二重完了形はいつの話?

 

こんにちは。第三回目となる今回もドイツ語の多様性、とりわけ口語の豊かさの一つである二重完了形(ドイツ語:Doppelperfekt, Ultra-Perfekt)をテーマに、私の経験を交えてお伝えしたいと思います。

 

ドイツ語学習者の皆さんの多くは、ドイツ語の文法のうち時制について学んだ際に、「ドイツ語では、過去のことを話す時には現在完了形で表現する」と言われているのではないでしょうか。

私個人としては少々一般化しすぎた言い方なのではないか、と思うところはあり、過去形の出番が全くないわけではないので、是非学習者の皆様には過去形も一緒に覚えてもらいたいと願っているのですが、確かにドイツ人の方と「昨日こんなことがあってさー」なんていうおしゃべりをする際に、現在完了形の出番が非常に多いのは事実です。

逆に言えば、学習者である私たちが、この現在完了形をマスターすることができれば、ネイティブの人との会話の幅が広がり、ドイツ語を使う楽しみが増える、そんな文法事項であるとも言えるでしょう。

私がドイツで生活を始めて数ヶ月が経った頃、ドイツ語での会話には完全に慣れ、文法を気にしながら話すというよりは、むしろ会話の場や文脈に適した語彙選びの方に気が向くようになっていくという時期を迎えました。

その頃の私は「文法事項はもう問題ないし、分からないことはなくなったな」と、文法に関しては大きな自信を持っていました。

しかし、ドイツへ来て初めて聞いた上に、相当な頻度で会話の中に見られる文法事項を前にその自信は打ち砕かれます。

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WEBドイツ語特許翻訳講座入門 第7期
2024年12月13日 (金) よりスタート 全6回!

 

2年でドイツ語を習得しプロの翻訳者になった講師が担当

入門セミナーを受けた人は是非こちらで実践を学びましょう!

 

諸事情により開催を延期しておりましたトランスユーロアカデミーの人気講座「ドイツ語特許翻訳講座入門7期」ですが、

2024年12月13日(金)よりスタートすることが決定しました!(隔週全6回、12/6(金)に参加自由の事前オリエンテーションあり)

 

9月の入門セミナーに参加していない方でも大丈夫!大歓迎ですのでドイツ語特許翻訳に興味をお持ちになった人は、ぜひともこちらの講座にお申し込みください。

 

講座日程

12/6(金)(無料オリエンテーション 1時間ほど 申込み者のみ参加可)

12/13(金) 1/10(金) 1/24(金) 2/7(金) 2/21(金) 3/7(金)

 

トランスユーロアカデミーのドイツ語特許翻訳講座は、

好きなドイツ語を駆使して仕事にしてみたいと考えている人はもちろん、

ドイツ語スキルをグンと高めたいと思っている人や、

前綴りや前置詞などのドイツ語特有の機能を深く学びたいと思っている人にとっても、

大変魅力的な講座です!

 

講師は、2年でドイツ語を習得しプロの翻訳者になった後、35年を超えるドイツ語特許翻訳歴を積み重ねたトランスユーロのロックな代表・加藤勇樹(かとうゆうき)が務めます。

 

加藤の講座は分かりやすく、しかも対応が丁寧でフォロー体制がしっかりしていると、常に高評価をいただいております。

 

最近では、ミュンヘンの特許事務所にてセミナーを開催したり、オンラインドイツ語スクールVollmondポッドキャストショート動画に積極的にゲスト出演したりと、そのロックな活動の幅を広げております。

 

Vollmond岡部代表(左)のショート動画に出演

 

また、加藤自身は会社代表になった今も翻訳者として第一線で活躍しており、トランスユーロの貴重な戦力でもありますので、現役の特許翻訳者ならではの実践的な翻訳講座をお届けできます。

 

全6回の講座で、できるだけ容易なドイツ語特許明細書を実際に翻訳しながら、分かりやすく丁寧に解説していきますので、学生さんや初心者でも安心して参加できます。

 

必須ではありませんが、毎回予習をした人は事前に講師が添削致しますので、やる気のある人こそ、実力を伸ばせる講座です。

 

特許翻訳ならではの勉強方法も講師が楽しく伝授してくれますので、自主学習もはかどります。

 

2019年の第2期入門講座受講生の声はこちらをクリック!

