世界初の幼稚園-キンダーガルテン

幼稚園という言葉はドイツ語Kindergartenからの訳語というのはご存じでしょうか。そうです、英語でもドイツ語からの外来語としてkindergarden-キンダーガーデン―『子供たちの園(庭)』という表現を使っていますよね。幼稚園という概念、そして世界初の幼稚園を創設したのは、ドイツの教育者、フリードリヒ・フレーベル(1782~1852)です。幼稚園もまたドイツの産物というわけです。

幼稚園の誕生

 

現代では、ごく一般的な教育施設であると思われる幼稚園ですが、その歴史は意外と浅く、世界初の幼稚園は、ドイツの幼児教育者、フレーベルの手によって試行錯誤の末に設立され、19世紀半ばの1840年、テューリンゲン州、バード・ブランケンブルクにおいて成立しました。当時のドイツは、19世紀の産業革命による農村から都市への人口流出と、それまでの大家族社会の解体、そして女性の労働参加の増加などが時代背景としてあり、また思想的にはドイツ文学を代表するゲーテやノヴァーリスを生み出した時代でもあり、政治、社会、思想的にも激動期にありました。

23歳から教育者としての道に入ったフレーベルは、1817年には「一般ドイツ教育所」(Die allgemeine deutsche Erziehungsanstalt)という名で事業計画を起こし、紆余曲折の後、1840年「遊びと作業の教育所」(Spiel=und Beschäftigungsanstalt)という名称で設立した施設を、彼の教育的思想を凝縮したKindergarten-子供たちの園―と命名しました。

 

遊具、積み木、遊びと自然の中で育む人間性

 

今日の幼稚園の構想と原型はフレーベルの思想に基づいています。ボール遊び、遊具、積み木、花壇などは、全てフレーベルの構想であり、今日にも受け継がれています。彼の思想の中核には、幼児を神聖なものと見なし、また、創造力の源である存在とし、自然の中で遊びや作業、工作をすることにより、永続的な発達の第一歩を踏み出すことができるという考えがありました。

遊びの重要性を説いたフレーベルは、恩物(おんぶつ―Gabe)という20種類の教育玩具も考案しました。立方体や球などの幾何学的な、いわゆる積み木10種と、お絵かき、粘土、砂場遊び、切る・折る…などの10種の手技工作に体系的に分類されています。自然の中で、自由に遊び、積み木といった幾何学的物体に触れることで、自然界を直観的に認識していく力を持ち、創造性を高めていけるのです。

キンダーガルテンの訳語として、幼稚園を名乗った元祖であり、日本最古の幼稚園である東京女子師範学校附属幼稚園は、1876年(明治9年)に開園し、今日ではお茶の水大学付属幼稚園として現存しています。こちらでは、フレーベルの直弟子である松野クララというドイツ人女性の幼児教育者が、設立に貢献し、積み木やピアノを用いた幼児教育を広め、日本の幼児教育の礎を作りました。

ドイツ発の“幼稚園”というコンセプトの中には、フレーベルの思想がぎっしりと詰まっており、現代のドイツ文化の中にも溶け込み、世界中で受け継がれているようです。


参考HP

 

 

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