ドクメンタ ドイツ開催の国際現代芸術展

芸術の都といえばパリ。音楽の都といえばウィーン。しかし今日ではそのような認識も徐々にアップデートされている現状があるのではないでしょうか。ドイツでは、5年に一度、カッセルでドクメンタという世界最大規模の国際現代芸術展が行われています。会期中には、人口20万人の都市であるこのカッセルに欧州全土から約60万人の観客が集まるほどです。今回は芸術の祭典となるこのドクメンタについてお伝えします。

ドクメンタとは

 

ドイツ・ヘッセン州、中央ドイツに位置しているカッセルで行われるドクメンタ。この国際現代芸術祭は5年に一度、6月から9月までの100日間開催されるため、別名「100日間の美術館」(Museum der 100 Tage)とも呼ばれています。開催ごとに一人の芸術監督が任命され、この芸術監督がテーマを決め、出展する作家を選出します。彫刻や映像作品、インスタレーション、パフォーマンスなど様々な表現方法の作品が、カッセル中の博物館、美術館、公園やホール、広場の至る所で展示され、プログラムが組まれています。

この国際芸術展の特徴としては、作家の芸術作品を並べ観客がそれを鑑賞する、いわゆる回顧展のような形式のものではなく、ひとつの態度表明であり、現代的な社会問題への問いかけを持つため毎回のテーマもメッセージ性が強く、美術界のみならず他分野への影響力が高い芸術祭です。

2017年開催のドクメンタ14で展示されたThe Parthenon of Books
2017年開催のドクメンタ14で展示されたThe Parthenon of Books

ナチス時代の弾圧、そして戦後の芸術復興として

 

ドクメンタは1955年に第一回が開催され、次回2022年の開催で15回目を迎えます。ナチス支配下にあった時代のドイツでは、近代芸術や前衛芸術は道徳的に堕落しており、ドイツ民族の感情を害する「退廃芸術」であるとみなされ、ナチス政府から大変な弾圧を受け、作品制作禁止令や、作家たちの駆逐などが行われていました。それゆえ戦後ドイツは、芸術破壊者の汚名を返上するため、芸術と文化の復興を目指す必要性がありました。

このような歴史的背景のもと、カッセルアカデミーのアルノルト・ボーテの指揮により「第3回西ドイツ連邦庭園見本市」の一環として、第一回目のドクメンタが開催されました。“ドクメンタ”というこの名前も、ナチス時代の弾圧を受けていた芸術とその時代を記録することが由来となっている造語で、常にその時代の革新的なテーマを取り扱い続けています。2017年開催のドクメンタ14ではアテネとカッセルでの共同開催となり大きな話題を呼びました。

日本でも大規模な芸術祭が行われるようになりましたが、2019 年に開催されたあいちトリエンナーレの『表現の不自由展』は政治色の強い展示が大きな社会問題となりました。芸術と政治、自由というテーマが切り離せない問題であることが浮き彫りになりましたが、これはドクメンタの歴史を振り返ると重なる部分が垣間見えるようです。

次回のドクメンタは2022年の開催になります。ドイツ、ひいては世界の今を芸術的に表現するドクメンタへの興味は高まりましたか?


参考HP

 

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