 

2020年の第3期入門講座受講生の声はこちらをクリック!

 

2021年の第4期入門講座受講生の声はこちらをクリック!

 

2022年の第5期入門講座受講生の声はこちらをクリック!

 

講師からのメッセージ

本講座は、「ドイツ語特許翻訳ってちょっと気になるんだけど、実際にどんなものか分からないし、参加するのはちょっと怖い。。。。。でもドイツ語スキルをグンとアップできるのならワンチャンありかも!」という気持ちを秘めた人に向けた入門講座です。

 

特許は、権利範囲をことばでくくるものですので、ことば好きにはたまらない世界です。特に前置詞や前綴りなどのドイツ語特有の機能をどう日本語に乗せていくかは、ドイツ語好きのあなたの心を魅了するでしょう。

 

本講座では、そんなドイツ語特許翻訳の世界をチラリと覗いていただいて、そのロックな魅力に触れる機会をご提供します。ドイツ語の特許明細書を実際に翻訳してもらい、一語一句一文をやさしく丁寧に解説していきますので、一歩踏み出せずに迷っているあなたも不安なく入り込めます。現在の実力で独検二級以上、できたら準一級以上をお持ちであれば十分お楽しみいただけると思います。

 

オンラインセミナーですので、全国のどこからでも、もちろん全世界のどこからでも、ご参加可能です。ドイツ語がめっちゃ大好きなあなたのご参加をお待ちしています。

 

特に学生さんは特別料金(10,000円)となっておりますので、ドイツ語好きの学生さんなら是非ご参加ください!

Beste Grüsse ~Yuki Kato 

 

事前入門セミナーご参加の方限定!

 

*9/14の入門セミナーご出席の方は、入門講座の受講料から2000円引きいたします!
※学生料金適用の方は対象外となります

*事前セミナーの終了後に多数のお申込が予想されますので、できるだけお早めにお申込みください。

 

 

【詳細】

開講日 12/6(金)19:30~無料オリエンテーション(1時間)
12/13 1/10 1/24 2/7 2/21、3/7(金曜日・全6日)
時間 19:30~(90分) 日本時間
場所 WEB開催
受講料 45000円 (大学生・院生 10000円
定員 15名ほど(満員になり次第、申込終了となります) ※最小開講人数 5名
講師 加藤勇樹(トランスユーロ株式会社代表取締役会長)
問い合わせ先 info@trans-euro.jp

申し込みフォーム

 

 

Online-Kurs zu einer Deutsch-Patentübersetzung für AnfängerInnen

Lehrer Yuki Kato (CEO von transeuro, inc.)
Datum  06. Dezember (Fr.) (kostenlose Einleitung)

13. Dezember (Fr.),

10. Januar (Fr.),

24. Januar (Fr.),

7. Februar (Fr.),

21. Februar (Fr.)

7. März (Fr.)

Uhrzeit  19.30 -21.00 JST
Vortragsform  Online per Zoom
Kosten  45000JP-Y (10000JP-Y für Studierende)

(Voranmeldung ist erforderlich)

Veranstaltungssprache  Japanisch, teilweise Deutsch
Anmeldung  via E-Mail an Transeuro-Akademie Geschäftszimmer (Anmeldeformular)

Eine Anmeldung ist ab sofort unter (Anmeldeformular) möglich, aber bitte unter Nennung Ihres Namens, Ihres Berufs und Wohnorts, wobei es uns sehr freuen würde, wenn Sie mitschreiben, warum Sie Lust auf den Kurs haben. Wir freuen uns auf Ihre Teilnahme.

EU離脱後のイギリスへ

 

ドイツに住んでいると、お隣の国オランダやフランス、ポーランド等に車で気軽に行き来できてしまうのが魅力。

ただ島国イギリスは海を渡らないといけないため、かねてから「面倒くさそう」と思っていたのですが、うちの子供たちが「一度ロンドンに行きたい!」というので、学校の秋休み期間を利用して車でドイツからイギリスまで行ってきました!

