ドイツ?ジャーマニー?国名の謎

ドイツ語でドイツの国名はDeutschland(ドイッチュランド、正式名称はDie Bundesrepublik Deutschlandドイツ連邦共和国)ですが、英語ではGermanyと言いますよね。一方、フランス語ではAllemagne(アルマーニュ)といいます。三つの言語だけを見ても、まるで違う表現ですよね。今回は、国名の謎についてお伝えします。

 そもそも「ドイツ」とは?

英語やフランス語だけでなく、ヨーロッパ言語におけるドイツの呼称は、国ごとに実に様々ですが、それぞれ由来が違うようです。まずは本国ドイツ、Deutschlandの名前の由来、そしてドイツ語と同じ語族にカテゴライズされる国々でのドイツの呼称はどのようなものでしょうか。

  • ドイツ語  Deutschland
  • オランダ語 Duitsland
  • デンマーク語 スウェーデン語 ノルウェー語 Tyskland
  • ルクセンブルク語 Däitschland

これらの国々の言語自身、ゲルマン語族としてカテゴライズされており、土地を意味する「land」の前の単語は、どれも、ゲルマン語の「theod」「thiud」「thiod」という「民衆」や「大衆」を意味する名詞が国名の由来となっています。綴りの違いは、地域差によるもので意味も使用されていた時代も同じとのこと。フランク王国時代に、ラテン語系言語ではなく、ゲルマン系言語を用いるゲルマン人の一般大衆をこう呼んだことから、同地域を指す名称として用いられ始めました。

言語史的には、「th」が、「d」という発音と綴りに変わり、「diet」となった後、古高ドイツ語(750年~1150年に使用されていた高地ドイツ語)になると、形容詞化の接尾辞「-isk」が付加され、「diutisk」となりました。その後「diutisk」から「diutisch」に変わり、さらに「deutsch」という現代ドイツ語の形へと変化を遂げたのです。

 

多様過ぎる!ヨーロッパ諸国でのドイツの呼称

 

では他の国々では一体ドイツはどのように呼ばれているのでしょう?おもに5つのカテゴリーに分類されるようです。

1.古代ローマ時代の地名であるゲルマニア(Germania)は、現在のドイツ、ポーランド、チェコ、スロバキア、デンマークとほぼ重なる一帯を指しています。この地名が由来となって、今日でもドイツの呼び名となっているのは、次の国々です。

  • 英語              Germany
  • イタリア語  Germania
  • ルーマニア語 Germania

この呼び名なら、日本人でも馴染みがありますね。

2.ロマン語系の以下の国々(イタリア除く)では、ドイツ南西部のライン川上流地域を原住地とするゲルマン人の部族連合であったアレマン人(Alemanni)が由来となって、今日でもドイツの国名は以下のように呼ばれています。

  • フランス語  Allemagne
  • スペイン語  Alemania
  • ポルトガル語  Alemanha
  • トルコ語 Almanya

そして、ロマン語系とは全く違う言語のトルコ語でも同じ語源のようです。

3.サクソン人(Saxon)とは、ドイツ北ドイツ低地で形成されたゲルマン部族で、現在のドイツのニーダーザクセンを形成していました。ドイツの国名に、「サクソン人」が由来となったのが以下の国々です。

  • エストニア語 Sakamma
  • フィンランド語 Saksa

4.いよいよ聞きなれない言葉が多くなってきましたが、東欧のいくつかの国々では、スラブ祖語で、「しゃべれない人々」という意味の「nemets」という言葉がドイツの国名の語源になっていますが、この「nemets」という言葉は、しゃべれない人々=外国人という意味に転じ、その後、隣国ドイツという意味へと変遷していったとかいないとか…。

  • チェコ語 Německo
  • ポーランド語 Niemcy
  • スロバキア語 Nemecko

5.さて最後はこちら、バルト三国のうちの二国では、ドイツを以下のように名付けています。

  • ラトビア語 Vācija
  • リトアニア語 Vokietija

この由来は諸説あるそうですが、6世紀のスウェーデン部族Vogathsが起源という説や、西バルト海にいたVikingsが起源という説、そしてドイツ語のVolkに由来するという説もあるようです。

ドイツの呼称がこれほどに多様である理由には、ドイツが19世紀に入り、やっと統一国家として形成できたため、それまでは、「ゲルマン人」と包括的にしか示せなかったため、または、「アレマン人」や「ザクセン人」などと、自国と近隣の土地に住む部族だけを指すことしかできなかったためだと言われています。


参考HP

参考文献

  • 町田健 『言語世界地図』新潮新書 2008

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