スイスアルプスの氷河
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少しずつ暑い日が増えてきている今日この頃。少し早いかもしれませんが、うちではスイカや冷たい素麺を食べて、涼やかな気分を味わっています。暑い日は、素麺のつゆに浮かせた氷を眺めているだけでも、気分が違うものだなとしみじみ感じます。
今回は、心がひんやりする「氷河」のお話です。
スイスの氷河
こちらは、昨年(2019年)8月のゴルナー氷河 (Gornergletscher)の写真です。前回紹介したアルプスアイベックスと同じく、ヴァレー州にある山岳鉄道のゴルナーグラート駅(標高3,089メートル)で撮影したものです。この日は天気がイマイチだったので、周りの4,000メートル級の山々の頂は残念ながら雲で隠れてしまっていましたが、それでも氷河に囲まれた駅からの眺めは迫力満点でした。長い年月が生み出した力強い氷河は、遠くから眺めているだけでも雄大な自然の美しさに吸い込まれそうになりました。
ゴルナー氷河の眺めは圧巻ですが、長さを見ても約12.9kmと、アルプスで3番目に長い氷河です。アルプスで最大の氷河はどこかと言いますと、約22kmもあるアレッチ氷河(Alteschgletscher)です。以前こちらのブログで、ユングフラウ鉄道で行くユングフラウヨッホ駅を紹介しましたが、まさにこのユングフラウヨッホ駅のスフィンクス展望台から眺めることができるのがアレッチ氷河。世界遺産にもなっているスイスが誇る氷河です。
氷河の危機
さて、氷河はスイス人の心の故郷であり、世界中から人々を引き寄せる観光スポットでもありますが、そんな氷河が地球温暖化の影響を受け、危機が迫っていることはご存知でしょうか。
例えば、アレッチ氷河。溶け始めたのは150年ほど前からですが、2000年から2019年までの間だけでも、長さが約1km短くなっています。チューリッヒ工科大学の研究によると、地球の温暖化を2℃の上昇以内に収めたとしても、2100年頃にはアレッチ氷河の50%以上の氷が溶けてしまうというのです。もし、地球が4℃〜8℃暖かくなってしまった場合は、氷河が残る箇所はわずかになってしまうと予想されています。巨大なアレッチ氷河を形成する3つの氷河が合流するコンコルディアプラッツ(Konkordiaplatz)の氷は今800メートルほどの厚さがありますが、この氷も溶けてなくなってしまいます。では、今の気温を維持すればなんとかすれば守れるのかというと、そう言う訳でもなさそうで、過去10年ほどの気温が続くようであれば、やはり氷河の半分ほどは溶けてしまうそうです。
このように、アルプス最大の氷河の数字予想を見るだけでも、事の重大さを感じます。氷河が消えてゆくというのは、決して遠い未来の話ではありません。現に昨年9月にスイス北東部サンクト・ガレン州で環境活動家による氷河の「追悼式」なるものが行われたほどです。標高約2700メートルに位置していたピツォル氷河を追悼するというものでした。この氷河は1850年から2010年の間に85%ほど縮み、昨年サッカーのグラウンド4面分弱までになってしまい、計測対象から外れてしまったのでした。
雄大で、一度見ると忘れられなくなるほどの迫力を持つ氷河。ほんの80年後の未来には、そんな美しい氷河を抱くスイスアルプスの景色がとてつもなく変わってしまうかもしれない。そうした事実を知るだけでも世の中は少し変わるのではないでしょうか。
Uf widerluege!
(それでは、また。)
Chuchichäschtli
参考ホームページ
- gornergrat bahn the matterhorn railway: Gornergletscher
- jungfrau.ch: Einfach der Grösste
- ETH Zürich: Schlechte Aussichten für den Aletschgletscher
- Neue Zürcher Zeitung: Klimawandel: Pizol-Gletscher im Kanton St.Gallen geschmolzen
Chuchichäschtliです。スイス・チューリッヒ州生まれ。アルプス山脈を眺められる場所で、のんびり育ちました。母国語はドイツ語と日本語。好きな食べ物はスイスチーズと梅干し。こちらのブログでは主にスイスネタを担当することになりました。自分自身の経験を交えながら、皆様に親しみを持ってもらえるような記事を書いていけたらと思っています。
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