 

厳しくなったイギリス入国

 

フランスのカレー(Calaisという港町から、毎日定期的にイギリスのドーバー港までフェリーが就航しており、距離的にわずか約34kmしか離れていないため、フランスからフェリーに乗船して約90分でイギリスに行けてしまいます。

意外と近いことに驚きです。

 

 

2020年にイギリスがEU離脱する前は、ドイツ人がイギリスへ入国するのは本当に簡単だったようですが、現在はチェックが結構厳しくなっていました。

もともとイギリスがEUから離脱したかった主な理由の一つが、「自分たちが国境をコントロールすることで、移民の数を減らす」ことだったので、厳しくなったのは仕方ないかなと。

フランスのカレー港で車をフェリーに積み込む前に、フランス側の出国審査とイギリス側の入国審査のダブルチェックを受けます。

車に乗ったままでもOKだったんですが、乗車メンバーを全員チェックされ(「他に誰も乗せてないよ~」)、トランクルームの中も検査官にみせないといけなかったり(「何も怪しいものは持っていないよ~」)厳重なチェックでした。

また今回はペットの犬のチャーリーも同伴だったため、イギリスへのペット持ち込み審査も受けました。

無事に出国・入国審査を通過したら、車でフェリーに乗ります。

このフェリーが想像していたよりもはるかに大きく、設備も充実していて驚きました。

レストラン、VIPルーム、免税店、両替所、ゲームルーム、さらにはペット同伴専用ラウンジまで揃っており、たった90分の船旅が短すぎると感じるほど。

ちなみにフランスのカレーから英仏海峡トンネルを利用してユーロスター鉄道でイギリスに入国する手段もあり、その場合はわずか30分でイギリスに行けてしまうのですが、値段も割高だし、しかも海底トンネルなので、せっかくの海の景色を楽しむことができません。

せっかくドーバー海峡を渡るのだから、船にして正解でした。

イギリスのドーバー港に到着すると、すでにフランスでイギリス入国審査を済ませているため、誰にもチェックされることなく、あっけなく(?)そのまま車で入国できます。

 

ドイツの運転免許証を所持していれば、イギリスでも運転が可能。

 

ただし、ドイツでは右側通行であるのに対し、イギリスは日本と同じく左側通行なので、ドイツの運転に慣れている人は、道路をくれぐれも「逆走」しないよう、また高速道路は時速112kmの速度制限が設けられているため、ドイツのアウトバーンを運転する感覚でぶっ飛ばさないよう、要注意です。

高速道路はイギリスよりもドイツの方が整備されていて、走りやすく、やっぱり車を運転するなら、ドイツのアウトバーンが一番!と今回思いました。

 

イギリス人が持つドイツのイメージとは?

 

ところでEUを離脱してしまったイギリスの人々は、現在ドイツにどんな印象を持っているのでしょう?ちょっと気になったので、調べてみました。

2023年にロンドンのドイツ大使館の依頼を受けてDeltapoll世論調査研究所が実施したアンケートによると、イギリスの大半の人々はドイツにポジティブなイメージを抱いているんだそう。

第二次世界大戦の歴史やブレグジットという背景があったので、この結果は意外でした。

アンケート結果は、75%のイギリス男性が「ドイツのイメージは好意的」と回答し、同じく「好意的」と答えたイギリス女性は62%だったそうです。

男女間で結構差があったようで、「ドイツの日常的なニュースに関心を持っている」イギリス男性は44%であるのに対し、イギリス女性はたった22%だったそう。イギリス女性は、あまりドイツに興味がないようですね(苦笑)。

ドイツは、サッカー、ドイツ車、アウトバーン、そしてビールという男性の心をくすぐる要素が揃っているので、イギリス男性にとって魅力的なのかもしれませんね。

 

 

今回、ドイツからイギリスに行き、ロンドンに滞在していたこともありますが、やっぱり物価はドイツより高かったです!

