はウィーンの地域熱供給システムに使われて、工場の周りにある600世帯を温める暖房として利用されています。Wien Energieというウィーン市の電気会社とのコラボレーションとして、マンナーの工場から発生する熱を上手く利用して二酸化炭素の削減につなげています。ところで、12月にはマンナー仕様の路面電車が1区「リングシュトラーセ」(Ringstraße)を走ります。1ヶ月の間、ピンク色のオールドタイマーな路面電車に乗ってウィーンの中央を観光できます。

オーストリアのお菓子の話はいかがでしたでしょうか?ちょっと食べてみたくなりましたか?

では、Bis zum nächsten Mal!

Schmankerl


参考HP

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