“Chuchichäschtli”の謎について
目次
前回のブログでも予告したように、今回は私のペンネームでもあるChuchichäschtliという言葉を紐解いていきたいと思います。
“Chuchichäschtli“とは何なのか?
「ねえ、Chuchichäschtliって言ってみて!」
スイス人と会話をしていると、いつか突然こう言われる日がやってくるかもしれません。スイスドイツ語話者で、外国の人にこの言葉を言わせたがる人は(私を含め)実に多いです。
なぜ言わせたがるのか、そもそもどう発音するのか、そして、どういう意味なのか。今回はこれらの疑問にお答えできたらと思っています。
なぜ外国人に言わせたがるのか。それは、単純に発音が難しいからです。外国の人が発音するとどんな感じになるのか、聞いてみたくなってしまうのです。“Chuchichäschtli”という言葉にはスイスドイツ語らしい“ch”音が3つも含まれていますが、この“ch”がなかなかの曲者です。「クッキキャシュトゥリ」と言いたくなりますが、“ch”は「ク」と発音するのではなく、ドイツ語の言葉「Ach!」の“ch”音をより荒々しく発音します。(参考文献:Bleiker, Jürg. 2000. Schwyzertütsch für Anfänger, 42頁. arsEdition.)喉の入り口付近で発音するイメージです。日本語にはない音ですが、いびきをかくときに無意識にこの音を発したことがあるという方は、少なからずいるのではないでしょうか。ぜひチャレンジしてみてください。
肝心の言葉の意味ですが、“Chuchichäschtli“を(標準)ドイツ語にすると、Küchenschränklein。日本語に訳すと「小さな食器棚」です。今回は発音を含めて、皆さんにせっかく覚えてもらいましたが、実は使えるシーンは極めて限られています。それでも、スイスドイツ語話者なら誰もが知っている言葉で、「Chuchichäschtli」というタイトルの曲を作ってしまうスイス人コメディアンもいるくらい、親しまれています。(歌詞は英語ですが、まさにこのChuchichäschtliをネタにした曲です。)
もし今後この言葉を使うシーンに出会った際には、このブログのことを思い出してもらえたら光栄です。
“ch”音について
スイスにいてもChuchichäschtliという言葉を使う機会はなかなかないですが、この言葉に含まれている“ch”音はかなりの頻度で登場します。例えば、「ich(私)」という言葉は(標準)ドイツ語でも同じ綴りですが、ドイツ語では比較的丸く発音するのに対し、スイスドイツ語では先ほどのChuchichäschtliやAch!と同じように発音します。
それ以外にも、ドイツ語ではkと書き発音するところ、スイスドイツ語ではchになる言葉がたくさんあります。ほんの一部ですが、例えば以下のような言葉です。
ドイツ語−スイスドイツ語(日本語)
Käfer – Chäfer (甲虫)
Käse – Chääs (チーズ)
klein – chlii (小さい)
Ich kann… – Ich cha… (私は〜できる。)
ちなみに、スイスの大スターであるロジャー・フェデラー選手(テニス)がコート上で使用する好きな言葉にもこの“ch”音が含まれています。「Chum jetze!」という言葉で、「カモン(Come on)!」という意味です。テニスファンも必見ですね。
今回はスイスドイツ語の発音に焦点をあててみましたが、少しでも話してみたいと思ってもらえたら、この上なく嬉しいです。
スイスやスイスドイツ語についての疑問や取り上げて欲しいテーマ、ご自身とスイスとのエピソードなど、遠慮なくコメント欄にお書きください。質問やリクエストにはできる範囲でお答えするよう、努めます。
Uf Widerluege!
Chuchichäschtli
Chuchichäschtliです。スイス・チューリッヒ州生まれ。アルプス山脈を眺められる場所で、のんびり育ちました。母国語はドイツ語と日本語。好きな食べ物はスイスチーズと梅干し。こちらのブログでは主にスイスネタを担当することになりました。自分自身の経験を交えながら、皆様に親しみを持ってもらえるような記事を書いていけたらと思っています。
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