あとイギリスのご飯は美味しくないとよく言われますが、哀しきかな、すっかりドイツの食事に慣れてしまった私の口には、ロンドンの食事はフィッシュアンドチップスも含めて全部美味しかったです。魚も新鮮だったし。

ドイツからも意外と近かったイギリス。

お国柄も全然違うし、今自分が住んでいるドイツをまた違った視点から捉えることができて面白かったです。

是非また訪問したい国の一つになりました。

 

参考ウェブサイト

https://www.welt.de/kmpkt/article247715468/Umfrage-So-denken-die-Briten-tatsaechlich-ueber-die-Deutschen.html

遅延問題に立ち向かうドイツ鉄道、抜本的な改革をスタート

 

「また電車が遅れている」——これは、ドイツでよく耳にするフレーズです。

日本の鉄道の正確さに慣れていると、ドイツ鉄道(Deutsche Bahn、略称DB)の遅延の多さは、カルチャーショックかもしれません。

実際、2023年のDBの長距離列車の定時運行率64%に留まりました。これは、3本に1本以上の列車が、予定時刻から6分以上遅れて運行していたことを意味します。

悪名高きドイツ鉄道ですが、遅延状況は年々悪化しているそうです。

なぜこれほどまでに遅延が常態化してしまったのでしょうか。

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スイスを代表する動物:アルプスマーモット

 

突然ですが、皆様はそれぞれの国を象徴する動物が存在することをご存知ですか?

もちろん、全ての国がそのような動物を有している訳ではないものの、基本的には大多数の国や地域が何らかの動物を自身のシンボルとしています。

有名な例としては、オーストラリアのカンガルー、中国のジャイアントパンダ、そしてアメリカ合衆国のハクトウワシなどがあります。

また、特定の動物をいわゆる「国獣」または「国鳥」に定めている国や、非公認のまま象徴にされているケースも少なくありません。

というのも、日本はキジを国鳥に指定している一方、が日本航空(株)の機体の垂直尾翼に描かれていることもあって、特に外国人からすれば鶴が日本のシンボルであるとの印象を受けます。

それと同様に、スイスも様々な製品や意匠でを国の象徴にしていますが、国家としてスイスは国獣も国鳥も指定していないのが現状です。

実際のところ、スイス国内では地域を問わずどこでも牛に出会えますし、アルプスで放牧している姿は定番の光景です。

しかし、牛は全ての大陸に生息し、数量的に見れば頭数が最も少ないのがヨーロッパ大陸であることから、スイスを象徴する動物と位置付けるには少々無理があります。

むしろ、スイスらしさで言えば、生息地がアルプス山脈に限定されていて、他の国では殆ど見かけない動物がいくつかございます。

中でも、アルプスマーモットは古来よりスイスの山々の代表的な住人であり、国民を始め、観光客の間でも高い人気を誇るので、個人的にはそれをスイスの国獣にすべきだと考えます。

という訳で、今回はスイスの国獣に匹敵すると言っても過言ではないアルプスのマスコット的存在についてご紹介いたします。

 

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「オリンピックの首都」で知られる都市ローザンヌ

 

気温も徐々に下がってきて過ごしやすい季節になってきましたね。

日本ではこれから紅葉が順番に見ごろを迎えることもあって、各地で訪日観光客が増えるだけでなく、国内旅行者も殺到するシーズンが始まります。

スイスでの秋は一日の寒暖差が激しい場合がございますが、絶好の行楽日和が楽しめる日も少なくありません。

特に10月は平地で積雪が観測されることが基本的にまだない他、狩猟の解禁に伴い飲食店でジビエが提供されたり、ブドウの収穫を終えてワイン製造が開始されたりして、お出かけに最適な時期です。

そして、そのどちらも堪能できる有名な地域として西スイスのフランス語圏に属するヴォー州(Canton de VaudまたはKanton Waadt)があります。

中でも、同州の州都であるローザンヌ(Lausanne)は様々な意味で国際的にも知名度が高く、便利で広範囲に広がっている交通網もあるため、様々な観光やアクティビティの起点にするにはうってつけの場所です。

したがって、今回はそんなフランス語圏の中心地のひとつで、人口が4番目に多いスイスの都市でもあるローザンヌをご紹介させていただきます。

 

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ドイツの森歩き

 

ドイツ人に「ちょっと散歩に行こうよ!」と誘われて、「いいね!」と軽い気持ちで応じたのは良いものの、相手ががっしりした靴と雨風をしのげるアノラックを着て登場したことに驚いたことはありませんか?

