スイスのアイベックス
目次
日本では外出自粛が続いています。そんな中、「おうち時間」をどうやって過ごそうかと皆さん頭を悩ませながら様々な工夫をされているのではないでしょうか。
私も自宅でエクササイズ動画を見ながら体を動かしたり、いつもと違う料理にチャレンジしてみたり、過去に撮った写真を見返したりと、普段できないことをして過ごしています。
今回は、そんなおうち時間の中で見つけた1枚の写真を皆さんとシェアしたいと思います。
アルプスアイベックスとの出会い
こちらは昨年(2019年)8月、スイスの南部ヴァレー州の標高3,089メートルに位置するゴルナーグラート駅を訪れた時の写真です。
写っているのは2頭の野生のアルプスアイベックス。彼らが立っている場所は、4,000メートル級にそびえ立つ山々に囲まれた高山地帯の一角です。周りに見えるのは、こぢんまりとした山岳鉄道の駅と、宿泊施設を兼ねた展望施設だけです。
夏でも寒く、氷河が見られるスポットです。2頭のアイベックスは駅のすぐそばの、しかし人間は簡単には寄り付けないゴツゴツとした岩場にいました。
彼らが何をしていたのかは定かではありませんが、まさかこんな場所で素敵な出会いがあるとは想像もしていなかったので、一瞬で釘付けになりました。
特に、軽やかに険しい岩山を登り降りする姿は圧巻でした。鉄道が動き出すまで目を離せなかったのは言うまでもありません。
アイベックスとは?
さて、ここまでは私個人のアイベックスとの出会いについて綴ってまいりましたが、皆さん、そもそもアルプスアイベックスについてどのくらいご存知ですか。
アルプスアイベックス(英語Alpine ibex)とは、アルプスの山々に生息する野生のヤギで、ドイツ語ではSteinbock(岩ヤギ)と云います。
雄雌ともに凜と尖った角(つの)を持つので、アニメ「アルプスの少女ハイジ」では、「大角のだんな」として紹介されていました。
名前の通り、この動物の生息地はヨーロッパのアルプス山脈です。岩肌のゴツゴツした急勾配の場所を好み、夏場は標高3,500メートル近い高地まで登り、冬や春はもう少し低い地域で暮らしています。
食べ物は草やハーブの他、冬には植物の根や地衣類なども食べます。アルプス全域には約45,000頭おり、そのうち約15,000頭がスイスに生息しています。スイス東部のグラウビュンデン州では州の紋章にも描かれており、この地域ではまさにシンボル的な存在となっています。
しかし、そんなアイベックスには実は悲しい過去もあったのです。
かつて、アルプスアイベックスの角や血液は、薬として効き目があると信じられていました。
そして、行き過ぎた狩猟の結果、グラウビュンデン州では17世紀半ばに姿を消してしまうまでになったのです。20世紀初頭になると、イタリアから再度アイベックスが持ち込まれ、その後繁殖が成功し、今に至ります。私が見かけた2頭を含め、今スイスで見られるアイベックスは皆、当時イタリアから持ち込まれたアイベックスの子孫だと思うと、なんだか胸が熱くなります。
“アイベックス・スポット”:ポントレジーナ
ちなみに、グラウビュンデン州にあるポントレジーナという地域の近くには、およそ1,800頭ものアイベックスが生息しています。
4月から6月頃になると村付近まで降りてくるので、間近で見られるチャンスがあります。
例え遭遇できなかったとしても、景色が綺麗なことには変わりないですし、6歳以上のお子様向けにはアスレチック施設の “アイベックスの遊び場“(ドイツ語:Steinbock-Spielplatz)なるものまであるので、ぜひいつか訪れてみてはいかがでしょうか。
アルプスに生息する動物には、他にもアルプスカモシカやアルプスサンショウウオなどもいます。今回は、地域特有の動物たちの一面を感じていただけたようでしたら嬉しいです。
Uf widerluege!
(それでは、また。)
Chuchichäschtli
参考ホームページ
- マッターホルン鉄道:地図
- Schweiz Tourismus: Steinbock
- Graubünden Ferien Schweiz: Der Steinbock in Zahlen
- Der Schweizerische Nationalpark im Engadin: Steinbock
- Wildnispark Zürich: Alpensteinbock
- Steinbock-Paradies in Pontresina im Engadin
- EDA: Alpine Tierwelt
- EDA:アルプスの野生動物
Chuchichäschtliです。スイス・チューリッヒ州生まれ。アルプス山脈を眺められる場所で、のんびり育ちました。母国語はドイツ語と日本語。好きな食べ物はスイスチーズと梅干し。こちらのブログでは主にスイスネタを担当することになりました。自分自身の経験を交えながら、皆様に親しみを持ってもらえるような記事を書いていけたらと思っています。
Comments
(0 Comments)