スイスのワイン
目次
皆様はスイスのワインを飲んだことはありますか?
ワイン通であれば、当然ながらご存知だと思いますが、大半の人はスイスワインという言葉すら聞いたことがないのではないでしょうか?
実はスイスは小国ながらもワインの産地で、山国としてイタリアやフランスなどのような大量生産は難しいのですが、非常に品質の高いワインを造っています。それ故、ワイン好きな方の間では喉から手が出るほどほしい貴重品なのです。
ということで、今回は意外と知られていないスイスワインをご紹介させていただきます。
一度は絶滅の危機に見舞われた古代から続くスイスワイン
スイスにおけるワイン造りは古代から行われており、紀元前800年まで遡ることができます。
その後、ローマ帝国の一部になってからは様々な葡萄の品種や圧搾技術が取り入れられ、スイス各地でワイン造りに向けた葡萄栽培が行われるようになります。
スイスでのワイン造りに関する最古の記録は516年のヴァリス州(Kanton Wallis)にあるセントモーリス修道院(Abtei St. Maurice)のものです。
また、ワイン製造が全国的に普及したのもその修道院が栽培から圧搾までの全工程を広めたからと言われています。
そのため、6世紀以降はスイスの他の地方でもワイン造りが行われたことを裏付ける資料が複数存在します。
地理的条件によって、スイスでは大量生産が困難だったことから、ワインは基本的に地産地消の品でしたが、17世紀に入ると隣国から安価なワインが輸入されるようになり、スイスにおける国内生産は徐々に減少します。
さらに、19世紀後半にはウネアブラムシやうどんこ病などが大量発生し、スイスワインは壊滅的な被害を受けましたが、無事に回復することができて、現在も少量ながらワイン製造が継続されています。
また、1990年以来、スイスではフランスと同様に、製造過程および品質評価において特定の条件を満たしたワインに対して品質を保証するAOC認証を付与する制度が導入され、スイスのワインが世界的に高く評価されるきっかけにもなりました。
80以上の葡萄固有種を持つスイスワイン
スイスは約7割が山岳地帯でワイン造りにとっては非常に不向きな国でありながらも、比較的平坦な地域では可能な限り傾斜を利用して葡萄畑が整備されています。
それ故、主な産地となっているのはヴァリス州の他、フランス語圏およびイタリア語圏で、それ以外の地方では特定の場所でのみワインが製造されています。
中でも特に有名なのが殆どの観光ガイドブックに掲載されており、世界自然遺産にも登録されているレマン湖北岸のラヴォ―地区(Lavaux)です。
ラヴォ―地区はスイスの固有種であるシャスラ(Chasselas)の白ワイン産地として知られていて、当該品種は全生産量のなんと6割以上を占めています。
全国的に見てもシャスラはピノノワール(Pinot Noir)に次いで2番目に多く使用される品種でスイスワインの代表とも言えます。
また、フランスを原産とするガメイ(Gamay)、メルロー(Merlot)、シャルドネ(Chardonnay)なども高い割合を占めていますが、それらは何れもフランスで製造されたワインと全く異なる、スイス育ちの良さを持っていることで人気です。
それ以外にも、少量なのですがスイスでは80の固有種を含む合計250種類以上の品種が栽培されていますのでスイスワインは非常にバラエティーに富んでいるのが特徴的です。
しかも、それらは白ワインと赤ワインばかりではなく、サーモンピンクのウイユ・ド・ペルドリ(Oeil-de-Perdrix)などのロゼワインもあります。
希少価値の高いスイスワイン
前出のように、スイスワインは愛好家の間でレアものとして取り扱われています。
その主な理由はまず低い生産量にあります。イタリアやフランスなどワインの大量生産地と国境を接するスイスで葡萄畑の総面積は僅か1万5000ヘクタール未満しかありません。
このような過酷な条件で競争力と経済力を維持するためにも、スイスは古くから高品質のワイン造りに専念し、そのような生産と販売を可能にする状況を整備してきました。
したがって、上記でもご説明したAOC認証はフランスなどで一部の最高級ワインにしか付与されませんが、スイスではなんと約95%がその認証を受けており、スイスワインの品質が如何に高いかを物語っています。
さらに、ワインに関してはスイス人1人当たりの年間消費量が30リットル以上で、これは世界で4番目に高い量なのです。それ故、スイスワインの供給は国内の需要に到底追いつく筈もないので、全国の年間生産量の殆どがスイスで消費されており、国外へ輸出されるのは1~2パーセントに過ぎないのです。
そのような理由から、国外でスイスワインの仕入れは極めて困難で、品質以外にもその希少価値まで追加されて割高で取引されていることが多いです。
私自身も日本でスイスワインを購入したことはありますが、やはり入手するのに大変苦労しましたし、店員からは「非常にレアな物をお求めですね」と驚かれたほどです。
以上でスイスワインに関するご紹介を終了させていただきますが、スイスワインがどのように位置づけられているかご理解いただけたでしょうか?
スイス観光に行かれる方の中にはレマン湖周辺を訪れて、ラヴォ―地区にも足を運ぶことが少なくはないと思います。
既にご訪問されたことのある方なら、青い湖と緑の葡萄畑が一面に広がる中で飲むワインが格別であることにご納得いただけると確信しております。
したがって、今後スイス観光をされる人には是非フランス語圏の葡萄産地でワイナリーを訪問して、試飲や飲み比べを体験することをお勧めいたします。
多くのワイナリーではお酒に合うおつまみ等もご用意してくれたり、レストランが併設されたりしている所もございますので、素敵な思い出になることは間違いありません。
また、葡萄産地には数々のハイキングコースもあり、美しい景色を眺めながら散歩や食事を楽しむこともできますので、お酒が苦手という人であっても楽しめる要素は満載です。
そして、スイスワインはご自身が飲むためだけでなく、お土産としても喜ばれますので、是非お持ち帰りになってみてください。ただし、飲んだ後の運転はくれぐれも控えてください!
では
Bis zum nöchschte mal!
Birewegge
今回の対訳用語集
日本語 | 標準ドイツ語 | スイスドイツ語 |
ワイン | Wein
(ヴァイン) |
Wii
(ヴィー) |
葡萄 | Trauben
(トラウベン) |
Truube
(トゥルーベ) |
圧搾する | keltern
(ケルターン) |
cheltere
(ヘルテレ) |
栽培する | kultivieren
(クルティヴィーレン) |
chultiviäre
(フルティヴィエレ) |
葡萄畑 | Weinberg
(ヴァインベルク) |
Wiiberg
(ヴィーベルク) |
最高級 | erstklassig
(エルストクラッスィヒ) |
erschtklassig
(エルシュトクラッスィク) |
総面積 | Gesamtfläche
(ゲサムトフレッヒェ) |
Gsamtflächi
(グサムトフレッヒ) |
供給 | Angebot
(アンゲボート) |
Aagebot
(アーゲボト) |
需要 | Nachfrage
(ナーハフラーゲ) |
Nafrag
(ナーフラーク) |
仕入れ | Einkauf
(アインカウフ) |
Iichauf
(イーハウフ) |
参考ホームページ
スイス生まれスイス育ち。チューリッヒ大学卒業後、日本を訪れた際に心を打たれ、日本に移住。趣味は観光地巡りとグルメツアー。好きな食べ物はラーメンとスイーツ。「ちょっと知りたいスイス」のブログを担当することになり、スイスの魅力をお伝えできればと思っておりますので皆様のご感想やご意見などをいただければ嬉しいです。
Comments
(0 Comments)