そう、ドイツ人にとって、散歩とはそこらの近所を15分ほど歩いて帰ってくるのではなく、一時間近くの時間をかけて、また近くに森がある場合は森の中をぐるりと回って、ガッツリ歩くのが普通なのです。

友人や家族と一緒に歩きながら、どうでもいい下らない話をしながら、また時には真剣に話し込んだり、またある時には周りの景色を楽しみながら歩いていると、一時間なんてあっという間!お金もかからないし、リフレッシュ効果も素晴らしいので、私もハイキング靴を二足揃え、アノラックも三着は家に用意するほど、森歩きが大好きになりました!

 

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アカデミー講師の加藤が、ドイツ語オンラインスクールVollmondさんのポッドキャストに再び登場!

 

ドイツ語オンラインスクールで大人気のVollmondのKomachiさんのポッドキャスト「ココロ踊るドイツ語講座」に、トランスユーロの会長でアカデミーの講師を務める加藤が再びお邪魔いたします!

そして、近日収録予定のポッドキャストでは、komachiさんと加藤の二人に聞いてみたい質問を募集中/です。

 

ご質問は、下記トランスユーロアカデミーのXのコメントか、アカデミーの問い合わせフォームへ直接お寄せください!

>>【質問大募集中!】ポッドキャスト「ココロ踊るドイツ語講座」:ゲスト加藤

 

皆様のご質問をお待ちしております!

厳格化されるドイツの国境管理 EU内の移動の自由に新たな課題

 

ドイツ政府は2024年9月16日、フランスを含む隣接国との国境管理を大幅に強化しました。

この決定は、増加する不法移民の流入と国境を越えた犯罪への対策を主な目的としていますが、今回の措置は、ヨーロッパ全体の移民政策と安全保障に大きな影響を与える可能性があり、EU加盟国間で活発な議論を呼んでいます。

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スイスドイツ語講座その15:ドイツで使用しないスイスだけの動詞

 

過去の記事では標準ドイツ語とスイスドイツ語の差異を幾度となくご紹介させていただきましたが、それらは何れも歴史的背景や文化の違いで語源が異なる名詞でしたよね?

「もの」や「名前」は捉え方や発想ひとつで表現や言い回しが変わってくることから、言語間でこういった差異が生じるのも無理はありません。

しかし、決まった動作を表す動詞や特定の状態を指す形容詞に関しては認識のズレが発生しにくいので、言葉にも違いは出ないと考えるのが自然です。

それはドイツとオーストリアのドイツ語に当てはまるものの、スイスドイツ語はやはりそこまで単純ではありません。

この点についてはスイス人である私自身も首を傾げることが多いのですが、動詞においてもなんと標準ドイツ語とスイスドイツ語にかなりの差が存在し、中には同じドイツ語でありながらもドイツ人がそれを理解できないケースまであります。

したがって、今回はドイツでは使用しないスイスだけの動詞についてのお話をさせていただきます。

 

 ドイツとスイスで語尾だけが異なる動詞

 

まず、ドイツとスイスで違う動詞について最初に言及しておきたいのは語幹が同一で語尾だけ異なるパターンです。

代表的なものを挙げますと「駐車する」がそれに当たります。

「駐車する」は標準ドイツ語で「パーケン」(parken)と言う一方、スイスドイツ語では「パーキーエレン」(parkieren)と表現するのです。

ローマ字表記を確認すると分かりやすいと思いますが、どちらも語幹の「park-」が同じで、語尾だけが「-en」(エン)から「-ieren」(イーレン)に変化しています。

