ご当地消印
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近年ではインスタ映え効果の影響もあり日本ではご当地マンホールがちょっとしたブームになっています。
これは他のものと一緒で、一部のコレクターの間で流行っているに過ぎませんが、旅行の際に珍しいマンホールを見つけると嬉しいとのことで今やマニアでない方からも注目されています。
スイスでもご当地マンホールは存在しますが、はっきり申し上げてそれは非常に稀なケースで、殆どのマンホールにはこれといった特徴はございません。
その代わり、葉書やお手紙を送る時に郵便局が押印する消印にご当地独自のものがあります。世界中の切手コレクターの間では消印が個別分野になっていることから今更新しい情報ではないでしょうが、スイス人でも大半の方はご当地消印の存在を知りません。
そこで今回は、スイスのご当地マンホールならぬご当地消印をご紹介したいと思います。
消印ってそもそも何?
通常、消印は郵便印や証示印とも呼ばれ、切手を無効化、即ち再利用できないために押印される印です。
各国によってその制度が異なりますが、ほとんどの場合、押印をした郵便局名および日付が記載されているのが一般的です。
スイスの場合、消印は日本と同様に丸型となっていて、中央に日付、上部の縁に沿って郵便番号、市町村名、そして同名の市町村が複数存在する時は州の略語が追記されています。
したがって、消印は基本的に記載内容が異なるだけで形状は全国的に統一されていることから、一般的に注目を置くほどのものではありません。
しかし、中には特定の期間のみに使用される特別消印も存在します。
日本では年賀印や選挙印がそれに該当しますが、スイスでは創立記念や国際イベントの開催などに伴い、特別消印が使用されることがあります。
コレクターの間では、希少価値があるとして特にそのような特別消印や、新しい消印が導入される際に使用開始日の消印を集めるのが流行っているようです。
また、押印の形状もひとつの判断基準であり、一部が欠けていない完全かつ文字がはっきり判読可能なものほど価値が高いとされます。
ご当地消印の種類
そんなコレクターが定めている基準や価値とは別にご当地消印というのも存在します。
とはいえ、スイスではご当地消印は全く話題となっておらず、私自身もある日それに気付き、日本のご当地マンホールと似たような魅力を感じたことで今回スイスのネタとして採り上げさせていただいたに過ぎません。
そういうこともあり、ご当地消印に関しては私もさほど詳しくないので、どれほどの数が存在するのかは不明ですが、大きく分けて2種類あると言えます。
その1つ目は、通常の消印にそのご当地を表す別の印が並んでいるもので、2つ目の場合は通常の消印において無記載である下の半分に画などが追加されているものです。
それぞれの形状は異なりますが描かれている内容はいずれも名所・史跡などそれぞれのご当地にゆかりのあるものや、ご当地を特徴付ける景観となっているのが共通点になっています。
ご当地消印に関しては地方やリゾート地のみならず、著名な大都市でも使用されていますが、多くの場合は通常の消印が押印され、稀にご当地消印が施されていることから、特定の郵便ポストや郵便局で投函するなど一定の条件を満たす必要があるようです。
珍しいご当地消印
当然ながら、ご当地消印の中には切手と同様に珍しいレア物もあります。
期間限定で使用されるご当地消印を初め、手紙や葉書を特定の場所で投函した時にのみ押印される消印がそれに当たります。
しかも、レアなものほど価値が高くなるのですが、私が個人的に興味深いと感じているのは、想像もしなかった場所に郵便局やポストがあり、さらに独自の消印まで存在するという珍しさです。
例えば、以前アイトゲノッセンシャフトに関する記事でご紹介させていただいたスイス発祥の地である「リュトリ」は居住者が1人もいない草原なのですが、実は郵便ポストが設置されており、そのポストに投函される郵便物にはリュトリのご当地消印が押印されます。
また、日本人にも大人気のユングフラウヨッホの頂上付近にあるスフィンクス展望台にもなんとヨーロッパで最も標高の高い鉄道駅だけでなく、最も標高の高い郵便局があり、独自の消印を押印しています。
日本では和歌山県すさみ町に海底ポストがあり、投函された郵便物がちゃんと届くことで有名ですが、スイスでも「まさか」と思うような場所に郵便ポストが設置されており、それらを使用したことの記念や証拠としてご当地消印が施されるのが実に面白いです。
さて、今回は非常にマニアックなお話をさせていただきましたが如何でしたか?
デジタル化が進んでいるこのご時世で手紙や葉書を出すこと自体が減っていて、消印に関心がない方も多いことでしょう。
しかし、私自身が魅力を感じたのは郵便といった日常的なものにちょっとした遊び心が入っている点です。そういう意味では日本のご当地マンホールに似ているところもあります。
しかし、マンホールについてはご当地を訪れた際に見物するだけで終わってしまいますが、消印は郵便物を発送する際のおまけのようなもので、絵葉書などを誰かに宛てながら消印をプレゼントすることも可能ですので、知り合いなどに切手コレクターなどがいましたらさぞ喜ばれることでしょう。
因みに、ご当地マンホールに関しては私自身も10年以上も前に日本を観光した際にその独自性を発見し、SNSなどに投稿しましたが、当時は誰にも興味を持たれないという悲しい経験をしました。
そのため、今回の記事を通してひとりでもご当地消印にご興味を持っていただければ幸いです。次いでに、ユングフラウヨッホなどのご当地消印でインスタ映えも狙ってみませんか?
では
Bis zum nöchschte mal!
Birewegge
今回の対訳用語集
日本語 | 標準ドイツ語 | スイスドイツ語 |
マンホール | Schachtdeckel
(シャハトデッケル) |
Doledeckel
(ドレデッケル) |
葉書 | Postkarte
(ポストカルテ) |
Poschtcharte
(ポシュトハルテ) |
手紙 | Brief
(ブリーフ) |
Briäf
(ブリエフ) |
略語 | Abkürzung
(アプキュルツング) |
Abchürzig
(アプヒュルツィク) |
共通点 | Gemeinsamkeit
(ゲマインサムカイト) |
Gmeinsamkeit
(クマインサムカイト) |
郵便ポスト | Postkasten
(ポストカステン) |
Poschtchaschte
(ポシュトハシュテ) |
投函する | einwerfen
(アインヴェアフェン) |
iiwerfe
(イーヴェルフェ) |
証拠 | Beweis
(ベヴァイス) |
Bewiis
(ベヴィース) |
時世 | Zeit
(ツァイト) |
Ziit
(ツィート) |
関心 | Interesse
(インターレッセ) |
Interässi
(インテレッスィ) |
参考ホームページ
スイス生まれスイス育ち。チューリッヒ大学卒業後、日本を訪れた際に心を打たれ、日本に移住。趣味は観光地巡りとグルメツアー。好きな食べ物はラーメンとスイーツ。「ちょっと知りたいスイス」のブログを担当することになり、スイスの魅力をお伝えできればと思っておりますので皆様のご感想やご意見などをいただければ嬉しいです。
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