ドイツの犬事情

ドイツの町を歩いていると犬を連れて歩いている人の多さに驚くでしょう。彼らは犬を散歩させているだけではありません。ドイツでは買い物やちょっとしたお出かけ、旅先、さらには職場や大学にまで犬を連れてきている人々も見かけることがあります。ドイツでの人と犬との関わり方は日本とだいぶ違うようです。その感覚の違いを見てみましょう。

 

どこでも一緒

 

ドイツの町中で見かける犬は、大型犬から小型犬まで、実に多種多様な犬種がいます。また、日常生活においても、かなり身近な存在で、スーパーなど一部の施設では出入り禁止ではあるものの、バス、鉄道といった公共交通機関、カフェ、商店やデパートにも出入り自由で、大学教授や研究者、学生が大学内に飼い犬を連れてくることまであります。そしてリードをしていないこともしばしばあり、犬が苦手な人には、少々怖い感じもするかもしれませんね。

 

 

犬の権利

 

犬を飼っている人が多いドイツですが、ペットを飼う人々の数自体も、年々上昇傾向にあるようです。ところで、統計によると、国内の犬の飼育数は920万匹、猫の飼育数は1370万匹(2017年現在)と、予想に反して、意外にも猫の飼育数の方が多いのですが、その理由には、犬を飼育する場合の動物保護法や保護条例は厳密に制定されており、諸々の条件が多いので、比較的飼育が楽といわれている猫を好んで飼う人が多いためと言われています。

さてその犬を飼う際の条件ですが、まず、ドイツでは犬の飼い主に課せられる犬税 (Hundesteuer) の納税義務があり、これはドイツのほとんどの自治体で導入されています。元来は、糞の放置対策や、狂犬病の被害拡大への懸念といった衛生上・安全上の配慮が背景にあったそうです。さらに今日では安易に犬を飼うことへの抑制として課税されているともいわれ、犬の数のコントロールも目的とされています。ちなみに、猫税に関しては、議論がなされているものの、まだ導入には至っていません。また、法令では、飼育環境(檻の大きさ、リードの長さなど)も細かく定められており、飼い主の義務は明確です。そして、しつけに関しても厳しく、犬の訓練学校などもあるのです。逆に言うと、犬の権利が守られているので、ドイツが欧州内でも随一の動物福祉国家と言われる所以が理解できます。

 

 

ティアハイム-動物保護施設

ドイツでは、飼い主のいない動物たちは、Tierheim(ティアハイム)と呼ばれる地方自治体や、民間の動物保護協会が運営する動物保護施設で保護され、そこでは飼い主の斡旋も行われています。このような保護施設の充実により、ドイツでは犬猫の殺処分がないことが日本のメディアでも度々取り上げられ、その認知度は日本でもあがっています。しかし、治る見込みのない病気やケガで苦しむ動物については、動物福祉の観点から殺処分はされており、また野山に生息する野良猫などは猟師によって駆除される場合もあるそうで、日本の一義的な報道も一部で問題視されています。また、ドイツの動物保護団体によると、年間50万匹ものペットが放棄されており、そのうちほぼ四分の三が、経済的理由により、ティアハイムに引き渡されているのも事実です。このように、一概に犬にやさしい社会であるともいえないデータも見られます。

 

さて、犬を始めとした動物全般への保護と愛護の精神は、ドイツのみならず西洋文化に見られるもので、キリスト教的世界観における人間と動物の関係性が根本にあるとも言われています。動物は神から人間に与えられたもので、人間はこれらを管理する義務があるというキリスト教的動物観は、日本もとい東洋文化圏に見られる動物観とは様相が異なります。いずれにしても動物と人間が共生していける社会を目指していきたいですね。

皆さんは、どのように思われますか?

 


参考HP

 

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