標準ドイツ語では「machen」(=する)「schlafen」(=寝る)のように大半の動詞に「-en」が定番の語尾として付き、「spazieren」(=散歩する)または「diskutieren」(=議論する)などで「-ieren」もまた頻繁に登場する語尾のひとつです。

したがって、「-ieren」は決してスイスドイツ語特有の語尾ではありません。

また、発音には多少の違いがあるものの、今ご紹介した全ての動詞は標準ドイツ語とスイスドイツ語で完全に一致していて、語幹・語尾ともに差異が一切ないのです。

つまり、他では誤差ひとつないのに、「駐車する」の動詞となると何故か語尾が変わるという事態が起きています。

しかも、これは「駐車する」に限ったことではなく、「バーベキューする」においても同様な現象が見受けられます。

標準ドイツ語には「バーベキュー」を動詞化した「グリレン」(grillen)という言葉が存在し、そのスイスドイツ語バージョンが「グリリーレン」(grillieren)なのです。

ここでも「-en」から「-ieren」への変化が確認できるのですが、どうしてそうなったのかについてははっきり言って不明です。

また、このレベルの差なら相手にもちゃんと伝わるので結局どちらでもいいのではと考えてしまう人が出てきておかしくありません。

しかし、この問題に関してはドイツのみならず、スイスもかなり敏感で、学校の授業でそれぞれの国の正しい表現を使用しないと先生に訂正されるほどです。

同様に、ドイツ人に対して「パーキーエレン」や「グリリーレン」と言ったら、相手はすぐに違和感を抱いて、「それ間違っているよ」との指摘を受けますので、注意する必要があります。

 

 

 同じ動作に別の単語を当てている動詞

 

続いて、標準ドイツ語とスイスドイツ語とで異なる動詞の種類として忘れてはいけないのが、同じ動作に対してそもそも違う単語を使用しているケースです。

具体的な例を申し上げると「アイロン掛けする」「引っ越す」などがそれに該当します。

前者の「アイロン掛けする」は標準ドイツ語で「ビューゲルン」(bügeln)である一方、スイスドイツ語においては「グレッテン」(glättenという全く別の言葉で表すのが現状です。

もちろん、どちらの表現もアイロンを用いて衣類のしわを取ることを指しますので、意味そのものに差異はございません。

ただし、スイスドイツ語の「グレッテン」は広義に「平滑にする」「ぺったんこにする」といった意味合いも含まれるため、アイロン掛けに限定されていません。

したがって、標準ドイツ語はアイロンの普及に伴って、新しく作った単語であるのに対して、スイスドイツ語の方はもともと似たような意味を持つ言葉を流用したことによってできたと思われます。

また、後者の「引っ越す」については標準ドイツ語で「ウムツィーエン」(umziehen)と言い、スイスドイツ語ではそれと似ても似つかない「ツューゲルン」(zügelnが当てられているのです。

こちらの違いが生じた経緯は分かりませんが、同音異義語であることが原因ではないかと推測されます。

というのも、標準ドイツ語の「ウムツィーエン」は「引っ越す」以外にも「着替える」を意味する動詞であることから、引っ越しすることを表す語としてしっくり来ないと思われたのかもしれません。

しかし、スイスドイツ語の「ツューゲルン」もまた「制御する」というもうひとつの意味を有する同音異義語であるため、理由としては少し不自然です。

したがって、詳細は不明のままですが、同じ動作にそれぞれの言語で言い方が大きく異なる場合もあることに気を付けなくてはなりません。

特に、「引っ越す」に関しては、標準ドイツ語の分離動詞がスイスドイツ語では前綴りのない単純な動詞に変化するので言葉だけでなく、文法上の扱いも変わります。

 

 

 スイスドイツ語にしか存在しない動詞

 

これまではドイツとスイスで微妙に違っていたり、表現が変わったりする動詞を中心にご紹介いたしましたが、そもそもスイスドイツ語にしか存在せず、標準ドイツ語にはない動詞があることにも注目しなくてはなりません。

