FKK-ドイツ発祥の全裸文化
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ヨーロッパでも猛暑の年が年々増えているようですね。暑い季節に、川岸や湖で裸になっている人を見かけることもさほど珍しくないドイツ。これはれっきとしたドイツの伝統的文化であるFKK-Freikörperkulturの精神が浸透しているためといえるでしょう。 FKKとは、つまり“ヌーディズム”、日本語では裸体主義とも訳されるこの文化は、旧東ドイツを発祥としています。確立した一文化であるFKKについて今日はお伝えします。
FKKとは?-歴史的背景
Freikörperkulturとは、そのことばの通り、衣服の拘束から身体を解放して、全裸となる文化です。海水浴、日光浴の場で全裸となり快適に過ごそうというアクティヴィティで、今日では専用のビーチやキャンプ施設などで日常生活のストレスから逃れて、自然との調和を楽しむのが何よりの醍醐味とされています。また、サウナやプールも併設されたウェルネスセンターなどでも混浴、全裸で利用される施設も少なくありません。
性的感情とは無関係な点が非常に重要なポイントであり、裸体での水泳や日光浴は健康にも良いとされ、また、社会規範からの解放という思想的な側面がそもそもの活動の発端にあることは忘れてはならない点です。
そもそも、このFKKは、19世紀末にドイツ、ベルリン近郊を発祥とする文化運動として誕生しました。都市化、工業化が急速に進んだ19世紀末においては、都市部の人口増加による環境悪化や、科学技術の進歩に対するアンチテーゼとして「自然への回帰」がキーワードとなり、生改革運動(Lebensreform)という様々な運動が活発になりました。FKKは、この生改革運動の一端として起こり、「自然」に最も高い価値を置くというまさに反近代化の本質的な部分を根幹にして根付いた新しい生活様式でした。急激な工業化によって激変した環境に対する反動から、自然との調和を重んじるという価値観が生まれたのは当然のことかもしれませんね。その後、FKKはドイツ語圏、北欧、ヨーロッパ、北米、オーストラリアへと拡がりを見せました。
FKKは時代遅れ?
さて、このように思想的に裏付けられたFKKという文化ですが、昨今のドイツ国内では下火傾向にあり、新しい局面を迎えているそうです。社会的背景と深く結びついた生活様式であるが故に、現代ではどこか時代遅れで、自由という概念との結びつきより、裸体へのタブーの意識が強くなってしまったためと国内のとある専門家は分析しています。
そして、元々旧東ドイツを起源とする文化であるため、旧西ドイツでは抵抗がある人も多く、FKKを禁止する公共の場も増えてしまっているという現状があります。当初の社会運動的な意味合いはすでに形骸化しているということでしょうか。この傾向に対して、ドイツ・左翼党の政治家、グレゴール・ギジはFKKの文化的意義を強調し、2018年にはFKKの再興を促しています。
今日では、ドイツよりオーストリアの方がFKKに対して寛容な態度を取っている人々が多いという事実が、エクスペディアの2015年のアンケート調査によっても明らかになったそうです。
様々な変遷を経ているヌーディズム文化ですが、他文化圏の人々が、ドイツでFKKを実践している人々に出会うと、やはり面食らってしまうことは間違いないでしょう。
参考HP
- Freikörperkultur
- Lebensreform
- Nacktsein in Deutschland
- FKK ist irgendwie altmodisch
- ドイツ産業革命以降の生活改革運動とその文化的影響に関する総合的研究
- 19 世紀ドイツ生改革運動―今日のドイツ語圏のヴェジタリアニズム に与える影響
これまで【日本人からみると不思議なドイツ事情】、【ものづくりの国ドイツ】を担当してまいりました、HHです。京都生まれ。ドイツ・フライブルク大学卒。留学中に得た経験をもとに、独自のアンテナを張って様々な側面からみたドイツをお伝えしていきたいと思います!皆さまのドイツ文化に関する興味・関心、ブログの感想もぜひ聞かせて下さいね。
Comments
(1 Comment)
DDR発祥というのは、そうなのでしょうけど(私が暮らしていた町の近くの湖にもありました)、西と東、どっちが裸にオープンかといえば、まちがいなく西でしたね。サウナは混浴ですし、屋外プールに行くと、プールサイドの芝生のうえであられもない姿で着替えしている人や、トップレスで日光浴をしている女性がいました。
東ではそれは見ませんでした。私の限られた体験の範囲内ではありますが。
いまはFKKというと、もっといかがわしい施設を思いうかべる人が多いのは困りものですね。
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