ドイツの徴兵制度

ドイツには2011年まで長い間、徴兵制度があり18歳以上の男子には兵役義務がありました。以前は街中でも、兵役から一時休暇を得て帰省している軍服姿の若い兵士を見かけることがありました。今日の日本人にとって、兵士を街中で見かけるというのはかなり特殊な光景ではないでしょうか。今日はドイツの徴兵制度についてお伝えします。

徴兵制度

 

ドイツには、陸軍、海軍、空軍、戦力基盤軍、救護業務軍から構成されているドイツ連邦軍(Bundeswehr)が存在します。徴兵制度(Wehrpflicht)は、1956年から2011年にかけて施行されていました。18歳以上の男子に課せられたこの兵役義務は、9か月間にわたるものでした。第二次世界大戦後の連邦軍の発足時には志願兵制をとっていましたが、国民の反軍、反戦感情の強さから、人員の確保が困難となったため、徴兵制が導入されました。

しかし兵役拒否を申請する権利も与えられており、この場合は病院や介護施設での社会福祉活動が義務付けられていました。これがZivildienstといわれる兵役代替服務(民間奉仕義務)であり、従事する人間は通称Ziviと呼ばれていました。

この兵役拒否も、ただ申請するだけではなく、身体検査と市民と査団による「良心審査」で、兵役に就くのは良心に負担を感じるという主張を説明できるかが問われ、これに合格する必要がありました。

徴兵制度の廃止―そしてこれから

 

しかし、2011年7月4日、正式に徴兵制の「中止」が発表され、2014年には職業軍人と志願兵による部隊に再編され、徴兵制度は事実上の廃止となりました。冷戦終結後、東西ドイツ統一から20年以上が経ち、安全保障をめぐる情勢も大きく変わる中で、連邦軍の改革が必要とされたことによります。軍の目的が、冷戦下の国土防衛から、テロ対策、海外派兵へと変化する中で、国防費の削減のため、実施された改革で、総兵約25万人から約18万5千人に減らすことが目指されました。

この徴兵制の廃止に伴い、その兵役代替服務であるZivildienstも廃止となり、同時にこれまで男性によって成り立ってきたドイツの社会福祉政策は大きな転換を迫られることとなりました。現在、連邦自発的奉仕活動(Bundesfreiwilligendienst-BFD)という制度が導入され、社会・環境・文化およびスポーツに加え、民間防衛・災害防止や社会への統合といった分野での公益への関与を促しています。

昨今では、ドイツ連邦軍の兵員不足も問題となっており、フランスや近隣諸国が徴兵制の再導入を検討していることもあり、ドイツでも議論がなされているそうですが、当面は外国人の入隊を検討しているそうです。

軍隊という重いテーマを今回は扱いましたが、外国の制度や文化に触れると、自分の主義主張に関わらず、国家の意思で個人の選択肢が限られる状況に出会います。それは自分自身のこととして社会制度を見直す機会になるでしょう。


参考HP

 

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