一般的には標準ドイツ語で新たな言葉が辞書に登録されるとスイスドイツ語にも広がることから、前者が基本形で、後者がその変異体みたいなものと見なす人が多いようです。

しかし、両者はそれぞれ独立した言語で、発展の仕方もまた同じでないため、逆にスイスドイツ語で新しい表現が生まれ、それが後に標準ドイツ語に取り入れられるケースもあります。

そして、中には需要が低い、または使用範囲が限定的であるとの理由からドイツ語圏全域に普及せず、最終的にスイスドイツ語のみに留まるものも出てくるのです。

例えば、投票などで「多数を決める」を意味する「アウスメーレン」(ausmehren)という動詞がそれに該当します。

国・州・地自体で投票が頻繁に行われるスイスでは賛成や反対多数を決めることがほぼ日常になっているが故に、専用の動詞を作ってしまうのも納得ですが、他のドイツ語圏ではそれを使う場面が比較的少ないので標準ドイツ語には導入されませんでした。

また、日が暮れて夜になる様を表す「アインナハテン」(einnachten)と、言ったことに対する責任を取らすことを指す「ベハフテン」(behaften)に関しても同様で、ドイツならびにオーストリアにはない、スイスでしか使われない動詞です。

さらに、ルールを無視したり、責任を放棄したりすることをフランス語で「フートル」(foutre)と言い、スイスドイツ語のみそれをドイツ語化した動詞「フティーレン」(foutieren)を用います。

それ以外にも公共の場で宣伝しながら歩き回ることを「ヴァイベルン」(weibeln)、交差点で右折や左折時に専用車線に入って待つことを「アインシュプーレン」(einspuren)と表現する動詞があり、他のドイツ語圏でも需要はありそうなのですが、それらの使用は何故かスイスに限定されています。

 

 

今回はドイツとスイスの動詞に着目して様々なパターンの違いを挙げさせていただきましたが、想像していたよりも差異があることに気付かされましたよね?

同じ言葉でも部分的に異なったり、言い回しそのものが変わったり、スイスドイツ語にはあるけど標準ドイツ語には存在しないなど、ネイティブなドイツ語スピーカーでさえ驚くほど両言語にはズレがあります。

特にドイツ人がスイスを訪れた際には、それらを耳にするシチュエーションが度々あって、「ドイツ語なのに言葉の意味が分からない!」という経験をすることも少なくありません。

したがって、ドイツ語ができるからと言って安易な気持ちでスイスドイツ語に挑戦してみようとすると、意外と早く壁にぶつかってしまうことから、それなりの覚悟を要します。

逆に、それぞれの違いが興味深くてどこか面白さを感じられると思って取り掛かった方が挫折せずに成長できますので、皆様もそのような気持ちでスイスドイツ語にチャレンジすることをお勧めします。

では

Bis zum nöchschte mal!

Birewegge

 

今回の対訳用語集

日本語 標準ドイツ語 スイスドイツ語
駐車する parken

(パーケン)

parkiere

(パルキエレ)

バーベキューする grillen

(グリレン)

grilliere

(グリリエレ)

アイロン掛けする bügeln

(ビューゲルン)

glätte

(グレッテ)

引っ越す umziehen

(ウムツィーエン)

zügle

(ツュグレ)

多数を決める die Mehrheit bestimmen

(ディー・メアハイト・ベシュティンメン)

uusmehre

(ウースメーレ)

夜になる Nacht werden

(ナハト・ヴェアデン)

iinachte

(イーナフテ)

言ったことに対して責任を取らせる für etwas Gesagtes verantwortlich machen

(フュア・エトヴァス・ゲサークテス・フェアアントヴォアトリッヒ・マッヘン)

behafte

(ベハフテ)

責任を放棄する sich um etwas nicht kümmern

(スィッヒ・ウム・エトヴァス・ニヒト・キュンメルン)

foutiere

(フティエレ)

宣伝しながら歩き回る werbend umhergehen

(ヴェアベント・ウムヘアーゲーエン)

weible

(ヴァイブレ)

右折・左折車線に入って待つ auf die Abbiegefahrspur wechseln

(ファーシュプアー・ヴェクセルン)

iischpuure

(イーシュプーレ)